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吸血鬼の遺骨が発見される!その首には死から蘇らないよう、首に鎌(かま)がかけられていた。
》》》》》》吸血鬼伝説が、蘇る!!
かつてヨーロッパでは吸血鬼の存在が信じられていた。実際には吸血鬼でないにもかかわらず、その疑惑をかけられた人間が悲惨な死を遂げていった。
ポーランドにある17世紀の墓地で、考古学者によって女性の「吸血鬼」の骸骨が発見された。その首には死から蘇らないよう、首に鎌(かま)がかけられていた。
鎌は、当時の迷信深いポーランド人が、吸血鬼と思われる死者を拘束し、死から復活できないようにするためによく使われていた農具である。
吸血鬼といえば、ルーマニアのトランシルバニア地方が有名だ。神秘的なこの地域は、伝説のドラキュラ伯爵の住んでいた場所とされ、15世紀の実在の王子、ヴラド・ドラクル、つまり、串刺し公「ヴラド・ツェペシュ」が、実際に拠点としていたところでもある。
彼の残虐な行為が、ドラキュラ伝説に多大な影響を与えたと言われている。なんとも興味深い今回の新たな発見もそうだが、中世から近世にかけて、当時の人々が吸血鬼の存在を信じていたことは、それにまつわる墓や遺物が証明している。
ポーランドの小さな村から吸血鬼の遺骨を発見
中世当時、吸血鬼は中央および東ヨーロッパ全域で恐れられ、忌み嫌われていた。ポーランド南東部サブカルパティア地方にあるのピエンという村の住民たちも、例外ではなかったようだ。
ポーランド、トルンにあるニコラウス・コペルニクス大学の考古学者によって、ピエン近郊の発掘調査が行なわれ、明らかに吸血鬼と断定されていたとおぼしき、17世紀の女性の遺骨が発見されたのだ。
だが、専門家たちはどうして、彼女が吸血鬼だという恐ろしい結論に達したのだろうか?
この女性の埋葬状態が、古代の吸血鬼伝承や、ボーランドの地で見つかった、他の中世の吸血鬼の埋葬方法と一致していたからだ。
ポーランドの墓から見つかった吸血鬼の女性は、首に鎌が固定され、左足の親指に南京錠が取りつけられていた。彼女が死から復活するのを防ぐためだったと思われる。 / image credit:Mirosław Blicharski / Aleksander Poznań
仰向けに安置されていたこの女性は、まるで起き上がれないようにするかのように、首のすぐ上に鎌が打ち込まれて固定されていた。
この地域の民間伝承では、吸血鬼の埋葬はこのようにすることが推奨されていたようだ。
死んだ人が吸血鬼だった、あるいは吸血鬼だと信じられていた場合、こうした埋葬スタイルをとることで、貪欲な悪魔がよみがえるのを防ぐことができると考えられていたのだ。
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左足の親指につけられた南京錠 / image credit:Mirosław Blicharski / Aleksander Poznań
考古学者で、発掘チームリーダーであるダリウス・ポリンスキ教授は言う。「鎌はただ置かれているだけでなく、死者が起き上がろうとすると、頭が切り落とされたり、傷を負うようになっていました」
吸血鬼とされたこの女性は、鎌だけでなく、左足の親指に南京錠が取りつけられていた。ポリンスキ教授によると、これは吸血鬼再生のプロセスを閉鎖し、復活の可能性を絶つための行為だという。
ポーランド、ピエンで発見された吸血鬼の墓を発掘する考古学者たち / image credit:Mirosław Blicharski / Aleksander Poznań
高貴な人でも吸血鬼の仲間入りをすることがあると信じられていた
この女性の首を固定していた鎌は、彼女が17世紀に吸血鬼だと疑われたことをはっきり示している。
だが、血を貪る悪魔だと思われていたにもかかわらず、この女性は驚くほど丁寧に埋葬されていた。
例えば、17世紀当時では高価で手に入りにくかった、シルクの帽子を被っていたのだ。これは、彼女が中世社会で身分の高い階級の人間だったことを示している。
ピエン近くの別の場所での発掘調査では、銀の宝飾品、シルクの衣装、半貴石のネックレス、さらにはブロンズの鉢など、価値の高い埋葬品が納められた多くの中世の墓が発見されている。
これらは、この女性が発見された場所とは別だが、一般的にこの周辺は、エリート層の埋葬のために確保されていたエリアと思われる。
女性の身体的な特徴のひとつも、彼女が吸血鬼だと考えられた理由のひとつかもしれない。前歯が明らかにかなり突き出ているのだ。これが、吸血鬼的だと思われたのだろう。
前歯が付きだしていたことで吸血鬼の疑いをかけられた可能性がある/ image credit:Mirosław Blicharski / Aleksander Poznań
吸血鬼に対抗する中世の科学
ピエンで吸血鬼の墓を発見した考古学者たちは、その発見の異様な特徴をあげているが、異常だとはいえ、前列がないわけではなかった。
2015年には、ポーランド北西部にある村、ドロースコで発掘調査を行っていた考古学者が、同様または同一の方法で、地面に固定されるように安置された5人の遺体を発見した。
30代の女性ふたり、30代または40代の男性ひとり、10代の少女ひとりの、4人の遺体が、ピエンの女性と同じように、首がしっかりと鎌で固定されていた。
50代以上の年配女性は、やはり鎌で腰を固定されていて、喉の上に石が乗せられ、口の中に硬貨が入れられていた。
こうしたやり方は、この女性が吸血鬼として戻ってくるのを防ぐために必要な措置だったと考えられていたのだ。
カナダの人類学者で、ドロースコ発掘調査の専門家でもあるマレク・ポルシンは、2017年のviant-burials-poland-open-casket-secret-lives-vampires-180966970/” target=”_blank”>スミソニアンマガジンに、この地域の民間伝承に、死からよみがえって生者を襲い、呪い、傷つける恐ろしい物語がたくさんあると語る。
根拠は定かではないが、鋳造金属で作られたものがこうした災厄から身を守るために利用された。
「世界中で、鋭利な道具や鉄など、火やハンマーで作られたものはすべて、悪魔に対抗する特性を持っていると信じられていました」ポルシンは言う。
地元の民間伝承では、金属でできた鎌を使えば、吸血鬼を墓に閉じ込めておくことができると信じられていた / image credit:Mirosław Blicharski / Aleksander Poznań
死からよみがえった吸血鬼に対抗する
金属製の鎌を使うのは、吸血鬼を墓に閉じ込めておく唯一の方法ではなかった。
「頭や脚を切り落とす、頭を地面に突っ伏す、燃やす、石で砕くなど、他にもさまざまな方法がありました」ポリンスキは説明する。
2013年、ポーランド南部の町グリヴィツェて発掘調査を行った専門家は、こうした防御策の初めての証拠を発見した。
吸血鬼とされた人々特有の埋葬儀式のほかに、切断された頭が足の間に置かれた遺体が見つかったのだ。
吸血鬼信仰は、隔絶された田舎の村だけでなく、都市部でも一般的だったようだ。
2008年には、中世の時代、ポーランドの首都だったクラクフの旧市街で発掘調査が行われ、斬首された人骨を含む墓が複数発見された。
今回発見された女性の遺骨は、トルンのニコラウス・コペルニクス大学に運ばれ、そこで専門家たちがより徹底的な調査を行う予定だ。
References:Remains of ‘female vampire’ found with sickle across her neck and a padlocked toe in Poland – Arkeonews / 17th Century Vampire Grave Unearthed in Poland | Ancient Origins / written by konohazuku / edited by / parumo