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債券市場が事実上ストップ、韓国の大手企業黒字倒産の可能性 政治は梨泰院事故の責任問題に明け暮れ…朴政権の末期に似た状況に
韓国のマスコミは、ウォン安なのに輸出が伸びないことを重く見ている。「輸出さえ順調なら、万事が好調に推移する」といった国民的信仰が広がっているからだ。
ところが、10月は輸出が前年比で減少した。2年ぶりだ。梨泰院事故(10月29日夜に発生)がなかったなら、11月1日発表の貿易統計で韓国中が大騒ぎになっていただろう。
貿易統計を伝える記事は隅に追いやられたが、もっと隅になった記事がある。中堅の生命保険会社である興国生保が、ドル建て永久債の早期償還を拒否したことだ。
これに先立ち韓国では「レゴランド事態」が発生した。韓国のレゴランドは過疎地の江原道(カンウォンド)にある。前知事のレゴランド誘致と、施設建設に絡む疑惑を追及して当選したのが保守派の現知事だ。
現知事は、施設建設の中心的役割を担った特殊法人(江原道直営)が手形不渡り・破産するのを黙認した。「道(=県相当)が保証した債券がパーになる事実」を見て債券市場は萎縮した。
そこに韓国電力が逆ザヤによる累積赤字を埋めるため、利率6%弱の社債を発行した。韓電の今年の社債発行額はすでに23兆ウォン(約2兆4100億円)を超えた。韓国電力は国営だ。韓国紙の表現を借りれば「ブラックホールのように」債券市場の余力を吸い込んでしまった。
そして、興国生保の5億ドル(約733億円)永久債の早期償還拒否が発表された。興国生保の資金繰りは一服ついた。
だが、事はドル建て債だ。国際金融市場の「韓国不信」は高まった。外貨建て資金の借り入れが困難さを増したのだ。
韓国の金融機関も投資家も、不動産バブルの本格的崩壊を「不可避」とする認識を高めている。大手企業が資金調達の失敗で「黒字倒産」することも十分予想できる。
しかし、政権与党は梨泰院事故が「第2のセウォル号」事態にならないよう、「哀悼」「追悼」を叫び、「責任は警察」のスタイルで難局を乗り切ろうとしている。非常経済対策会議を開いたが、明確に示された政策は「冬季の室温を17度にして輸入を抑制する」ことだけだった。
野党陣営は「第2のセウォル号」に仕立てるため、労組の扇動で中高校生まで動員したロウソクデモを続ける構えだ。
韓国語の表現では「総体的難局」。日本語で人間に例えると「多臓器不全」のような状態が年末にかけて深化しそうだ。 (ジャーナリスト・室谷克実)
11/12(土) 17:00配信
夕刊フジ
https://news.yahoo.co.jp/articles/19fd9b2b4cd7cc3178a73e18bb394191dbe32799