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WBCの収益はMLBがゴッソリ 泣き寝入りするしかないNPB…宮本氏「NPBはこんな条件なら参加しないと強硬姿勢に出てもいいくらい」
公開日:2023/03/09 11:10 更新日:2023/03/09 11:21
9日、日本代表が初戦を迎えるWBCが本番前から大いに盛り上がっている。
ダルビッシュ有(パドレス)が参加した宮崎合宿に始まり、壮行試合、強化試合が行われた名古屋、大阪も大盛況。
大谷翔平(エンゼルス)が阪神相手に2打席連続本塁打を放った京セラドーム大阪での強化試合2試合では、徹夜して侍グッズを求めるファンが続出。
グッズ売り場に500メートル以上の長蛇の列ができるなど、バカ売れだった。
■経済効果は破格の600億円
チケットも、1次ラウンドの計4試合分はすでに完売。侍ジャパンには10社近くのスポンサーも付いた。
関大名誉教授の宮本勝浩氏(理論経済学)は、日本が優勝した場合の国内における経済効果が約596億円に上ると算出。
6年ぶりの開催で期待が大きく、大谷やダルら人気選手が多数出場することなどから、前回2017年大会で優勝を想定した試算より、約253億円増えるとみている。
侍ジャパンを運営するNPB(NPBエンタープライズ)はさぞ大喜びかと思いきや、広告代理店関係者は、
「WBCの儲けの大半を主催者のWBCI(MLBとMLB選手会が共同運営)が得る構図は今もあまり変わっていない。NPBはそれを指をくわえてみているしかない」と言う。
WBCでは、チケット代、スポンサー契約料、放映権料、グッズの肖像権料などの総収入から、分配金が各国に支給される。
金額の詳細は13年大会から非公表となっているものの、09年大会では分配金の66%(約11億円)をMLBとMLB選手会が受け取り、日本はわずか13%(約2億円)に過ぎなかった。
分配金とは別に優勝賞金として約2.4億円を獲得したことで何とか黒字になったが、前出の関係者は続ける。
「今は侍ジャパンが常設化され、09年大会までは主催者に吸い上げられて1円も得られなかったスポンサー収入を一定額は確保できるようになったとはいえ、
選手、首脳陣などの参加報酬、合宿費用、選手の故障時の保険など、持ち出しが多く、利益は多くない」
侍ジャパンは宮崎合宿(2月17~27日)と名古屋遠征(3月1~4日)を行ったが、その期間はWBCの管轄外。費用はすべてNPBが負担した。
連日満員となった中日との壮行試合の入場料収入は大きな収益となった一方で、NPBに所属する全選手(25人)の保険料は、わずか2週間で2500万円に上るとみられる。
ダルらメジャーリーガーはWBCIが大会期間中に加入する外資系の保険会社を活用するため、さらに高額だ。
「高額年俸選手の大会期間中の保険料は、億単位になるといわれています。パドレスとの契約延長前、年俸約25億円として保険に加入したダルの保険料は、
日本人選手のように100万円程度では済まない。宮崎合宿から名古屋までの期間だけで1000万円クラスになるかもしれません」(損保業界関係者)
WBCは06年の第1回大会から読売新聞グループが「東京ラウンド」の興行権をWBCIから買い取り、電通がスポンサーや放映権を管理している。
読売はチケット収入などの一部を得られるし、電通もスポンサー企業や放送局との仲介手数料を得られるが、NPBにとって利益の柱となるはずのグッズの肖像権はWBCIが持っている。
NPBが今大会の出場契約をする際にも、日本代表のユニホームのデザインの詳細を提出するよう求められたという。
■分配金は不公平
「NPBも、さまざまなグッズやキャラクターを利用してなんとか利益を得ようとしているが、いくら大谷のレプリカユニホームがバカ売れしたとしても、利益はWBCIに流れる。
日本は13年の第3回大会を前に、日本代表のスポンサー権の譲渡や利益配分の改善を求めたが、WBCIからはゼロ回答。
選手会が一度は不参加を決議するに至りましたが、その構図はずっと変わらない。交渉の余地すらないのが実情です」(前出の広告代理店関係者)
経済効果を算出した前出の宮本氏は、「日本の活躍を大いに期待していますが、日本がWBCの収益に多大な貢献をし続けている割には、
NPBの負担と分配のバランスが明らかに不公平。こんなにおかしなイベントはありません」と、こう続ける。
(>>2-5あたりに続く)
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