あわせて読みたい
未来型の風力発電後はスウィーツの香り!
風力発電の後はお待ち兼ねのスウィーツ!
地球にやさしいはずの風力発電だが、巨大なブレード(羽)に鳥類が衝突してしまうという難点があったが、他にも問題がある。ブレードのほとんどが埋立て処分するしかないのだ。
そこで米国の研究グループが、地球にやさしくて、しかも甘い解決策を考案してくれた。
彼らが開発した植物由来ポリマーなどを使ったブレード用新素材は、使用後は美味しいグミキャンディにリサイクルできるのだそうだ。
新しいブレードとして再利用できるほか、家庭用の台所カウンターや車のテールライト、さらにはおむつまで、さまざまな製品にリサイクルできる。
この研究は8月に開催されたアメリカ化学会(American Chemical Society)の学会で発表された。
グラスファイバー(ガラス繊維)製の風力タービンのブレード(羽)は、サッカー場の半分ほどの長さになることもある。そんな大きなものが、ほとんどの場合は使い終われば埋立て処分されてしまう。
しかも、ブレードの廃棄はいっそう厄介なものになると予測される。
なぜなら、ブレードが大きいほど発電効率が上がるため、今後ますます大型化するだろうからだ。また発電効率を上げるために、耐用年数がすぎる前に大型ブレードに交換されることもある。
[もっと知りたい!→]風力発電の羽根(ブレード)を黒く塗るだけで鳥の衝突死が70%減少(ノルウェー研究)
植物由来ポリマーを組み合わせて作った新素材
そこで米ミシガン州立大学のジョン・ドーガン氏らは、グラスファイバーに「植物由来ポリマー」と「合成ポリマー」を組み合わせて、新しいブレード用の素材を開発した。
この熱可塑性樹脂で作られたパネルは、ブレードや自動車に使えるだけの強度と耐久性がある。
また溶かしてグラスファイバーを取り除いてしまえば、新たにリサイクルすることもできる。リサイクルで生まれ変わった素材は、物理性能がまったく同じなので、再び風力タービンのブレードに生まれ変わらせてもいい。
・合わせて読みたい→鳥が近づくと風力発電のタービンが止まる。スマートカメラが鳥の衝突事故を大幅に減らす
お菓子のグミから、台所天板まで幅広い応用が可能
この熱可塑性樹脂の最大の特徴は用途の豊富さかもしれない。
たとえば、鉱物を混ぜれば人工石になり、家庭の台所用カウンター天板や流しなどに使える。
粉砕してほかのプラスチックを混ぜれば、射出成型(プラスチック製品の7、8割がこれで作られる)することもできる。
さらにリサイクルすると、より価値の高い素材にアップグレードしてしまう。アルカリ溶液で分解すると、「ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)」ができるのだ。これはアクリル製の窓や車のテールライトなどに使われる素材だ。
また分解時の温度を上げてやれば、おむつなどに使われる「吸収性ポリマー」が出来上がる。
さらにキャンディやスポーツドリンクに使われる「乳酸カリウム」を作ることまでできる。実際、ドーガン氏はこの新素材からきちんと食べられるグミを作ったそうだ。
今後の課題は、材料の確保と心理的な抵抗感?
今回、この新素材が風力タービンに使える性能であることが証明された。今後は、実際にこの素材から実験用のブレードが作られることになるはずだ。
今のところの問題は、普及させるには原材料となる植物由来ポリマーが不足している点だけであるという。
いや、きっともう1つ問題があるだろう。どんなに甘くても、元風力タービンのグミはちょっとと思う人も多いだろうからだ。
だが、ドーガン氏が言うには、「トウモロコシであれ草であれ、植物由来の炭素原子は、化石燃料由来の炭素原子と何ら変わりありません」とのこと。
今回彼らが実証したのは、畑のバイオマスから丈夫なプラスチックを作り、それを食品に戻せるということだ。
そんな壮大な炭素循環を意識できるグミならば、よりいっそう美味しく感じられるかもしれない。
References:Wind turbine blades could someday be recycled into sweet treats – American Chemical Society / Wind turbine blades could someday be recycled into sweet treats / written by hiroching / edited by / parumo