心を入れ替えたようだが…(田口翔被告)/(C)共同通信社
山口県阿武町が4月、新型コロナ対策の特別給付金4630万円を誤って送金。空き家バンクを利用して同町に移住した田口翔被告が、全額をオンラインカジノで使い果たしていたことが判明し、人口約3000人の町は蜂の巣をつついたような騒ぎとなった。
11月下旬、日刊ゲンダイ記者が自宅を訪ねると、本人は不在で人が住んでいる気配もなかった。
「家賃は毎月2万5000円振り込まれていて、まだ荷物もあります。本人から『裁判が終わるまで貸して欲しい』と頼まれましたが、もうあそこには住めんでしょう。保釈された時に『ご迷惑をおかけしました』と電話がありましたが会ったことは一度もありません」(大家)
カジノ決済代行業者が町に約4290万円を返金し、田口被告も借金をして残りの340万円を支払い、9月、民事裁判で町と和解が成立。刑事では電子計算機使用詐欺罪に問われ裁判中で、27日に山口地裁で行われた論告求刑公判で検察側は、「大胆で悪質な犯行」とし懲役4年6か月を求刑した。裁判の判決は2023年2月28日に言い渡される予定だが、田口被告にはさらなる「試練」が待ち受けている。
■立て替えてもらたのか、贈与されたのか
代行業者が田口被告に4290万円を貸し付けていれば「債務」とみなされ、課税されないが、贈与したとなると、所得税がかかる可能性があるという。
国税局個人課税課の担当者がこう指摘する。
「阿武町に対する債務はなくなりますが、立て替えたカジノ決済代行業者は、本人から4290万円を徴収する権利があります。代行業者が本人から取り立てることになれば、すでに手元にお金が残っていないため、課税されません。ただ『徴収しない』と諦めれば、本人の所得になります」
金を借りたのに返さなくて済むということになれば、田口被告の丸儲けとなる。
「4290万円を立て替えてもらい、本来なら返済義務が生じるところを返さないとなれば所得とみなされ、課税対象になります。税務署が経緯を調べて課税を求める可能性があります。債務を免除された形になり、経済的利益となるので課税されます。儲けたら税金を払うのが、日本の税のルールです。法人からの贈与だと一時所得にあたります」(前出の担当者)
その場合、所得税の最大税率45%と地方税10%の計55%の税金がかかり、2000万円以上の税金を払わなければならない。
阿武町を管轄する萩税務署は「何も答えられませんが、一般的に申告の義務がある人は、2023年2月16日~3月15日に申告をしなければなりません」と回答した。
田口被告は現在、支援者の関連会社で働いているが、「債務」として代行業者に返済するのか、それとも税金を払うのか。いずれにせよ、ネコババした代償は大きかった。