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腕が多いし顔もおかしい?アラバマ州のマクドナルドに奇妙なドナルドがいる件
アラバマ州名物の虫「ボウル ウィーヴィル」のドナルドバージョン
パッと見マックのドナルドなのによくみりゃずいぶん異質な風貌。腕も多いし顔も違うしいったい何者?
もしこの像がマクドナルドのドナルドだと言い張るなら、たぶん史上で最も奇妙なドナルドだ。じゃなきゃ別の世界線のドナルドか?
先日アメリカ、アラバマ州のマクドナルドに立ち寄ったRedditユーザーは、思わず二度見し、その姿をカメラに収めた。
特定班が即座に動く一方で「悪夢のドナルド」とも評されたこの像の正体は明らかとなる。これは確かにドナルドだが、ある生物と合体していたのだ。
【画像】 これは何ドナルド?マクドナルドの店先に立つ奇妙な像
RedditユーザーのBloodlustftwさんが休暇で訪れたアメリカ、アラバマ州の都市エンタープライズのマクドナルドの店先で遭遇した、奇妙なドナルド。
その像はなんと腕が4本もある。おまけに鼻も長いし、いろいろおかしい。確かに写真を撮らずにはいられないほど異質な風貌だ。
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大反響の中、その正体が明らかに
Bloodlustftwさんが投稿した奇妙なドナルドは話題となり、さまざまな反応がユーザーから寄せられた。
だがさすがインターネット、この像のことを知っているユーザーがすぐに表れ、その正体が明らかとなったのだ。
アラバマ州名物の虫「ボウル ウィーヴィル」のドナルドバージョン
現地をよく知る多くのユーザーが「ボウル ウィーヴィル 」と即座に特定した。でもそれって一体何なのだろう?
ボウル ウィーヴィルとは、原産地メキシコのゾウムシ科に属する昆虫で綿花を食する。
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はぁ?なんで虫?突拍子もない情報でそれこそ脳がバグりそうだが、なんだってその虫とやらがファストフードのマスコットになったのか?
その答えはエンタープライズ市の歴史にある。
が、その前にまず日本ではなじみの少ないボウル ウィーヴィルという虫について説明しよう。
ボウル ウィーヴィルは綿花の害虫「ワタミハナゾウムシ」
ボウル ウィーヴィル(英名:Boll weevil 学名:Anthonomus grandis)はコウチュウ目ゾウムシ科ゾウムシ亜科Anthonomini属 Anthonomus種に分類される昆虫の1種。和名はワタミハナゾウムシというそうだ。
体長は6ミリほどで体色は灰色、ゾウムシの特徴である鼻に似た吻(ふん)がある。
生涯を綿花に頼るワタミハナゾウムシは、駆除法が無かった時代の綿花農家にとって悪夢のような昆虫だった。なぜならこの虫は未熟な綿花を食すだけでなく綿花に寄生して育つからだ。
ワタミハナゾウムシの成虫は夏、ちょうど収穫時期の綿花に卵を産みつける。そこで孵った幼虫はさなぎになるまで綿花を糧に育ち、羽化後も綿花を餌にするため、狙われた農家の畑はぼろぼろにされる。
メスは10日前後で最大200個もの卵を産み、卵から成虫までの期間はおよそ3週間。環境変化にも比較的強く、猛暑と乾燥を除けば-5 °Cの低温にも耐え、時には休眠や越冬もできるという。
ヒアリ、クモ、鳥や鳥などの捕食者はいるものの一度畑で繁殖されたら被害甚大。無事だと思って収穫した綿花から休眠中の個体がひょっこり出てくることさえあるそうだ。
なぜ悪夢の害虫が、都市の象徴的存在に?
ではメキシコ原産のワタミハナゾウムシとアラバマ州のエンタープライズ市の歴史はどう関係するのか?
