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『ちむどんどん』『カムカムエヴリバディ』にみる、朝ドラが描く“兄弟の恋愛”の役割』
朝ドラが描く“きょうだいの恋愛”の役割比嘉歌子(上白石萌歌)と砂川智(前田公輝)の2人がどうにもこうにもハッキリしない。
「早くくっついちゃえよ~!」と言いたくなるが、そう簡単にいかないのが恋愛なのか?
現在、『ちむどんどん』(NHK総合)は、比嘉賢秀(竜星涼)と猪野清恵(佐津川愛美)ペア、歌子と智ペアの恋の行方と、ヒロイン・暢子(黒島結菜)が店の不振をどう打開するのか……という二軸で展開されている。
店の方は「猪野養豚場」がキーワードとなっていたが、この4人の恋に関しては、すれちがいもあってしばらく平行線のままだった。
しかし、9月14日に放送された第113話にて、紆余曲折あった賢秀と清恵の想いが通じ合い、一件落着となった。
一方、歌子は、智がまだ暢子に気があるのだと勘違い。意地を張ってケンカした矢先、智が事故に……。結果的に大したことはなく、2人は仲直り。ようやく一歩前進した程度だ。両思いのはずの2人のやりとりが、しばらく描かれていないのがヤキモキする! 朝ドラでは、ヒロインの恋はもちろん、こうして、きょうだいの恋愛も多種多様に描いてきた。
たとえば直近に放送されていた『カムカムエヴリバディ』もそうだ。 初代ヒロイン・安子(上白石萌音)の兄・算太(濱田岳)は、雉真家に仕える女中・雪衣(岡田結実)に「店(和菓子屋たちばな)を始める家が手に入ったら、そこでわしと一緒に暮らしてくれんか?」と想いを伝えた。しかし、朝方、雉真勇(村上虹郎)の部屋から彼女が出てくるのを見てしまう。
その後「たちばな」再建のための通帳を持って蒸発して……。 約30年の時を経て、算太は3代目ヒロイン・ひなた(川栄李奈)の前に現れる。安子に会うことは叶わなかったが、2代目ヒロイン・るい(深津絵里)たちとも交流を深めた。
この世を去る直前、算太は2つの通帳を託す。それはあの「たちばな」再建のための貯金と、るいの姿を見てから毎月入金していた通帳だった。
彼の想いを知ったるいは、算太が亡くなったあと、地元・岡山へ。そこで安子と向き合う決意をする。結果的に算太が、安子、るい、ひなたをつなぐ役割を担ったのだ。 ひなたの弟・桃太郎(青木柚)の恋も忘れられない。
彼は幼いころからひなたの親友・小夜子(新川優愛)に想いをよせていたが、彼女が赤螺吉之丞(徳永ゆうき)と結婚すると知って意気消沈。最終回では、水田きぬ(小野花梨)の孫・花菜(小野花梨/二役)に一目惚れし、出会ったその日に告白。翌年に結婚した。
こうしてみると、朝ドラが描く“きょうだいの恋愛”は、物語の交差点的な役割を果たしているように思う。彼ら彼女らが、恋をして、成就して、失恋して、結婚して……と岐路に立つたび、展開が枝分かれし、ヒロインの人生も偶発的に転がっていく。
たとえば、算太が失恋し、蒸発したことで安子たちの人生が大きく変わったし、養豚場と暢子の店を繋いだのは賢秀がいたから。
そもそも喧嘩がなければ、清恵が巡りめぐって店を訪れることもなかった。 また、桃太郎と同じく、意中の相手に何も告げず、想いを心の奥にしまった過去がある歌子。
彼女が店に来なければ、休業中といえど「ちむどんどん」も大ピンチを迎えていただろう。その裏には母・優子(仲間由紀恵)が、“歌子を智のそばにおいてやりたい”という気持ちがあった。
今の智と歌子に障害はないはず。桃太郎のように最後のさいごは幸せになってほしい。 現在放送中の第23週サブタイトルが「にんじんしりしりーは突然に」。
こちらは、小田和正の名曲「ラブ・ストーリーは突然に」のオマージュという見方もできるが、23週の後半戦はさらに恋愛関係が大きく動いていくのだろうか?