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【ニューズウィーク】日本国民の「韓国への感情」の深刻さを、韓国はまったく理解できていない
「決まっていないことを言うなよな。逆に会わないぞ」
9月21日、ニューヨークにて岸田首相と尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領の間での対面が実現した。両首脳が会うのは6月に続いて2回目。前回はマドリードでのNATO首脳会議拡大会合を利用、そして今回は国連総会と、共に単独の対面ではなく国際会議の場を利用したものだった。
この対面の実現までには紆余曲折があった。5月の尹新政権発足後、関係改善のため接触を続ける両国は、2019年12月以来途絶えている首脳会談実現に向け協議を続けてきた。
事件が起こったのは9月15日。韓国大統領府が突如、両国がニューヨークでの首脳会談に合意したと明らかにしたからである。韓国側の突然の発表に日本側は困惑。岸田首相は冒頭の言葉を口に出し、露骨に不快の意を示した。
明らかなのは、韓国側の日韓関係に関わる情報の取り扱いが粗雑なことだ。実際、新政権発足後、韓国側が情報をフライング、あるいは外交的に有利な形で色を付けて発表したのは、これが初めてではない。
例えば7月18日、東京で行われた新政権発足後初の日韓外相会談後の韓国メディア向けの記者会見で、朴振(パク・チン)外交部長官は元徴用工問題等の解決について「日本側も誠意を持って応じる用意があるという感じを受けた」と発言し、これを日本側が慌てて否定した。
■なぜ努力を無駄にしかねない言動を繰り返す?
尹錫悦は大統領選挙時から、日韓関係悪化は前政権の失策の1つであり、就任後には改善に力を入れると明言してきた。しかしながら、彼らが真に日韓関係の改善に努めるなら、情報の管理は慎重に行われて当然である。にもかかわらず、韓国政府はどうしてその努力を無駄にしかねない言動を繰り返し行うのか。
韓国政府の矛盾した行動を理解する第一の鍵は、これらの発言が行われたのが主として自国メディアに向けた場においてだった、ということだ。尹政権は低支持率に苦しんでおり、国会の多数も野党に握られた状態にある。彼らにとって立法府の同意なく自由に活動できる外交は、世論に実績を誇示できる重要な場であり、だからこそ成果をアピールするために、色を付けて公表する傾向がある。
つまり、今の韓国の外交は「外交のための外交」よりも「内政のための外交」なのである。
■日本の「空気」を読めない韓国
とはいえその結果として、他国との外交関係を損なうなら、それもまた「内政のための外交」にマイナスのはずだ。それでも対日関係において不用意な発言が続くのは、究極的には彼らが今の日本で韓国への国民感情がいかに大きく悪化し、元徴用工問題をはじめとする歴史認識問題を世論や政府がいかに深刻に受け止めているか理解していないからである。
事実、大統領選挙後に相次いで日本を訪れた新政府関係者は、知日派として知られる新任大使を含めて、等しく「日本の雰囲気がこんなに悪いとは思わなかった」という言葉を残している。
背景にあるのは、日韓両国の歴史認識問題の深刻さに対する理解のギャップである。日本ではこの問題は請求権協定をめぐる法律的解釈の問題であり、だからこそ18年の韓国最高裁判決後に大きく開いた解釈の差が埋まらない限り、問題が解決することはない、と重く考えている。しかし韓国ではこの問題が単なる「認識」の差にすぎず、容易に政治解決できると軽く考えている。
だからこそ、韓国側は日本側が日韓関係について慎重になる理由が理解できず、日本側を刺激する言動を繰り返す。外交交渉より前に、両国はこの認識の差から埋める必要がありそうだ。
10/4(火) 18:08配信
ニューズウィーク日本版
https://news.yahoo.co.jp/articles/5ddcf2ae9653fdeb4934d9940fa8299e4785c586