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カイコは人類との良きパートナー!カイコの活躍は永遠に!
カイコは卵→幼虫→蛹→成虫と4回姿を変える昆虫です(完全変態昆虫)。
卵からかえったカイコは25日ぐらい桑を食べこの間に4回脱皮を行って繭を作ります。
糸を吐き終わったカイコは、蛹になり、約10日で成虫(蛾)になります。
卵は約2週間後にかえるものと、次の春までかえらないもの(1化性)があります。
※この記事は農研機構(NARO)の提供でお送りします。
「カイコはおもしろいんです!」
カイコの魅力を力説してくれたのは、カイコの改良に取り組む農研機構(NARO)の研究者・笠嶋めぐみさん。農研機構とは、日本の農業と食品産業の発展のため、基礎から応用まで幅広い分野で研究開発を行う国立研究開発法人です。
人類が約5,000年前から改良を重ね、家畜化することに成功した「家畜化昆虫」カイコ。日本では、シルク(絹)の生産がメインですが、最近では、食品や化粧品の原料にも利用されるなど、カイコは様々に大活躍しています。
「カイコの改良がまだ足りない!」「カイコはもっと活躍できるはず!」
そう考えた笠嶋さんをはじめとする農研機構のカイコ研究者たちは、最新の遺伝子組み換え技術などを用いて、カイコの研究開発を進めています。その結果、光る糸「蛍光シルク」の開発に成功し、今は医薬品の開発にも取り組んでいます。
本記事では、カイコの研究開発を行っている、農研機構・研究者たちの取り組みをご紹介します。
カイコは飼育しやすい
数ある昆虫の中から、なぜカイコが研究開発対象に選ばれたのでしょうか。
そのひとつは「飼育」。カイコを飼育する際、大きな2つの特徴があります。
ひとつは「エサは基本的にクワの葉だけ。クワの葉がない時期は人工飼料でも飼育できる 」もうひとつは「共食いをしないため、たくさんの数を高密度な状態で飼うことができる」という点です。
小さなスペースでたくさんの飼育ができるカイコ。この特徴は環境にやさしいモノづくりにも繋がります。
遺伝子組換えに適したカイコ
続いて、「研究開発」する際のメリットにも目を向けてみましょう。研究開発を進める際にも、カイコには大きな2つの特徴があります。
それは「タンパク質合成能力が高い」、「ゲノム配列がほぼ明らかになっており、遺伝子組換えに適している」という点。
タンパク質は生き物にとって重要な栄養成分であるのはもちろんのこと、医療や食品産業でなど多方面に利用されています。実はカイコが吐く繭糸もタンパク質でできていて、1頭あたり0.2から0.5グラムの繭をつくるカイコは、まさにタンパク質製造工場!さらに、およそ100年間にわたるカイコ研究の積み重ねはもちろん、近年のバイオテクノロジーの発展により、生命の設計図と言われるゲノム配列がカイコでもほぼ明らかになりました。これにより、カイコが繭を作るしくみがより詳しくわかってきました。さらに、カイコの設計図(遺伝子)を少し変更したり、他の生物の設計図を追加したりすることで、繭糸に新しい性質を持たせることができるようになりました。
カイコの持つ高いタンパク質合成能力と、バイオテクノロジーが融合することで、繭糸に新しい機能を持たせたシルク素材の開発だけでなく、様々な分野への応用にも期待できます。
このように、飼育しやすい、タンパク質合成能力が高い、遺伝子組換えがしやすい。特徴やメリットに目を向けてみると、カイコが研究開発対象として選ばれたことにも納得です。
蛍光シルク、骨粗しょう症検査キット、化粧品にまで応用
農研機構の長年にわたる研究開発により、数々の成果が表れました。ここでは、最近のイチオシ成果をご紹介!
まずは、染まりが良く、緻密で高品質な織物が作れる超極細シルク。
糸が細い事でより柔らかく、より光沢の良い高級な絹織物が作れたり、透けるほど超薄い織物も作れたりします。この高機能シルクについては、番組でも紹介いたします!(図中の「はくぎん」は農研機構で品種育成された極細繊度品種)
クラゲやサンゴの蛍光タンパク質遺伝子をカイコに導入することで生まれた、光る蛍光シルク。
蛍光シルクはカイコが繭糸を吐く時点で、すでに色がついているので、絹糸を後から染めなくてもよいのだとか。
さらに、カイコタンパク質から生成された骨粗しょう症検査キットにアルツハイマー検査キット。生産スケールの変更が容易であるなど、国産技術で様々なニーズに対応できるそう。
人と同じタンパク質成分で作られた、肌に優しい高品位な化粧品などが市販されています。
2000年に世界で初めてカイコの遺伝子組換えに成功した農研機構。以来、様々な分野を盛り立てるような成果を生み出しています。
その結果、いまでは世界中の研究者から「日本はカイコ研究の最も進んでいる国」として認知されているそうです。
ニコニコ生放送で「カイコ研究開発」の様子をお届け
研究が進み、いまでは遺伝子組換えカイコを一般的な養蚕農家で飼育することも始まっています。
このように、想像以上に生活の様々な場面で活躍しているカイコ。
研究者たちは語ります。「カイコをもっと人の役に立つように「デザイン」する。カイコは我々の生活に何千年も寄り添い、良きパートナーとして人類史を彩ってきた。現代人のスマートな生活にも必ず良きパートナーとなれるはず。持続可能な社会実現の傍らにもカイコが良きパートナーとして存在する明日を目指して研究を行っています。
ニコニコ生放送では2月18日(土)13:00から「農研機構 冬のオンライン一般公開2023「光るシルクを生み出す家畜!? おカイコ」 」を放送します。詳しい内容は、番組をご覧ください!チャットで質問もできますので 、是非みなさまお気軽にご視聴ください。
また、同日11:00から「「おカイコ」観察ライブ配信(繭づくり・羽化)」も放送します。
カイコや農業のことをよく知らなくても楽しめる内容となっています。是非みなさまお気軽にご視聴ください。