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離礁の貨物船「エバーギブン」留め置き続く 賠償協議が難航―スエズ運河
【カイロ時事】
エジプトのスエズ運河で座礁した正栄汽船(愛媛県今治市)所有の大型コンテナ船「エバーギブン」が離礁してから29日で1カ月となるが、同船は運河中間にある湖に留め置かれ、航行を再開できていない。
巨額の賠償を求めるスエズ運河庁と船主らの協議が難航しているもようで、大量の積み荷が目的地に届かぬまま、こう着状態が長期化する事態が懸念されている。
エバーギブンは3月23日に座礁。土砂のしゅんせつや大型タグボートによるえい航が奏功し、6日後の同29日に離礁に成功した。
運河庁は通航料収入の減少に加え、離礁作業や風評被害に伴う損失として9億1600万ドル(約997億円)を請求しているが、船主や保険事業者は「金額の妥当性で折り合いがつかない」(正栄汽船)と頭を抱える。
エジプトの裁判所が4月中旬に決めた船舶差し押さえについても、同22日に異議を申し立てた。
運河庁のラビア長官は26日の声明で「近く合意できると期待している」と強調したものの、双方の隔たりは大きい。
エジプト当局は座礁原因が悪天候だけでなく人的ミスの可能性もあるとして、航海データ記録装置の解析や乗員への聞き取りを実施した。
保険事業者は「調査は完了したと理解している」と主張するが、結果は今も公表されず、賠償をめぐる駆け引き材料になる恐れもある。
スエズ運河は世界の海上貨物の1割超が通る要衝。
座礁の影響で一時は420隻以上が通航待機を強いられるなど、国際輸送網を混乱させた。
欧米やアジアの主要港では荷揚げ待ちの混雑が伝えられており、デンマークの海事情報会社シーインテリジェンスは、影響が解消するのは6月上旬との見通しを示している。