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韓国が西側陣営に戻らないのはなぜか? 戦争というものに勝ったことがないと、難敵に立ち向かおうとの気概が持てない
(略)
――米中間で右往左往する半年間だったのですね。
鈴置:その通りです。「米国側に戻る」などと、できないことを言わなければよかったのに、格好をつけたあげく米国の不信と怒りを誘う結果になってしまったのです。
――なぜ、格好をつけたのでしょうか。
鈴置:核武装を進める北朝鮮に対抗するには米国との同盟を強化するしかない、との判断でしょう。バイデン政権が2021年1月の就任直後から「中国側から米国側に戻れ」と韓国に明確に命じていました。「下手すれば米国に見捨てられる」と危機感を抱く保守派もいました。
日本ではほとんど報じられていませんが「慰安婦や徴用工の話はもう、聞きたくない。反日を理由に離米従中するな」と米国は韓国に圧迫も加えました。『韓国民主政治の自壊』第3章第3節「『韓国は人権無視国家』と米国が認定」で詳述しています。
――ではなぜ、米国側に戻れないのでしょうか。
鈴置:中国やロシアが怖いからです。核保有国の中ロは日本にとっても脅威ですが、過去の戦争では勝ったこともある。米国と組めば何とかなる、と日本人は考えている。しかし、韓国は勝ったことがない。中ロに限らず、戦争というものに勝ったことがないと、難敵に立ち向かおうとの気概が持てないのです。
――でも韓国も、米国との同盟を結んでいます。
鈴置:バイデン氏も副大統領時代、朴槿恵(パク・クネ)大統領に
「ちゃんと守ってやるから、こちら側にいろ」との趣旨で説得したことがあります(『米韓同盟消滅』第3章第3節「墓穴を掘っても『告げ口』は止まらない」参照)。
韓国だって米国との同盟を強化し、中ロに対抗する手はあるのです。しかし、国民にそんな覚悟は生まれない。今回、保守政権になっても米中間でうろうろするのを見るにつけ、韓国が信頼できる西側の国にはならないことがよく分かりました。
「対ロ制裁で損するな」と尹錫悦
――韓国人は中ロが支配する世界になってもいいのでしょうか。
鈴置:うれしくはないでしょうが、「絶対にイヤ」というわけではありません。何が何でも自由と民主主義を守ろう、との志は韓国人にはないのです。2022年2月のロシアのウクライナ侵攻の際にもそれが明らかになりました。
ロシアのウクライナ侵攻前の1月25日、大統領候補だった尹錫悦氏は「[対ロ]経済制裁により、我が国の企業が被害を受けないよう徹底的に備えよ」と語りました。侵攻を牽制するのではなく、自国の損得だけを語ったのです。
僅差で落選した李在明(イ・ジェミョン)候補は侵攻翌日の2月25日、「キャリアが6カ月の初心者政治家が大統領になり、ロシアを刺激したために衝突した」と論評しました。
政治経験のない尹錫悦氏をあてこすったつもりでしょうが、侵略国家ロシアへの怒りもなければ、命をかけて民主主義を守るウクライナの人々への敬意もない発言でした(『韓国民主政治の自壊』第1章第3節「絶望的な劣等感が生む『から威張り』参照」。
政治家だけではありません。日本がウクライナ支援に乗り出すと、韓国メディアの東京特派員は「日本の下心は何か」「国連理事国を狙う日本」といった視点で一斉に報じました(「韓国人はなぜ『ウクライナ』に冷たいのか ゼレンスキー演説を聴いたのは国会議員の2割」参照)。
保守系紙の朝鮮日報からYTN、中央日報、左派のハンギョレまで。彼らには「専制国家の横暴を許してはならぬ」「同じ民主主義国家の苦境を助けよう」といったごく自然な心情が理解できないのです。
先進国なら先進国らしく振る舞え
――しかし、韓国人は「我が国の民主主義の水準は日本よりも高い」と言っています。
鈴置:その言説こそが、韓国の本質を示します。韓国人は「民主主義国」の称号が欲しいだけなのです。長い間、後進国コンプレックスにさいなまれてきた韓国人は、先進国として認められるには経済成長と民主化が必要だ、と考えてきました。
そこで今、「豊かになった韓国」と「日本よりも進んだ民主主義を誇る韓国」を世界に向け宣伝するのです。韓国人は本当に民主主義の実現を目指すのか、それともその称号さえ得ればいいのか――。1987年の民主化以降、韓国人を観察してきましたが、だんだん彼らの本音が見えてきました。
全文はソースで
デイリー新潮
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/12310559/?all=1