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くら寿司は、なぜ「回転」にこだわる?
🤔回転寿司は、ウインドショッピング的感覚?!
世間を騒がせた迷惑動画の影響もあり、大手回転すしチェーンの提供方法が大きく変わりつつある。一方、くら寿司は迷惑行為を感知する新システムを開発し、すしを回転させることにこだわる。背景には何があるのか。
回転すしチェーン「すし銚子丸」を運営する銚子丸(千葉市)は3月3日、回転レーンを使用した商品の提供を4月26日までに順次終了すると発表した。全店でタッチパネルを使用した注文方法「フルオーダーシステム」に移行する。
すし銚子丸の横浜都筑店では、2月4日に電子タバコの吸い殻が共用ガリの箱の中に混入していることが判明しており、同社はこの件について都筑警察署に相談済みだ。
移行する理由は「迷惑行為への対策」「フードロス削減」だという。銚子丸の主力は「江戸前寿司を指向したグルメ回転寿司業態」で、鮮度や従業員の接客サービスをセールスポイントとしていた。同社が運営するの店舗数は92店舗だ(2022年5月15日時点)。
スシローも迷惑動画を受け、レーンで注文した商品のみを提供するスタイルに変更している。一部店舗では、専用レーンで注文した商品が席まで届くようになっている。また、席とレーンの間に透明なアクリル板を順次設置していく予定だ。あきんどスシローの広報担当者は、従来のような提供方式に戻るかどうかは決まっていないと説明する。
●強まる脱・回転
回転すし業界では、脱・回転の動きが強まっている。
「魚べい」などを展開する元気寿司(宇都宮市)は、12年7月、東京都内に回らないすしの1号店を実験的にオープン。その後、お客がタブレットで注文した商品を特急レーンで届けるタイプの店舗を増やしていった。
回らないすし路線を推進した当時の法師人(ほうしと)尚史社長は、「全体の売り上げに占める注文率が8割を超えたため」と改革の背景を説明している(出所:「回転しない寿司」路線から6年 元気寿司が思い知った“意外な効果”)。回転レーンをやめることで、「つくりたてのすしを提供できる」「オープン前の作業が減る」「会計時、皿の数え間違いがなくなった」といったメリットが出てきたという。
現在も同社はこの路線を進めている。回転レーンを設けない「オールオーダーシステム」を採用しており、廃棄率が大幅に減ったという点をアピールしている。
●コロナ禍で脱・回転が加速
コロナ禍をきっかけに、かっぱ寿司やはま寿司ではほとんどの店舗でタッチパネルで注文した商品だけを提供するスタイルに切り替えた。衛生面で心配する利用客が増えたためだ。
はま寿司の場合、通常の運営方式に戻す可能性もあるとしていた。しかし、その後はタッチパネルで注文したすしをストレートレーンで提供する方式に切り替えることになった。現在、回転レーンが残っているのは全575店舗(23年2月末)のうち約1割。その1割の店舗でも、基本的にはタッチパネルで注文した商品を流しており、徐々にストレートレーンのタイプに移行する予定だ。
かっぱ寿司はコロナ前から回転レーンではなく、注文があったすしだけを届けるタイプの店を増やす方針を打ち出していた。背景には注文比率が高まっていたことがあった(出所:かっぱ寿司/回転レーン廃止、注文タイプ店舗を増加)。
●くら寿司が回転にこだわる理由
くら寿司は3月2日、回転レーンにおける迷惑行為を防ぐ「新AIカメラシステム」を全店舗に導入した。
迷惑動画が外食チェーン全体で問題視されていることを受けての対応だ。各座席のレーンには、すし皿をカウントする「AIカメラ」が設置されており、そのカメラがレーン上の不審な動きを察知する仕組みだ。迷惑動画が社会問題化してから約1カ月というスピードで全店導入までこぎつけた。
くら寿司は抗菌寿司カバーを導入していたので、迷惑行為は起きにくいと考えられてきた。しかし、一度取り出したすしを再びレーンに戻す動画がSNSで拡散していた。
3月2日に開催された新システムの発表会において、広報・マーケティングを担当する岡本浩之本部長は「回転すし」にこだわる理由を語った。
岡本本部長は、外食において「安心・安全」「おいしさ」「リーズナブルな価格」を実現するのは当たり前だと強調する。たくさんのお店がある中で顧客から選ばれるには、この3つの要素に加えて「記憶に残る“楽しさ”」が必要だという。
回転レーンが提供するのは、「ウィンドウショッピング的な楽しさ」(岡本本部長)だ。具体的には、「さまざまなメニューが回転レーン上を流れているのを目で追いかけるワクワク感」「すぐに取って食べられる手軽さ」「商品を選べる楽しさ」を挙げた。
一方、最近増えている専用レーンタイプのすしチェーンには「ネットショッピングの楽しさ」があると説明した。
こうした回転すしのエンタメ的要素は、子どもにも喜ばれる。回転すしチェーンがターゲットとするファミリー層にも支持されやすい。
また、独自の製造管理システムなどにより需要予測精度を高めれば、すしの廃棄率も抑制できるという考え方だ。