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西九州新幹線の一番列車に乗ってきた!指定席がダメならばと自由席を狙った結果
》》》》西九州新幹線「かもめ」
西九州新幹線は、武雄温泉~長崎間の約66キロを最速23分で結ぶ、日本一短い新幹線です。武雄温泉駅で新幹線「かもめ」と在来線特急「リレーかもめ」を同じホームで乗り換える「対面乗換方式」により、博多と長崎を結んでいます。
本稿は鉄道の乗りつぶしを趣味としている筆者が、一般会社員として精神を擦り減らしながら、なんとか合間を見つけて個人的に乗ってきた西九州新幹線の一番列車「かもめ1号」のようすをお伝えするものです。開業からもう2週間も経つじゃないか! ニュースサイトのくせに遅いぞ! と言わず(筆者も同意見です)、大目に見ていただければ幸いです。
なお西九州新幹線そのものや開業による効果などについては、ねとらぼ交通課でもすでに詳しい解説記事を掲載しているので、そちらをあわせてごらんください。
●指定席のきっぷは「10秒で完売」……。筆者も購入できず(既報)
西九州新幹線の開業まであと1カ月となった8月23日、指定席きっぷの販売が始まりました。JR九州の発表によれば、開業当日の一番列車の指定席は、上りと下りのいずれも発売から10秒で完売したといいます。
筆者も一番列車の指定席券を狙い、インターネット列車予約サイトできっぷの予約が可能な「事前申込」サービスを利用しました。
この事前予約サービスは、発売の瞬間に駅窓口に並んでいる人たちと同じタイミングできっぷ購入バトルに参加する権利を得られるというもので、人気列車の場合は必ずきっぷが手に入るという保証はありません。
やはり新しい新幹線となると競争率は非常に高かったようで、残念ながらきっぷは手に入りませんでした(なお買えなかったという話自体は、他の記事ですでにしています)。
指定席券を購入できなくても、西九州新幹線には自由席の設定があります。自由席であれば、一番列車に乗れる可能性はまだ残されています。指定席であれば列車名と時刻の入ったきっぷが手に入るので記念になりますが、自由席ではきっぷに列車名の記載がなく、この“記念感”は薄れてしまいます。
きっぷは買えなかったし、乗りに行くのはやっぱり落ち着いてからでいいか……と思いつつ、指定席がダメなら自由席を狙えという記事を出したのも筆者なので、自由席ならきっと乗れるだろうという気持ちで開業前日に博多へ向かうことを決めました。
●筆者、博多へ向かう
筆者は開業の2日ほど前に博多駅前のビジネスホテルを予約。武雄温泉駅での対面乗り換えを含め、西九州新幹線の全区間を通しで乗車するのであれば、博多駅前か長崎駅前に宿を取るのが一般的でしょう。博多駅前に泊まった理由は、予約が直前すぎて空室がなかなか見つからなかったためです。
福岡への飛行機は当日に予約・発券を行いました。JALやANAを含めた一部の航空会社では25歳以下の搭乗者向けに当日予約限定の割引運賃があり、筆者は積極的に利用しています。26歳を過ぎてしまうと65歳までこの類いの当日割引運賃を使えなくなってしまうので、現在25歳の筆者にとっては今のうちに満足に使っておきたいものです。
予約したビジネスホテルに到着したのは前日の夜。残務を済ませ筆者は22時ごろに博多駅で翌日のきっぷを発券しました。発券後は博多駅構内を散策し、西九州新幹線開業までのカウントダウン表示や電光掲示板の最後の「かもめ(在来線特急)」表示を撮影するなどしてホテルに戻りました。
博多~長崎間の片道きっぷは通常6050円(自由席は5520円)ですが、ネット予約限定の「かもめネットきっぷ」では同区間を4200円で購入できます。この他、3日前までに予約する「かもめネット早特3」では片道3600円、年内の期間限定で7日前までに予約する「かもめネット早得7」では片道3200円で購入できます。
●西九州新幹線開業当日の朝
博多駅発の「リレーかもめ1号」は6時に出発します。時間に余裕をもって5時ごろに博多駅へ向かう予定でしたが、筆者が起床したのは5時過ぎでした。早速寝坊か、と思いながら朝の入浴を済ませてから、博多駅へ足早に向かいました。
