2月1日、岸田文雄首相は衆院予算委員会で、同性婚の法制化に関して「極めて慎重に検討すべき課題だ」と述べ、否定的な考えをあらためて示した。同性婚や夫婦別姓について「制度を改正すると、家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」と強調した。
【写真あり】岸田文雄首相と妻・裕子さん
結婚の自由を願うLGBTQなど、性的少数者の基本的人権を軽んじる発言とも受け取れ、質問した立憲民主党の西村智奈美代表代行は「実現を待っている方々の声を、過小評価しないでいただきたい」と批判した。
一方、岸田首相は、児童手当をめぐって、自民党が旧民主党政権時代に所得制限の導入を主張したことについて「この10年の間に、子供・子育て政策のニーズ自体も大きく変化し、より経済的な支援を重視してもらいたいと、求められる政策も変わってきた」と述べ、所得制限の撤廃など、政府として内容の具体化を進めることをアピールした。
主要7カ国(G7)の中で現在、日本だけが同性婚を認めていない。アジアでも2019年5月、台湾がアジアの国・地域で初めて法的に公認。日本でも複数の世論調査で、過半数の市民が、同性婚を容認するという結果が出ている。
同性婚や夫婦別姓について、岸田首相が「社会が変わってしまう課題だ」とする発言は「日本社会を30年逆行させるような発言」と手厳しく批判するのは、政治ジャーナリストの角谷浩一氏だ。
「同性婚や夫婦別姓について、理解したうえでの発言か、興味がないのかがわからない答弁でした。理解がないのであれば、何の勉強もしていないということ。興味がないということであれば、伝統的なものを守って、新しい価値観を否定するのが保守政治だと勘違いしているのでしょう。
本当の保守というのは、基本を守りながら、なにを維持して、なにを変えていくかつねに考えていくもの。今回の答弁で、岸田首相が、伝統的な価値観を守る自分の姿勢を、自民党を支える保守層に説明しているつもりなら、相当ズレていると思わざるをえません。
英国の保守党は、すでに初の女性首相を選出し、いまは英国史上初となるインド系首相が誕生しています。
岸田首相の発言は、日本で女性首相、外国にルーツをもつ人が首相になることは、いまの自民党では100年たってもできない、ということを自分で認めているようなものです。
外遊に行ったらお土産を買うもので、それが『公務』だ、なんていう主張も、田中角栄元首相がやりはじめた1970年代の、海外になかなか行けない時代の発想です。それをいまでもやっているのは、慣例を守っているのではなく、進歩がないだけです。
日本の少子化対策には、抜本的な改革が必要です。岸田首相は、『異次元の少子化対策』どころか、社会の変化に対応できてない。今回の『社会が変わってしまう』という発言は、日本を30年逆行させるような発言ですよ。
社会の変化に対応できない人が日本のリーダーであることを認識したほうがいい。日本の多様化を認めることができない岸田首相に、『異次元の少子化対策』などできるはずがありません」
古い考えにとらわれているようでは、「異次元」という言葉も空回りするだけだろう。