被害が全国各地に及んでいる。
関東を中心に強盗事件を起こしたグループは、広島や山口など西日本でも犯行を繰り返していたようだ。4~8人で民家へ侵入し、住民を暴行したうえ現金を奪うなどの手口が酷似。同様の事件は、全国で少なくとも30件以上起きている。
「一連の事件では死者も出ています。1月19日に、東京都狛江市の自宅で遺体で見つかったのは大塩衣与さん(90)です。強盗事件が頻発している千葉県警から情報提供を受けた警視庁の警察官が、大塩さん宅を訪問し遺体を発見。地下1階の廊下で両手首を結束バンドで縛られ、顔から血を流して倒れていました。
大塩さんは息子夫婦と孫2人の5人暮らしですが当日、家族は朝から外出していました。室内には棚が開けられるなど荒らされた形跡があり、複数の足跡も残されています。大塩さんの死因は、全身に暴行を受けたことによる多発外傷です」(全国紙社会部記者)
◆「報酬1000万円のタタキ」
実行犯たちは、SNSで指示役からの情報を共有していたようだ。都内で起きた別の強盗事件で押収した犯人のスマートフォンからは、狛江市の犯行に関するメッセージが確認されている。使われていたのは、秘匿性が高く一定時間たつと情報が消去される機能のある「テレグラム」という通信アプリだ。
「指示役は暴力団や半グレと考えられています。すでに逮捕された実行犯の公判で、『闇バイト』を通じてメンバーを募っていたことが判明しました。実行犯は指示役の名前さえ知らなかったそうです。
実行犯は『報酬1000万円のタタキ(強盗)』『金庫に1億円が入っている』などの指示を受け、現場で会った見知らぬメンバーと犯行に及んでいました。指示役は、高額の現金を持っている高齢者などの住所や電話番号、家庭状況が記載された『闇名簿』から襲撃場所や時間を決めていたと思われます」(同前)
捜査のキーマンになりそうなのが、昨年12月5日に東京都中野区内の住宅に押し入り40代の男性を殴って現金約3000万円を奪って逃走した人間。強盗致傷の疑いで逮捕され「ボコボコにしてやった」と供述した、石川県金沢市に住む職業不詳・永田陸人容疑者(21)だ。永田容疑者が乗っていたレンタカーから押収したスマホからも、狛江市の事件に関する情報が見つかっている。
「複数の事件に関与していると思われる永田容疑者も、『闇バイト』を通じて犯行グループに加わったようです。京都市出身ですが16歳で金沢市へ。建設業の会社を転々としていましたが、ギャンブルにハマりカネに困っていたといいます。同じアパートに住んでいる住民によると、競艇好きで『今日は50万円やられた』と話していたそうです。羽振りの良い時は、高級時計を3本ほど見せ『どこで換金できる?』と尋ねてきたことも。
一方で、こう言って怯える様子も見せていたとか。『怪しい車がいたら教えてくれ』『警察だったら(車の)中に人が張り込んでいる』と。住民が『何か悪いことをしているのか』と聞くと、『いやちょっと……』と言葉を濁したそうです。犯行を繰り返し、逮捕を恐れていたのかもしれません」(同前)
警察の調べに対し、永田容疑者は多くを語っていない。だが逮捕者が続出し事件の詳細が明らかになり、指示役特定への外堀は徐々に埋まりつつある。