博多駅のホームに到着したのは5時59分。発車ベルの鳴り終わりとほぼ同時にリレーかもめ1号に乗り込みました。先頭部では出発式をやっていたようなのですが、もうそれどころではありませんでした。
博多駅出発時のリレーかもめ1号の車内は、座席の約半分が埋まっている程度でした。ギリギリで乗り込んだ筆者でも、乗り換え駅の武雄温泉駅までの間、2人掛けの座席を1人で利用できました。
途中の江北駅では、同日に運行が始まった特急「かささぎ」との行き違いも見られました。江北駅は西九州新幹線の開業と同時に、肥前山口駅から改称しています。
リレーかもめ1号は、博多駅から1時間ほどで武雄温泉駅に到着。武雄温泉駅ではホームの対面に停車している「かもめ」に乗り換えます。リレーかもめ1号から「かもめ1号」への乗り換え時間は約3分です。当日のかもめ1号は自由席に乗車制限を設けると聞いていたのですが、実際は大きな混乱もなく、余裕をもってかもめ1号に乗り換えられました。
かもめ1号の車内はリレーかもめ1号よりも乗車人数が多く、デッキに立って車窓を楽しむ人や車内を散策する人も多く見られました。座席は自由席の3列+2列の配列のうち、3人掛けの真ん中座席以外がほとんど埋まり、通路側座席はひんぱんに入れ替わっている印象でした。
JR九州の発表によれば、開業日のかもめ1号の乗車率は124%で、自由席の乗車率は139%と最も利用者が多かった列車だったようです。
西九州新幹線は多くがトンネル区間で、車窓を楽しめる区間は多くありません。トンネルを抜けて一瞬明るくなったと思ったら、またすぐにトンネルに入る。これを無限に繰り返すため、焦らされている気分です。
とはいえ全く車窓がないというわけではなく、嬉野温泉や新大村、諫早などの途中停車駅付近の街並みや大村湾の景色を眺めることは、わずかながら可能です。トンネルを抜けるたびに景色や街並みが大きく変わるのも意外と悪くないのかもしれません。
●長崎駅にはあっという間に到着
かもめ1号は武雄温泉駅からわずか28分で終点の長崎駅に到着。武雄温泉~長崎間の乗車時間は列車によって23分~31分と異なりますが、実際に乗車していると本当にあっという間です。
博多~長崎間の所要時間は武雄温泉~長崎間の新幹線開業で約30分短縮し、最速約1時間20分となりました。武雄温泉~博多間もフル規格で開業すればさらに所要時間は短縮するでしょう。やっぱりはやくつながってほしいな、というのが率直な感想です。
長崎駅では行列に約40分並んで「西九州新幹線開業記念きっぷ」を購入しました。
その後はたまたま長崎駅で出会った知人と路面電車で市内を少し散策し、昼ごろに長崎駅に戻ったところ、朝とは比較にならないほどの人の多さに驚愕しました。路面電車の乗車待ち行列が歩道橋の上まで伸びている光景は見たことがありません。
駅周辺では新幹線開業にあわせてさまざまな催しが開かれ、訪れた多くの人がお祭りムードを楽しんでいました。長崎駅の商業施設「アミュプラザ長崎」ではなかなか気合いの入った限定紙袋を店舗ごとの先着順で配布しており、筆者もしっかりゲットしました。昼ごろから天気が崩れる予報が出ていたということもあり、西九州新幹線への乗車ミッションを完了した筆者はここで長崎を去りました。今度はまたゆっくり来たいと思います。
●博多へ戻る話(余談)
博多への復路は在来線を使用しました。これは筆者が往路と同じ経路で帰るのはなんだかなぁと思ってしまうひねくれ者であるためで、すでに乗りつぶしが済んでいる区間であっても、往路と違うルートを選ぶ場合が多いです。今回も同様です。
筆者が決めた帰り道は、長崎本線(長与支線)と大村線、佐世保線を経由する所要時間約4時間30分のルートです。新幹線の時短効果として示されるルートよりも遠回りで、新幹線より時間とお金も余計にかかる経路のため、一般的な旅行者には到底おすすめできるものではありません。本文中でも言及していますが、新幹線と特急を利用すれば長崎から博多まで1時間20分で帰れるようになっているのでなおさらです。
当然、博多駅に着いたころにはもう疲れ果ててしまい、朝が早かったこともありそのままホテルで翌日までぐっすり眠ってしまいました。ラーメンを食べに行こうと思っていたのに……(結局ラーメンは翌日帰る前に食べました)。