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『ガンダム』なぜハマーンは男に恵まれなかった?
『ガンダム』なぜハマーンは男に恵まれなかった? 富野監督に「小悪党に成り下がった女」と言われる理由 …ハマーンを「変えた」男たち ハマーン・カーン。U.C. 0067年1月10日に生まれ、わずか22年後の0089年1月17日に亡くなっています。アクシ… (出典:マグミクス) |
『ガンダム』なぜハマーンは男に恵まれなかった?
富野監督に「小悪党に成り下がった女」と言われる理由とは?
♦ハマーン・カーン。
U.C. 0067年1月10日に生まれ、わずか22年後の0089年1月17日に亡くなっています。
アクシズによる地球圏帰還は0087年頃ということなので、帰還して2年で死亡というのは実に苛烈な人生です。
強いカリスマ性を持ち、指導力、ニュータイプ能力、パイロットとしての技量の全てを高い水準で併せ持つ彼女は、ザビ家の末裔であるミネバ・ラオ・ザビの摂政としてアクシズ艦隊を率いています。
そんな彼女が人生で最初に影響を受けた男性はシャア・アズナブルでした。ハマーンがシャアと出会ったのは U.C.0081年頃のアクシズと言われています。
ジオン公国の英雄的パイロットだった彼に惹かれた彼女はシャアへ接近、親しくなっていきます。
本編中に詳しい描写はありませんが、シャアと親しくなるために、ニュータイプ能力やパイロットとしての技量を磨いた可能性は十分に考えられます。
0083年に父マハラジャが死去した時、ハマーンを次期摂政に推挙したのはシャアだと言われていて、シャアが彼女の人生を決定づけたとも考えられます。
なお、ふたりの仲はその後急速に悪化し、作戦で恋人関係まで演じたふたりはその道を違え、再会後には命を賭けた痴話喧嘩を演じるまでになっています。
その後、アクシズを率いる身として誰にも媚びない「鉄の女」になっていたハマーンは、0088年2月、コロニーレーザーをめぐる「メールシュトローム作戦」でカミーユ・ビダンと対峙します。
宇宙空間でモビルスーツごしに出会ったふたりは、互いの持つニュータイプ能力の高さから深層意識に眠る記憶を感知、共有するほどの精神共鳴を見せました。
心の中を覗かれて当初は怒るハマーンでしたが、ニュータイプとして理解し合えるかもしれないという点で興味を持ったのか、やがてカミーユを気に入り、年上が好みじゃないカミーユのために、若者向けのおしゃれをしてデートに誘ったとも言われています。
ですが、立場の違いから進展はなく、カミーユがシロッコと決着をつけた後には交流すらなくなってしまいました。
ハマーンは、シャアの時と同じく、自らが求めた者と寄り添えなかったのです。そして、ハマーンにとって、シャアと並ぶほどの「運命の男」とも言える人物がジュドー・アーシタです。
ジュドーにシャアと同じ気配や強さ、そしてシンパシーを感じたハマーンは、今までにないほど強い興味を抱き、再三にわたって仲間にならないかとアプローチし、自らの心情を吐露することもありました。
ジュドーもハマーンには惹かれていたようで、もしハマーンがネオ・ジオンを率いていなかったら、この関係は成就したのかもしれません。 ですが、ジュドーにとってハマーンは改心なくば受け入れられる存在ではなく、最終的にジュドーはハマーンと戦うことを選択。ハマーンは敗れたのです。
「ジュドーという強い子に会えて、地球圏へ帰ってきて良かった」というハマーンの最期の言葉と、「強い男に憧れながらもそうした存在を理解できず、小悪党に成り下がった女」という富野由悠季監督の評を合わせると、彼女にとってのジュドーは「ようやく理解の片鱗をつかむことができた強い男」なのではないかと考えさせられます。
ハマーン・カーンは自分が興味を持った人間には、当人の意思を無視してどこまでも執着しますが、逆に自分が他人から興味を持たれると我意に固執して頭からはねつける面を持つ女性だという評価があります。
シャアやカミーユ、ジュドーに見せた執着と、彼女を主君と仰いだマシュマー・セロや自らの地位向上のために近づいたグレミー・トトへの態度を見るに、その評価は間違ってはいないように思われます。
そんな彼女が自らを省みてその生を永らえる機会はなかったのでしょうか。
どうすればその機会は得られたのでしょう。
ハマーンの誕生日である1月10日が近づく度に、彼女の一ファンである筆者は、想像せずにはいられません。