総務省より2022年の住民基本台帳の年報が公開となり、再び、東京一極集中の様相を帯びてきました。ニッセイ基礎研究所の天野馨南子氏が解説します。
東京都への女性集中、コロナ禍で加速へ
2021年は社会増エリア首位の座を神奈川県に譲り、女性の社会増だけ(男性は社会減)で6位を保っていた東京都も、2022年は再び人流制限が緩和されたことから、一気に首位に返り咲き、転入超過総数で2位となる神奈川県の1.4倍の社会増となった。
ここで特に注目すべき点は、男女ともに1万人を超える全国トップの増加数であるばかりでなく、女性の転入超過数が男性の1.6倍となるなど、コロナ禍前(2019年以前)を更に上回る男女の集中バランス格差を見せていることである。増加11エリア合計に対して、東京都の増加が占める割合は総数ベースで33%、男女別では男性の30%、女性の36%を占める結果となっている。
実に、地方から消えた(転出超過した)若い男性のうち10人に3人、若い女性の3人に1人以上が東京都へ住み替えたことになる。
そして、その周りの通勤圏も含めた1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉=東京圏)で見るならば、男女ともに地方から消えた10人中9人が東京圏へと住み替えた。若い女性が激増すれば、当然、東京都の未婚女性割合は高まるので、合計特殊出生率*2は低下する。しかし、若い女性が増え続けているので、婚姻数も出生数も地方よりもはるかに減少度合いは低く、全国で最も高水準の出生数を維持し続けることから、東京都は出生数の減少率が最も低い「非少子化エリア・ナンバー1」なのである。
とはいうものの、日本全体で見た若年男女の居場所アンバランスが生み出す未婚化社会は加速する一方である。
「沈まぬ東京、沈む地方」の人口動態メカニズムをしっかり把握し、
「少子化問題の主因が未婚化?既婚者の産む子どもの数が減ったからではないの?」
「未婚化って、いったいどうしてなの?」
といった、足元の実態を過去の価値観からくるバイアスで正確に読むことができないがゆえに発生している「日本の人口減少の背景を十分に理解できていないような致命的な質問」がなくなる日はいつになるのだろうか。