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沖縄本島北方に位置する屋那覇島は、沖縄県で最大級の無人島の一つに数えられ、面積は東京ドーム約16個分に相当する74万平方メートル。これまで話題にのぼることもなかったが、同島の土地の5割以上を「中国人が購入した」とのニュースが流れるや、一躍、全国から注目を集める存在となった。
屋那覇島のある沖縄県伊是名村役場の担当者がこう話す。
「東京にあるG社という会社が屋那覇島の土地を購入したのは2021年2月のことです。当時、役場に売買の通知はありましたが、G社がどういう会社なのかは把握していなかった。もともと差押などにより競売に掛けられていた土地でしたが、競売が取り下げられ、前の所有者からG社に任意売却の形で売買されたと聞きます」
G社のホームページを確認すると、確かに〈令和3年2月 沖縄県の屋那覇島を取得〉と記され、さらに〈(屋那覇島で)現在リゾート開発計画を進めております〉とある。
「不動産投資やリゾート開発、中国ビジネスコンサル」を謳う同社代表のM氏は「日本語も中国語もペラペラの中国人で、傾いた温泉旅館の再生事業などで頭角をあらわした」(業界関係者)とされるが、もう一つ“意外な顔”を持っていた。
スペシャルコースは9万9000円!
同社の登記簿に記されたM氏の住所は都心の一等地にあり、訪ねてみると、瀟洒な構えの豪邸が姿を現した。しかし、そこにあったのはコース料理が4万円以上、スペシャルコースだと9万9000円もする超高級中華レストランだった。
同店の関係者に話を聞こうとしたが、
「M氏はオーナーだが、ここはM氏の住居ではない」
と答えるのみ。
G社のホームページの問い合わせフォームから取材申請のメールを送ったが、数日経っても返答がなかったため、オフィスビルの一室にある同社を訪問。奇妙なことに表札には別のIという会社の名前が掲げられ、インターフォンを押して出てきたのもI社の人間だった。
「G社の人間はここには誰もいない。私たちは関係ないし、何も知らない。こちらも迷惑している」
と話し、G社にはホームページ経由で「連絡が取れるはずだ」と答えた。
「領土が増えた」
M氏やG社はダンマリを決め込むが、SNSで「日本の離島を買った」と誇らしげに語る中国人の存在が話題となっている。山東省青島出身の34歳の女性で、自身のSNSに「(屋那覇島を)親族が経営する会社名義で購入した」と投稿。目的については「将来は自分が住むか、子供に残すか。アラブの王子みたいな人が現れれば、売ることも考えられる」と説明する。
「この女性は中国で日本のカレーなどを出すレストランを経営し、家族は不動産や金融業を営む資産家一族と伝えられます。その一方で、女性とM氏やG社との関係については不明のままです」(全国紙北京特派員)
彼女の投稿以降、中国のSNSでは「領土が増えた」や「戦略基地にできないか」といった過激なコメントが飛び交い、それを受けて日本でも「中国政府による屋那覇島徴用の可能性」や「日本が亡国の民になる悪夢」などと不安視する声が広がっている。
日本の土地は国籍に関係なく誰でも買えるが、自衛隊基地周辺など安全保障上重要な土地については、昨年9月に全面施行された「重要土地等調査法」によって利用が規制される。しかし高市早苗・経済安全保障担当大臣は14日、屋那覇島は「(規制の)対象にはならない」と述べ、現状、政府として具体的な策を講じることはない考えを示した。
「売買自体は合法なので、こちらとしても現時点で対処のしようはありません。ただし屋那覇島はガスも水道も通っていないため、仮に(リゾート開発に向けた)利用計画が提出されるなど具体的な動きが出てきた際には、きちんと精査させていただく」(前出・村役場担当者)
今後の動向に注視が必要だ。