あわせて読みたい
【北朝鮮に送金】〈ペンタゴン文書入手〉ミサイル開発を支える統一教会マネー4500億円
だが、厳しい経済制裁下にもかかわらず、北朝鮮はなぜ核・ミサイル開発を続けることができたのか?――その謎を解くカギになるのが、世界平和統一家庭連合(以下、統一教会)から北朝鮮への送金である。
米国防総省(ペンタゴン)情報局(DIA)は、統一教会が4500億円もの巨額の資金を北朝鮮に送金していたとの情報を掴んでいたことが、「文藝春秋」の調査で判明した。
「北朝鮮に4500億円を寄贈した」
1991年12月、統一教会の文鮮明教祖は北朝鮮を訪問し、金日成主席(当時)と初会談。統一教会はそれまで韓国国家安全企画部(KCIA)と密接な関係を保ち、国際勝共連合を主宰し強烈な反共を掲げてきただけに、2人が抱擁し盃を交わすシーンは世界に衝撃を与えた。
この会談の“真の目的”とは何であったのか――DIAは北朝鮮と統一教会の接近を危険視し密かに監視を続けてきた。
韓国在住のジャーナリスト柳錫氏は、機密解除されたDIAの2通の報告書を入手。報告書が作成されたのは、1994年8月と9月。同年7月に金日成が急逝しており、DIAが特別の関心を両者に寄せていたことがわかる。そこに記されていたのは、驚くべき金額だった。
〈文鮮明が1954年に韓国で統一教会を創立して以来、彼は反共運動の指導者だとして北朝鮮では激しく批判されていた。一方、文鮮明も金日成前主席は偽の救世主(メシア)であるとして、北朝鮮における宗教の状態を批判していた。
1991年11月、在米韓国人の朴敬允が仲介人として文鮮明の北朝鮮入国のビザを手配し、文鮮明と金日成の会見をアレンジした。朴敬允は親北系の会社として知られる「金剛山国際グループ」の会長である。
91年11月30日から91年12月7日の間、文鮮明は北朝鮮を訪問し、金日成主席との会見を許可された。彼らの議題は南北統一、北朝鮮の核施設の査察、北朝鮮に対する投資を海外在住の南北朝鮮の市民たちが開始するよう奨励することを文鮮明が保証することなどであった。それに加えて、北朝鮮の金剛山観光開発のための合弁会社の設立や、豆満江開発への投資、北朝鮮の元山軽工業基地建設への投資などを含む、北朝鮮の経済再構築のための経済協力に関する合意が交わされた。会談において、文鮮明は北朝鮮に4500億円を寄贈したとされている。
(中略)1993年、統一教会は米国ペンシルベニア州にある不動産の一部を売却している。その売却利益は約300万ドルにのぼり、中国の銀行を通じて韓国の企業「サムスン・グループ」の香港支社に送金された。その資金はのちに金正日に誕生日祝いとしてプレゼントされた〉
香港でマネーロンダリング
今回、柳氏は複数の統一教会元関係者に接触する中で、この「DIA文書」の裏付けとなる重要な証言や資料を入手した。
統一教会が北朝鮮で展開していた自動車メーカー「平和自動車」の元最高責任者は、北朝鮮への“資金提供ルート”を明かした。
「日本から北朝鮮に直接送金したら、大変なことになります。日朝の外交関係は緊迫しているので。まず韓国に送金し、韓国でマネーロンダリングをした後に香港に送る。さらに香港から平壌に送金される。これが基本的な流れです」
また、柳錫氏が別の元統一教会関係者から入手した資料には、教会が北朝鮮に送金した金額が具体的に記録されていた。統一教会日本本部運営局の2007年の資料を見ると、教会の関連団体を通じて、毎月4000万円から4800万円の資金が北朝鮮に定期的に送金されたと記されている。