人気車を購入すると最近は「転売禁止」の誓約書が書かされる
納期の長いランドクルーザー、フェアレディZ、シビックタイプRなどを受注した場合、販売店では「購入後一定の期間内に転売しない趣旨の誓約書(販売会社によっては同意書)に、お客様のサインをいただいている」という。
これは転売を防ぐためだ。
中古車のウェブサイトを見ると、前述の車種が高価格で販売されている。
ランドクルーザーに3.5リッターツインターボを搭載するZXの新車価格は730万円だが、中古車価格は2倍以上の1600~1900万円が中心だ。
フェアレディZプロトスペックは、新車価格が696万6300円だが、中古車価格を見ると1000~1300万円が多い。
シビックタイプRは新車価格が499万7300円で、中古車価格は850~1000万円になる。
いずれもプレミアム価格だ。
このように中古車価格が新車価格の1.5~2倍に高騰する理由は、これらの車種が納期の大幅な遅延や受注の停止に陥り、入手が困難になっているからだ。
いい換えれば市場価格の混乱と判断される。
なるべく防ぎたいが、1番の原因は、メーカーの生産が新車の需要に追い付いていないことだ。
半年以内の常識的な納期で購入できれば、需給バランスも崩れず、中古車価格が新車価格を上まわって市場を混乱させる心配もない。
売るのは自由だが次のクルマを購入できなくなる可能性がある
今はコロナ禍によって半導体を始めとする各種のパーツやユニットの供給が滞り、納期遅延に関してメーカーを責めることはできないが、プレミアム価格の原因が需給バランスの不均衡にあることは確かだ。
そして転売されて、高価格で中古車市場に並ぶのを防ぐため、販売店はメーカーの指示に基づいてユーザーに転売しない趣旨の誓約書を書かせることが多い。
販売店では「お客様に誓約書を書いていただくのは心苦しい」という。
一般的に誓約書は、仕事を発注する側が、受ける側に対して、たとえば秘密保持などを目的に書かせることが多い。
販売する側がお金を支払うお客様に誓約書を書かせることは稀で、失礼なことでもあるから、販売店のスタッフが「心苦しい」と思うのは当然だ。
せめて表現を一部の販売会社のように「同意書」にすべきだろう。失礼に当たるのは誓約書と同じだが、語感が多少は和らぐ。
そしてユーザーが正式な手続きを経て購入した(所有権を得た)クルマであれば、誓約書を書かせても、転売を禁止することはできない。
この点について販売店に尋ねると、以下のように返答された。
「クルマを現金で販売した場合、車両はお客様の所有になる。従って転売を止めることはできないが、その後のお付き合いには影響を与える。たとえばお客様がその車両を高価格で転売され、中古車販売店にプレミアム価格で並んだ場合、それ以降は弊社での購入を断わる場合がある」。
つまり転売がわかったら、そのユーザーとは今後付き合いをしない、という意味だ。
それなら儲けるためではなく、別の理由で売却したい場合はどうなるのか。
ランドクルーザー、フェアレディZ、シビックタイプRなどは、すべて個性的なクルマだ。夫が購入した後で、妻が運転できないことがわかる場合もあるだろう。
この点も販売店に尋ねた。
「高性能車の場合、ご家族が運転しにくく感じられ、購入後に手放すケースはときどき発生する。そのようなときは、購入した販売店に相談して欲しい。困っているのであれば、もちろん買い取り、ほかの用途にあった車種に乗り替えていただく。やめていただきたいのは、あくまでも儲けることを目的にした転売だ」。
誓約書については、販売会社も取り扱いに苦慮している。