グループは、九大大学院薬学研究院の王子田彰夫教授ら。新薬候補は、標的の物質に「鍵と鍵穴」のように結合してその機能を阻害する「コバレントドラッグ」と呼ばれるタイプだ。コロナウイルスはヒトの細胞に侵入すると、細胞内の酵素タンパク質を活用するなどして増殖するが、開発した「YH-6」は、酵素タンパク質と強力に結び付くことでコロナウイルスが利用するのを妨げる。
ウイルスは、変異すると細胞に侵入する形が変わるものの、増殖の仕組みは同じ。このため、YH-6はどの株にも効果を期待できる。実験では、その時点までに見つかったコロナウイルスの全変異株で増殖を抑制したという。
コバレントドラッグは、ペニシリンなどがよく知られている。グループはもともと、抗がん剤に応用しようと研究を進めていた。標的以外の物質にも結合しやすく、副反応が大きくなりやすい課題があるが、YH-6には酵素タンパク質に的確に結び付き、一定期間後に結合を外れる性質を持たせた。
国内では現在、新型コロナの経口治療薬として①米メルク社の「モルヌピラビル」と②米ファイザー社の「パキロビッドパック」が承認済み。ただ、①は胎児に異常が生じる「催奇形性」が確認され、②も高血圧や不整脈の薬などと同時服用できない制限がある。臨床試験段階にある塩野義製薬の「ゾコーバ」も、動物実験で催奇形性の恐れが報告された。
YH-6の開発は10月、米国の専門誌に掲載された。既に特許を取得しており、今後、実用化に向けて製薬会社に権利を売却する。
各大学とも、創薬の基礎段階を担う「アカデミア創薬」に力を入れており、九大では初の事例となる。
(平峰麻由)
https://news.yahoo.co.jp/articles/fe27f217dc30d9c285e5e2118c9b7c8604931733