実はこの虫、19世紀後半からアメリカで見られるようになり、1920年代までに全米の綿花栽培地域に壊滅的なダメージを与えるほど繁殖した。
さて本題はここから。その渦中にあった1915年、ワタミハナゾウムシがアラバマ州に上陸した頃、この虫の深刻な被害をチャンスとみる人物がいた。
それは同州エンタープライズ市に越してきて農業用品の販売などをしていた H.M.セッションズさんだ。彼はこの事態を綿花農家がピーナッツ農業に転換する好機と考えた。
ピーナツで負債も返済。作物の多様化が都市の経済を豊かに
セッションズさんは、負債を抱えた農家の一人C.W.バストンさんをピーナツ農家に転身するよう説得し、翌年からこの新規事業の支援を始めた。
するとセッションズさんの読みがみごとに的中!なんと最初の収穫だけで、それまでの負債の返済ができたのだ。
それを知った他の農家もピーナッツ栽培への転換を決め、セッションズさんのところにピーナツを買い求めるように。
その後、ふたたび綿花は栽培されるようになったが、一種類の作物だけに頼るリスクを学んだ農家は作物の多様化を望み、その実践がこの地域に新たな資金をもたらし都市の経済を豊かにした。
市民がワタミハナゾウムシに感謝するモニュメントを建造
まさに災い転じて福となす。ワタミハナゾウムシが侵略してくれたおかげで農業が多様化し、都市が豊かになったのだ。
かくして逆境を乗り越えた市民は1919年、ワタミハナゾウムシを繁栄の使者として感謝するモニュメントをメインストリートに建造した。
それは頭上にトロフィーを掲げた4mの女性の彫像で、そのトロフィーに大きくデフォルメしたワタミハナゾウムシが乗っているという一風変わったデザインになった。
Boll Weevil Monument – Enterprise, Alabama
100周年で数十匹の像を新設。マクドナルドの像はその1種
それから100年後の2019年、ピーナッツ栽培への転換から100周年を迎えた同市は、何者かにたびたび傷つけられる彫像の修復の代わりにグラスファイバー製のワタミハナゾウムシの像をあちこちに建て始めた。
その結果、さまざまな職業に扮した高さ1.5mもある数十匹のワタミハナゾウムシがあちこちにいる「ゾウムシ通り」が誕生した。
ちなみに話題の像の正式名はドナルド(海外ではロナルド)・マクドナルドではなく、ワタミハナゾウムシの英名 Boll weevil をもじったもので「ロナルド・マクウィーヴィル(Ronald McWeevil)」という。
またこの像を置くマクドナルドのお店の住所はワタミハナゾウムシをもじった652 Boll Weevil Circle にあるそうだ。
McWeevil’ is the 26th Boll Weevil to be introduced on Weevil Way Trail
現在ワタミハナゾウムシはアメリカでほぼ根絶
おわかりいただけただろうか。エンタープライズ市のドナルドが特別な姿をしているのはこうした理由からだった。
ここまで読み進めてくれた読者が何人いるかはわからないが、つきあってくれてまずはありがとう。
なおアメリカに上陸したワタミハナゾウムシは、多くの綿花農家を長年苦しめ「最も破壊的な綿花の害虫」として名を馳せた。
しかし1980年代に始まった大規模な根絶プログラム以後は効果的な駆除法がいくつか見つかり、今ではほとんどの州が根絶に成功している。
ワタミハナゾウムシを悲惨な災いの元凶にするのではなく、経済的な多様化をもたらした気づきの象徴として感謝し、後世に残すことを選んだエンタープライズ市。
昆虫めいたドナルドも近隣では有名なスポットらしい。
これも大胆な発想の転換だが、よそでは悪名高いワタミハナゾウムシもこの都市では観光客を呼び寄せるありがたいマスコットになったのだろう。
根絶されつつ称えられるワタミハナゾウムシの心境は不明だが、逆境にあってもうまく適応できる方法を模索する精神はこれからも受け継がれていきそうだね。
References:neatorama / reddit / wikipedia / youtubeなど /written by D/ edited by parumo