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何と、ネアンデルタール人もカニがうまいことを知っていた。
カニを炭火で焼いて食べた痕跡を発見
今から約9万年前、リスボンの南にある洞窟では、ネアンデルタール人がシーフードのバーベキューに舌鼓を打っていたようだ。
ポルトガルにある「グルタ・ダ・フィゲイラ・ブラヴァ(Gruta da Figueira Brava)」は、かつてネアンデルタール人が暮らしていた洞窟だ。中には食事の残骸が大量に見つかっており、当時の彼らが何を食べていたのかを今に伝えている。
それを詳しく分析した研究によると、ネアンデルタール人はカニが大好物だったようで、洞窟に持ち帰り、炭火で焼いて食べていたのだそうだ。
この研究は『Frontiers in Environmental Archaeology』(2023年2月7日付)に掲載された。
【画像】 ネアンデルタール人の大好物はヨーロッパイチョウガニ
カタルーニャ人類古生態・社会進化研究所をはじめとする研究チームによると、この洞窟ではさまざまな貝や甲殻類の殻が見つかっているが、とりわけ多かったのが今でもヨーロッパではよく食べられている「ヨーロッパイチョウガニ(Cancer pagurus)」だったそうだ。
身が詰まったカニを炭火で焼いて食べていた痕跡
甲羅やハサミの大きさからカニ全体の大きさを推定したところ、ほとんどが大きく成長した成体で、1匹からは約200グラムの肉が取れただろうことがわかったという。
甲羅やツメの破損パターンを見るかぎり、それらはネズミや鳥などによって食べられたわけではないようだ。
おそらくネアンデルタール人は、夏の干潮時などに磯の水たまりでカニや貝を捕まえていたのだろう。
それらが彼らによって集められただろうことは、石器や炉のようなヒトの痕跡からも確認されている。
しかもカニの殻の8%には火で焼かれた形跡があった。殻は意図的に割られたもので、カニの肉を食べようとしていただろうことがわかる。
さらに洞窟のカニが大きなものばかりだったのも、できるだけたくさん肉が取れるものを選んでいたことをうかがわせるという。
研究チームによれば、こうしたことからネアンデルタール人はただカニを捕まえていただけでなく、焼いて食べていたと考えられるという。
甲羅の焦げ跡は150~260度で加熱されたことを示している。料理ではよく使われる温度だ。
ポルトガルのグルタ・ダ・フィゲイラ・ブラヴァ洞窟で発見されたもの:(A)ナンオウフジツボ(Perforatus perforatus)(B)ヨーロッパイチョウガニ(Cancer pagurus)の甲羅に焼いた跡があるもの(C)ヨーロッパイチョウガニのハサミを折って食べた痕跡(D)縦に切れ目の入ったヨーロッパイチョウガニ / Image credit: Nabais et al.、doi: 10.3389/fearc.2023.1097815.
ネアンデルタールは原始的というイメージを覆す
ネアンデルタール人は、原始的なイメージがあるかもしれないが、こうした研究からはそれが正しくないことがわかる。
この結果は、ネアンデルタール人が洞窟で暮らした原始人で、大きな動物の死体から肉をかすめてどうにか生きていたという古いイメージを覆すものです
そして、こうした発見は私たちの知能に関するとある学説をも否定する。
(ネアンデルタール人が)カサガイ・ムール貝・アサリ・各種魚をたくさん食べていただろうことを裏付ける証拠は、サハラ以南アフリカで暮らしていた初期の現代人が優れた認知機能を獲得できたのは海産物のおかげという見解をくつがえします
ネアンデルタール人がカニを選んだ理由や、食材としてカニを食べることに何らかの意義があったのかどうかは不明だ。
現代人もカニが好きな人は多いが、ネアンデルタール人もカニのうまさを知っていたようで、その味に舌鼓を打っていたのかもしれない。
ナバイス博士によれば、栄養面でのメリットがあっただろうとのこと。
「ネアンデルタール人が、生態系の頂点に立ち、草原やツンドラで大型草食動物を食べて生きていたというイメージは、かなりの偏見です」と、ナバイス博士は言う。
そのようなイメージは、氷河の近くで暮らしていたネアンデルタール人にならある程度当てはまるかもしれない。
だが当時ヨーロッパの人間のほとんどが暮らしていた南部半島では、まったく当てはまらないのだそうだ。
References:Proof that Neanderthals ate crabs is another ‘nail in the coffin’ for primitive cave dweller stereotypes / Neanderthal Diet Included Crab Meat, Archaeologists Say | Sci.News / written by hiroching / edited by / parumo