先月に掲載した拙稿「レトロゲームを今でもプレイできるのはなぜか 背景にいる凄腕メンテナンス職人の『匠の技』」でも紹介したように、数十年前に発売された古いアーケードゲームが今でもゲームセンターで遊べるのは、古今東西の基板や筐体(きょうたい)の修理、メンテナンスができる熟練の技術者がいるおかげである。
では、実際にレトロゲームを設置している店舗では、日々どのようなオペレーションをしたうえで収益を上げているのだろうか? 現在では極めて珍しくなった、プライズ(景品)やメダルゲーム、シール機すらも置いていない、「レトロゲームの殿堂」を標榜する埼玉県深谷市のゲームセンター「ビデオゲームミュージアム ロボット深谷店」を取材した。
(中略)
現在、同店のレトロゲームコーナーで最も悩ましい問題は、今や貴重品と化したブラウン管モニターの故障だ。篠崎氏によれば「夏と冬の手前、季節の変わり目のタイミングでよく壊れます」という。
特に致命的となるのが「フライバック」と呼ばれる部品の故障だ。実はフライバックは、もう何年も前から製造業者はゼロ、つまり新品が市場に流通していないため、もし壊れた場合は修理ができず即廃棄となってしまう。
故障した基板や筐体の修理は、スタッフだけでもある程度は対応できるが、修理できないものは専門の業者に依頼している。今後、もし業者が廃業したり、フライバック以外にも入手できない部品が増えたりした場合は、はたして商売が続けられるのかはまったくの未知数であり「まさに綱渡りですね」(篠崎氏)というのだから、実に気苦労が絶えない仕事だ。
実は同店では、すでに一部の筐体をブラウン管から市販の液晶テレビに入れ替えている。しかし、せっかく独自の技術でモニターを改造したにもかかわらず「液晶だと、遅延が発生するからやらない」と話す客もいるそうなので実に悩ましい。