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プロ野球 現役ドラフトって何? 指名順は複雑、高い秘匿性
出場機会に恵まれない選手の移籍を活性化させるための制度「現役ドラフト」が9日、初めて実施される。各球団が、ドラフト対象選手を2人以上リストアップ。最大2巡目まで指名が可能で、全球団が少なくとも1人は獲得し、1人は取られる仕組みとなっている。非公開で行われ、移籍する選手のみが終了後に発表される予定。(運動部 神田さやか)
■育成選手らは対象外
2日に公示された保留選手名簿の中から、各球団は対象の2人以上の選手リストを日本野球機構(NPB)に提出する。複数年契約の選手▽フリーエージェント(FA)権を保持、または過去に行使した選手▽育成選手▽外国人選手▽シーズン終了後に育成から支配下登録された選手▽前年のシーズン終了の翌日以降に選手契約の譲渡で獲得した選手▽年俸5千万円以上の選手-は対象外。ただし、1人だけは年俸5千万円以上1億円未満の選手を出すことができる。
ドラフトでは、各球団が獲得希望の選手を議長に伝える。獲得希望選手が最も多く集まった球団順に暫定の指名順を決定。同数の場合は、今年のドラフト会議の2位指名の順番と同様、公式戦順位の下位球団が優先される。
指名順位1番目の球団Aが「希望した球団Bの選手」を指名すると、次の指名権は球団Bに移る。以降も同様に、選手を指名された球団が指名権を獲得していく。指名権を得る球団がなくなった場合は、指名が済んでいない暫定の指名順上位の球団に指名権が与えられる。11番目の指名順となった球団は、12番目の球団の選手を自動的に指名する。魅力ある選手をリストアップできるかが、上位指名を勝ち取るカギとなる。2巡目の指名は、希望球団のみで行う。
■当初は難色
同制度は、日本プロ野球選手会がマイナー選手を他球団が獲得できる米大リーグの「ルール5ドラフト」のような仕組みを目指し、導入を訴えてきた。選手会は、在籍年数や出場選手登録日数などを一定の数値で区切り、条件を満たした選手を自動的に指名対象とすることを要望していた。
これに対し、球団側は難色を示した。何年もかけて育成した選手をやっと芽が出そうな時期に他球団に持っていかれたら痛手。また、レギュラーが故障した際の「代替選手」の位置づけで出場機会が少ない選手もいるからだ。
2020年には、各球団が8人の指名候補者をリストアップし、前年の最下位球団から指名を開始する「ブレークスルードラフト(仮称)」案を軸に導入を検討していた。開催時期などの最終調整を行っていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で協議がストップ。検討案に異を唱えた球団もあり、再びスタートラインに戻った。
■高い秘匿性
今回の案も球団主導でリストアップする手法が採用された。選手会の森忠仁事務局長は「望んでいた方向とはやや違うが、実現することは良かった」と早期の実施を優先させた。
同様のドラフトは過去にも行われている。1970―72年に開催された「トレード会議」では名簿に載った選手は故障持ちか自由契約寸前が多く、低調に終わった。90年からはフリーエージェント(FA)制度の代案として移籍希望選手が対象の「セレクション会議」が行われたが、トレード成立は少なかった。加えて、リストアップされた選手の名前が漏洩(ろうえい)する騒動もあり、いつしか立ち消えとなった。
現役ドラフトでも、リストアップされた選手の名前は外部には公開されない。過去と同じ轍(てつ)を踏まないためにも、情報管理を徹底し、移籍先で活躍が見込まれる選手を各球団ともリストアップしていくことが、制度の継続につながっていく。
https://news.yahoo.co.jp/articles/1c6373777e4b8d446d293077daeecc3d8dd24f89