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【室谷克実】一流財閥も資金繰りであたふたの韓国 いつか来た道「国中が自転車操業」 SK、買収したNAND製造部門が足かせ
では、一般企業や中小零細はどうなのか。1980年代中盤のように、国中が大車輪の自転車をこぐ姿がほうふつとされてくる。
SKとは、かつての「鮮京」であり、「敵産」(=日本が朝鮮に残した産業設備)を引き継いだ初代創業者が、やがて大韓石油公社を買収して発展した。当時、在韓日本人ビジネスマンの間では「日本人の義理人情を知る〝行儀の良い財閥〟」とされた。
しかし、代が変わり、現在の総帥である崔泰源(チェ・テウォン)氏は先物取引に熱中し、脱税・横領で塀の中に入った。SKが急発展したのは、彼が朴槿恵(パク・クネ)政権の末期に、裏口出所(恩赦)してからだ。
彼は大韓商工会議所の会頭に就いた。全国経済人連合会や経営者協会など、主要経済団体が文在寅(ムン・ジェイン)政権との摩擦を強めるなか、大韓商議は明らかな親文在寅路線をとった。
先物取引で体得した賭博勘が働いたのかもしれない。半導体部門のSKハイニックスはサムスンに迫った。
その勢いに乗って2020年には、米インテルからNAND製造部門を90億ドルで買収した。「DRAMだけでなくNANDも」という意気込みだったのだろう。ただ、DRAMもNANDも需要が低迷し、価格が落ち込んでいる。
SKハイニックスの今年7―9月期決算では、営業利益が前年同期比60%減となった。23年の投資規模を当初計画の半分に縮小した。NAND製造の子会社は、まだ買収代金の清算を終えていないのに、赤字だけ累増している。
SKは製薬部門も持っている。SKバイオサイエンスだ。同社は今年9月、「新型コロナウイルスに対する国産初のワクチン」を発売した。「韓国政府が1000万回分を購入する」との話があったらしいが、実際の購入は61万回分だった。
そして2カ月間の接種件数は、わずか3575。
モデルナ社やファイザー社のオミクロン対応の改良ワクチンが浸透しているなかで、「オミクロン非対応」では、いくら「国産第1号」と〝愛国商法〟を展開しても、SK財閥の社員すらほとんど接種しなかったわけだ。11月中旬には「販売一時中断」となったが、その損害はいくらなのか。
朝鮮日報(11月19日)、中央日報(11月24日)の長い記事に、損害額が出ていないことが不思議だ。
SKグループは「社債の発行に失敗した」との噂も広がっている。朝鮮BZ(11月3日)は、SKが社債より金利が高いCP(長期企業手形)で資金調達を進めていると伝えている。
背景にあるのは、金利上昇と債券市場の梗塞だ(本紙11月9日発行参照)だ。
SK、ロッテに限らず、一流企業が7%台の利率を付けても、社債は引き受け手が現れない。企業も自営業者も、利率の高い貸金業者の門をくぐらざるを得ない。
尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は28日、「韓国の宇宙船を32年には月に、45年には火星に着陸させる」との遠大な計画を発表したが、23年の韓国は大丈夫なのだろうか。 (ジャーナリスト・室谷克実)
12/3(土) 17:00配信
夕刊フジ
https://news.yahoo.co.jp/articles/399861a27a77e6b1b8b87680fdc4015cdb3a7f1c