あわせて読みたい
なぜF1角田裕毅とレッドブル戦略担当がSNSで誹謗中傷される“炎上騒動”が起きたのか…その陰謀説の真相とは?
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20220908-00010000-wordleafs-moto
オランダGPの終了後、優勝したレッドブルの戦略担当エンジニアのハンナ・シュミッツと、角田裕毅(アルファタウリ)に対して、一部過激なファンによる誹謗中傷がSNS上で書き込まれる事態となっている。
なぜ一部のファンが異なるチームに所属する2人を誹謗中傷したのか。それは、レース終盤に角田がリタイアしたことが、結果的にレッドブルの有利に働き、フェルスタッペン(レッドブル)が優勝したからだ。
今年のオランダGPはタイヤの選択が難しく、レースは各チームのピット戦略が鍵となった。ポールポジションからスタートしたフェルスタッペンはソフトタイヤを履いてスタートした後、レース序盤に1回目のピットストップを行い、2回ストップの作戦を採って、トップを走っていた。
そのころ、2台ともミディアムタイヤでスタートしていたメルセデス勢はレース中盤にピットインし、ミディアムタイヤからハードタイヤに交換し、1ストップ作戦でフェルスタッペンを追っていた。
先頭を走っていたのはフェルスタッペンだが、メルセデス勢2台との差は徐々に詰まっていた。さらにフェルスタッペンはもう1回ピットインしなければならない。
このとき、トップと2位を走っていたルイス・ハミルトンの差は13秒で、3位のジョージ・ラッセル(ともにメルセデス)との差も16秒で、ピットストップロスが約18秒のザントフォールト・サーキットでは、このままフェルスタッペンがピットインすれば、メルセデス勢2台の後方に下がり、レース終盤はメルセデス勢2台を追い上げるレースになる状況が待っていた。
ところが、ここで角田がマシンに異変を感じて、コース上でストップ。なんとか自力でピットインしたものの、再度コースに復帰すると1周もできずにすぐにコース上にマシンを止めてリタイアしたことで、その角田のマシンを安全に撤去するために、レースコントロールは、バーチャル・セーフティカー(VSC)を出して、コース上を走るマシンの速度を強制的に落とした。
こうなるとピットインするマシンとコース上を走るマシンの速度の差が縮まり、ピットストップロスタイムも小さくなるため、フェルスタッペンはピットインしてもメルセデス勢に抜かれることなく、コースに復帰できる。つまり、不利な状況に陥っていたレッドブルとフェルスタッペンは、角田が止まったことによって形勢逆転に成功したわけだ。
その状況で国際映像がレッドブルの戦略担当エンジニアであるシュミッツが微笑んでいるシーンをとらえたため、一部のファンの怒りに火をつけた。というのも、レッドブルと角田が所属するアルファタウリは姉妹チームで、なんらかの陰謀があったのではないか、との憶測が生まれたのである。
過去にF1ではクラッシュ・ゲート事件という故意にクラッシュすることで、もう1台を有利にした事件があった。しかし、そのときは同じチームにいた2台で採られた策略で、今回は姉妹チームとはいえ、まったく異なるチーム。レース中、チームスタッフ同士が行き来することはできないし、無線で連絡を取ろうにも、それは国際自動車連盟(FIA)によって監視されており、作為的な戦略を採れば、違反の対象になるため、そんなことを行うはずがない。
しかも、角田が止まった状況を考えれば、それが事実無根であることは明白だ。
まず最初にコース上にマシンを止めたのはチームからではなく、角田自身の判断だったこと。
「ピットストップを終えてコースに復帰したら、まっすぐ走っていても片側だけタイヤがホイールスピンしていたので、リアタイヤがきちんと装着されていないと思った」という角田は、無線でそのことをピットに知らせ、チームは「すぐにマシンを止めるように」と指示を出す。
そのとき、角田はポイント争いをしていたため、自分からポイント獲得のチャンスを手放すことは考えられない。
また、11番手を走行していた角田が、上位陣の状況がどうなっているのかは知り得る術はない。
しかもチームはデータ上、タイヤは外れていないことを確認し、角田をピットインさせている。この時点でまだVSCは出されていない。ピットインした角田とチームはリアタイヤが片側だけ空転した理由をつかめないまま、タイヤを履き替え、もう一度ピットアウトしたが、今度はデファレンシャルに異常を示すデータが発見されたため、コース上にマシンを止めた。マシンに異常があることを認識しながら、走行を続けると違反に問われる可能性があるためだ。…
続きはソース
(文責・尾張正博/モータージャーナリスト)