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「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のデロリアン、公道を快走! 神戸の男性2年半かけ完成
神戸・三宮の市街地を走る1台の外国車に通行人の視線が集まる。直線的なフォルムと、カモメが翼を広げたように上に開くガルウイングドアがトレードマークの「デロリアン」だ。1980年代のSF映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(BTTF)シリーズに登場したタイムマシン仕様で、公道を走れるように車検も合格している。劇中でタイムマシンを作ったのは変わり者の科学者だったが、この車のオーナーは神戸市東灘区に住む自営業の男性。趣味で約2年半かけて作ったという。
■モデルは1作目
エンジンを掛けると「プー、プー」と電子音が鳴り、ハンドル回りや天井がちかちか光る。Y字型の真空管を収めた「次元転移装置」。行きたい時代の年月などを表示する「タイムサーキット」。劇中でタイムトラベルの核をなすファン垂ぜんのメカに囲まれた運転席で、オーナーの津和敏夫さん(36)が言う。「特別なものではなくて、1分の1のプラモデルを作った感覚ですね」
映画では主人公の男子高校生マーティが、友人の科学者ドクが作ったタイムマシンで過去や未来を行き来する。ベースに使われたデロリアンは81~82年に9千台ほどだけ生産された幻の名車で、3部作では何度かモデルチェンジし、飛行式なども登場する。
津和さんが再現したのは、1作目で55年から85年にマーティが戻るときの機体。落雷のエネルギーを利用してタイムトラベルするシーンが有名で、そのとき電線に引っ掛ける棒の差し込み口までしっかりある。
■世界中の伴走者
米国の博物館に展示されている劇中車や、映画の場面を照らし合わせてリアルさを追求した。映画の舞台は80年代のアメリカ。がらくたを集めて作った設定のタイムマシンにより近づけるには旧式のジャンク品が欠かせない。約300種類のパーツのうち50種類ほどは欧米からかき集めた。
70~80年前のヘリコプターや米軍が使ったラジオの部品は流通量が極めて少なかった。次元転移装置などのレプリカは、趣味で作る人を探しては、通信アプリで交渉して手に入れた。
このとき生きたのが、かつて没頭したタイムマシンのプラモデル制作だった。2018年夏に実車のデロリアンを「買ってしまった」きっかけでもあった。世界中のプラモデル仲間がわがことのようにパーツ作りと収集に伴走してくれた。
国内では「デロリアンオーナーズクラブジャパン」の仲間に助けられた。わざわざアメリカから溶接棒を取り寄せ、排気口の溶接痕までうり二つに再現してくれた江村宏さん(50)=千葉県。副会長の橋本達也さん(57)=西宮市=は車の維持、修理も含めデロリアンのことなら何でも相談に乗った。「世界中のみんなの情熱と協力のおかげで実現した」と、津和さんの目頭が熱くなる。
■残り数%
神戸運輸監理部に通い詰めて保安基準に適合させ、ナンバープレートも取得。昨年10月、橋本さん、江村さんや親友の神主が見守る中、神戸・六甲アイランドで「完成祭」を執り行った。
車の専門メディアに「日本の公道を走れる世界で唯一のBTTFデロリアン」と紹介され、さらには劇中車の制作に携わったケビン・パイク氏から通信アプリで直接「あなたの資質が輝いている…」とのメッセージが届くなど、想像を超える反響があった。
完成祭後もタイヤのロゴなど「残り数%」を似せる努力を続けるが、「最近はワクワク感が薄れ、機械音の微妙な変化に耳を澄まして故障におびえる日々」と苦笑いする。
ちなみに、津和さんがタイムトラベルしてみたい時代は「30年後」の2052年。「その頃もまだこのデロリアンに乗れているかを知りたい」からだ。一方で、未来のことは知らなくていいという映画の教訓と道路交通法順守を念頭に、タイムトラベルに必要な時速88マイル(約140キロ)で走ることはないと誓う。行き先はだいたい近所のスーパー。そうだ、未来は自分自身で作るものだ-。映画のドクもきっと、そううなずいてくれるに違いない。(井上太郎)
時を超えたデロリアン
着いたのは2022年のミナト神戸?!
着いたのは2022年のミナト神戸?!
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▶️ http://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202209/0015667031.shtml …