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東アジアでもEUのような多国間連携を=平和と発展へ―日中国交正常化50周年記念フォーラム
日中国交正常化50周年記念フォーラムは冒頭、熊達雲会長(山梨学院大学特任教授)が挨拶、楊宇駐日中国臨時代理大使、垂秀夫駐中国日本特命全権大使が講演(代読)した。
セッションでは、朱建栄東洋学園大学教授、程子学会津大学教授・前副学長、杜進拓殖大教授らのコーディネートの下、日中の教授らが研究成果や主張を交わした。
◆「変化」を直視し、「ボトムライン」設定を
川島真東京大教授は「変わったもの・変わらないもの:50年の日中関係を振り返る」と題して報告。「1972年の国交正常化以来の協調時代を経て日中両国を取り巻く情勢が変化し、特に2010年代以降、合意形成が難しくなってきた」と分析。50年前の原点に立ち返り、戦略的互恵関係文書など日中両国で締結した4項目の合意文書を踏まえて国内政治、経済、世界と東アジアの国際関係などについて、再確認すべきだと訴えた。
その上で、50年前に比べ日中共に中央(首相官邸や共産党)に権力が集まっているが、対話が滞っていると指摘。「中国は巨大化し経済安全保障の概念が出てきて政経分離も難しくなっている」と強調した。前提が大きく変化したため、こに対応して新たな現実を直視すべきであるとし、台湾、領土、歴史などの懸案問題について継続して解決に導く方策を模索する必要があると提唱。衝突しないための「ボトムライン(最低線)」の設定と首脳間をはじめあらゆるレベルでの対話を求めた。
◆アジア版エラスムス計画枠組みを
白鳥浩法政大教授は「地域志向の東アジアへ向けて:第二次冷戦を超えて」をテーマに報告。世界はコロナ感染とウクライナ戦争で「分断の時代」を迎えていると分析。今年は日中国交回復と沖縄返還から50周年で意義深い年だが、どう乗り越えていくか課題が山積していると懸念した。日本と中国は地政学的に引っ越すことができない関係であり、東アジアでも日米、日中、日韓など2国間の「線」から欧州のような「面」の関係に発展させるべきである提唱した。「EU統合」が手本になるとし、アジアにおける多国間の連携の必要だと訴えた。「EUのような共通体験をどう作っていくか。アジア版エラスムス計画(EU主導による高等教育運営の枠組み)をつくるべきだ」とも語った。
その場合、自由貿易の堅持が必須であり、その場合、RCEP(包括的経済連携協定)、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)、「一帯一路」が中心になると位置付けた。TPPは東に進みむ一方で一帯一路は西へ進展しており、相互補完的であるとし、RCEPが共通キャップとして機能すると構想した。米国主導で進められているIPEF(インド太平洋経済枠組み)は不透明で分裂を深めると懸念した。地域の信頼醸成が最も重要であり、国益だけでなく地域益を考えるべきで、コロナ後の「第二次開国時代」への取り組みが重要と提唱した。
◆最大の財産は戦後の「和解」
劉傑早稲田大教授は「回顧と展望:50年の日中関係が創出したもの」と題して報告。「日中間では多くを創り出してきており、共有できる公共財を残した」と指摘。日清修好条約から150年が経過、最近50年は最も平和な期間と位置付けた。最大の財産は戦争を乗り越えた和解であり、世界に誇ることができると語った。
さらに負の遺産をポジティブに転換することが重要だとし、戦略的で知的レベルの和解、中国の改革開放を成功させた日本の協力が特筆されると指摘した。大平正芳元首相が「豊かな中国が世界の繁栄につながる」と語ったのは重要であり、トウ小平氏の「遅れていることを認識しすべての先進国から学ばなければならない」との言葉も尊重すべきだと述べた。日中は相互依存と災害時の助け合いが重要で、留学生や研修生などのネットワークをさらに広げるよう提唱した。
Record China
https://www.recordchina.co.jp/b902809-s25-c100-d0199.html