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韓国「外貨建て債券市場」に痛恨の一撃 「5億ドル早期償還が不可能」で信用が墜落か
資金調達が非常に困難になるという人災が発生しています。
2022年11月02日、『興国生命』が「外貨建て永久債」の早期償還を行わないことが分かりました。これが、外貨建て債券市場を梗塞状態に陥られるのではないか――という懸念が出てきました。
まず、本件を報じた韓国メディア『韓国経済』の記事から冒頭部分を以下に引用します。
”
(前略)
『興国生命』が外貨建て新種資本証券(永久債)の早期償還権(コールオプション)を行使しないことにし、これが大乱を招くのではないかという懸念が大きくなっている。
国内企業発行の外貨建て債券に対する投資家の信頼が崩壊する可能性があるからだ。
江原道レゴランド事態で国内債券市場が凍結したのに続き、外貨建て債券の発行まで萎縮すると、企業が流動性を確保する道が完全に詰まる可能性があるという警告が出ている。
⇒参照・引用元:『韓国経済』「5億ドル永久債早期償還不発…今回は興国生命発『外貨債危機』」
https://www.hankyung.com/finance/article/2022110223751
”
何が起こったのかというと――。
2022年11月01日、『興国生命』が2017年に発行した「5億ドルの永久債」の早期償還(09日が期限)を見送ることを発表したのです。
同記事によれば、
”
(前略)
国内企業が発行した資本性証券(永久債・劣後債)が早期償還しないのは、2009年の『ウリィ銀行』の外貨建て劣後債以来初めてだ。
(後略)
⇒参照・引用元:『韓国経済』「5億ドル永久債早期償還不発…今回は興国生命発『外貨債危機』」
https://www.hankyung.com/finance/article/2022110223751
”
(中略)
まず、『興国生命』は発行済の2017年発行の永久債5億ドルを早期償還できる状況ではありませんでした。
早期償還ということは、上記でご紹介したとおり、投資家に元本の5億ドルを償還しなければなりません。しかし、その5億ドルを素直に出すと、韓国金融当局のRBC規制に抵触する可能性があったからです。
RBCというのは、「合計調整自己資本 ÷ RBCリスク量」で計算します。至極簡単にいえば、リスクの量の何割自己資本を持っているのかを示しており、韓国の金融当局はこれを「150%」と設定しています。
つまり、韓国の生命保険会社の場合には、リスク金額総計の1.5倍自己資本がないと「健全」と認めないのです。
『興国生命』は5億ドルを出すと150%を割る可能性があったの「できない」となったのです。
次の手として、借り換え(ロールオーバー)を企図しました。
借り換え用に「3億ドル規模の新たな外貨建て永久債」を発行し、韓国内で「1,000億ウォンの劣後債」(永久債と仕組みはほとんど同じ)を発行とありますので、残りの2億ドル弱は現金で出すつもりだったと思われます。
ところが、金利の急騰によって外貨建て永久債の新規発行が不可能に。
これで打つ手なし――となり、早期償還はできなくなったのです。
上記でご紹介したとおり、コールスキップを発生させたので、『興国生命』の発行済み永久債の金利は「4.475%」から「6.7%台」に上昇します。
元本が5億ドルですから、利払いが年に「2.225%」上がって、利払い負担は年間「1,112.5万ドル」増えます。
「冗談じゃないぞ、おい」という話ですが、「年8%台まで金利を高めたが外貨建て永久債を買い入れようとする投資家は全くなかった」という、『興国生命』の高位関係者の発言がぞっとさせます。
「年8%」でも引き受け手がいないのです。
『興国生命』がやってしまったので、これを受けて外貨建て債券の信用が落下する恐れがあるのです。外貨建て債券でさらに金利が急騰したらどうなるでしょうか?
債券によって外貨を調達する手段が閉ざされて、流動性がやせ細ります。また、「ええい!」と高金利で無理やりに外国から借りたりしたら、その分だけ債務不履行(デフォルト)の可能性が高まります。
『興国生命』のコールスキップは痛恨の一事という他はない――そんな状況です。
(吉田ハンチング@dcp)
https://money1.jp/archives/92709