あわせて読みたい
【世界初】白内障を治す物質を特定 治療用点眼薬の開発につながる成果、福井大学チーム
大学院工学研究科の沖昌也教授と医学部眼科学領域の高村佳弘准教授らの共同研究。論文3本が米科学誌電子版に掲載された。
白内障は目の中の水晶体が濁り視力が低下する病気で、多くは加齢に伴って起こる。70歳以上のほぼ全員が発症し、糖尿病による白内障は若年層でもリスクがある。人工レンズを入れる手術が唯一の根本治療とされ、国内の手術件数は年間約120万件に上る。
一方で、手術後の合併症の恐れがあり、発展途上国では手術自体が難しい。進行を遅らせる予防用点眼薬はあるが、症状を改善させる治療薬は現在ないという。
研究チームは、環境などの要因で遺伝子の働きが後天的に変化する「エピジェネティクス」と呼ばれる仕組みに着目。白内障は左右の目で進行が異なるケースがあり、この仕組みが要因の一つと考えられている。
白内障の状態を再現したラットの水晶体に、エピジェネティクスを阻害するさまざまな化合物(阻害剤)を投与し、効果を調べた。この結果、複数の化合物を組み合わせたものを含め、3種類の化合物で症状の改善が認められた。チームは2017年に同様の研究手法で白内障の進行を抑える化合物を発見しており、今回はその発展型となる。
今後は製薬会社などと連携し、加齢性白内障の初期段階で効果がある治療薬の開発を目指す。研究技術は糖尿病白内障にも応用できるという。
9日に福井市の福井大文京キャンパスで会見した沖教授、高村准教授は「治療薬開発への大きな一歩。他の目の病気への応用を含め、研究をさらに深めたい」と話した。
福井新聞
https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1685588
白内障の治療薬開発につながる研究成果を発表する沖昌也教授(右)と高村佳弘准教授=12月9日、福井県福井市の福井大学文京キャンパス