あわせて読みたい
羊はつらい経験を共にすると、仲間同士の絆が深まる
一緒に辛い経験を共にしたヒツジたちは仲良くなる
ヒツジたちは辛く困難なストレスのかかる経験を共にすることで、仲間同士がグッとかたい絆で結ばれるようだ。
ヒツジたち人間はトラウマになるような危機を一緒に経験した人と仲良くなることが多い。それと同じようなことが羊たちにも起きるのだそうだ。
『Biology Letters』(2023年2月8日付)に掲載された研究によると、このようにストレスが動物の群れに与える影響を知ることで、生息地の破壊や自然災害などに直面した動物たちがどう適応し、回復するのか、理解を深めることができるとのことだ。
【画像】 ヒツジたちにきつい作業を仲間と共に行ってもらう実験
オーストラリア連邦科学産業研究機構「CSIRO」の研究チームが行ったのは、次のような実験だ。
まず5つの群れから3~6歳の妊娠していないメス(メリノ種)を70頭選び、それぞれを5つの放牧場に移動させる。
実験当日、5つの放牧場からヒツジ2頭(合計10頭)ずつを無作為に選ぶ。そして、そのうち半分を一緒にまとめて、トレーラーの運搬・体の拘束・犬に追われるといった少しキツいスケジュールをこなさせ、ストレスを与える。そして残り半分はいつも通りに過ごさせる。
ヒツジたちにストレスを与えるため、ちょっとキツめの作業を行ってもらった / image credit CSIRO
[もっと知りたい!→]羊の表情を解析してその苦痛を判別するAIが開発される(英研究)
1日が終わったら、10頭のヒツジを同じ場所に集め、特殊な追跡装置でそのときの行動を観察する。ストレスを受けたヒツジとそうでないヒツジで何か違いはあるだろうか?
一緒に辛い経験を共にしたヒツジたちは仲良くなる
この結果、最初のうちは元の飼育場にいた仲間と一緒にいたヒツジたちだが、だんだんと大変な時間を共有したヒツジ同士でくっつくようになったのだ。
困難を一緒に乗り越えた人間同士に友情が芽生えるように、どうやらヒツジたちも仲良くなってしまったようだ。
研究チームのダナ・キャンベル氏によると、この実験は動物同士の関係の複雑さを理解するヒントになるという。
「大変な目にあったときでも、ほかのヒツジがそばにいるとストレスが軽くなり、気分がよくなります。飼育場に戻っても、そのことを覚えているのです」
[もっと知りたい!→]羊は人の顔を識別できる。顔写真を使った実験で判明(英研究)
なお今回の実験で大変な思いをしたヒツジたちだが、体に傷をつけられるようなことはなかったので安心してほしい。
そもそもヒツジがこなしたスケジュールは普段からやっているものだが、1日にまとめた過密スケジュールだったところがキツい点だったとのこと。
だからヒツジたちはストレスを受けただろうが、長期的な悪影響はないとのことだ。
逆に楽しい思い出はヒツジをどう変える?
仲間との経験と絆を考えたとき、もう1つ気になることがある。それは困難ようなキツい経験ではなく、楽しい経験ではどうなのかということだ。
たとえば人間なら、一緒に楽しい経験をすると仲良くなることがある。一緒に美味しいエサを食べたりと、楽しい時間を過ごしたヒツジもやっぱり仲良くなるのだろうか?
キャンベル博士らの今後の予定は、それを確かめることであるそうだ。
References:Shared stressful experiences lead to close knit bonds in sheep / written by hiroching / edited by / parumo