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韓国でチキンの不買運動 3大フランチャイズ店がそろって値上げ 庶民の人気食が“高級食”に
韓国では、2019年7月、日本の韓国に対する輸出制限措置に対して日本製品不買運動が起きた。そこで広まったのが「NO JAPAN」のポスター。その日の丸の部分をチキンの写真に差し替え、「行きません」「買いません」の文字を、「注文しません」「食べません」に入れ替えたポスターを、エフエムコリアが貼り出したのだった。
韓国風フライドチキンの簡単な歴史について述べておくと、もともとはトンダクと呼ばれ、以前は鶏1羽を丸ごと油で揚げたシンプルなものだった。1985年に、韓国人の口に合うような甘辛ソースを衣につけたヤンニョムトンダクが売り出されると、庶民の間で人気急上昇。おやつやビールの代表的なつまみになった。
その後、さまざまなフランチャイズが生まれてメニューも多様化し、高価な油やソース、食材を使って独自のメニューが発売さえるようになると、人気とともに価格も急上昇。フライドチキンが庶民の食べ物ではなくなってしまったのだ。
チキンフランチャイズの売り上げトップ3を占める「キョチョン」「bbq」「bhc」に、2万ウォン(約2050円)以下のメニューはほとんどない。各社がまるで談合でもしたかのように、トップ3社の価格はほぼ同じだ。2022年8月現在、定番メニューである「キョチョン」の「リアルフライド」が1万7500ウォン、「bbq」の「黄金オリーブ」が2万ウォン、「bhc」の「フライドコンボ」が2万ウォン。一般的な収入では気軽に食べることができないものになってしまった。
最近の値上げも急だった。昨年11月には「キョチョン」が全メニューを500ウォン~2千ウォン引き上げ、「bhc」もこの1カ月後に人気メニューを1千~2千ウォン引き上げた。他のチキンブランドもトップ3社に合わせて値段をつけているため、全体的な値上げに映った。
「NO CHICKEN」運動の広がりを狙い、韓国の大型スーパーである「ホームプラス」は大盛りチキン1箱6990ウォン(約715円)というダンダンチキンの販売を開始した。驚くほどの安さと量、さらにおいしいと評判に。一日当たりの販売量が限られているため、毎回販売開始とともに売り切れてしまう。
筆者も8月6日午後、ソウル市東大門区にある「ホームプラス」を訪ねてみた。ダンダンチキンの前には販売開始30分前から長蛇の列。販売から5分で売り切れた。列に並ぶひとりは、「ネットで『NO CHICKEN』のポスターを見て、高い価格に執着するフランチャイズチキン店に復讐(ふくしゅう)したい気持ちが募った」と語った。
「復讐」とまでいわせる韓国の庶民感情への刺激は、「bbq」の尹洪根(ユン・ホングン)会長のひとことからはじまった。今年3月、あるラジオ番組に出演し、「チキン一つに3万ウォンが妥当」と発言したのだ。ただでさえ物価高に苦しむ国民は激怒した。昨年12月、「bhc」が値上げしたのだが、このときに「うちは当分値上げしない」といっていたはず。ところが「3万ウォンチキン発言」の直後の5月2日、「bbq」は人気メニューの価格を最大2千ウォンも引き上げると発表した。ウクライナ紛争による小麦粉など材料価格の上昇や、新型コロナウイルスによる物流配送の滞りなどが理由だった。
韓国人がさらに怒りをあらわにしたのは、「bbq」が日本で展開する「bb.q オリーブチキンカフェ」の価格だった。
同社は東京と大阪、奈良県などに23店舗を展開。5月10日に価格改定を公表したが、その引き上げ額は30~100円と、韓国の半分以下だった。ネットでは「日本はウクライナ紛争の影響を韓国の半分しか受けない国なのか」「日本人には特別に優遇し、自国民は無視するのか」と怒りが加熱した。高いチキンを買う人々を「チキンフランチャイズの奴隷」と卑下するコメントもよせられている。
しかし大手チキンフランチャイズは強気だ。安売りチキンに反対する声を上げている。「NO CHICKEN」運動は長続きしないと読んでいるともいわれる。消費者側は「(大手の)反対に反対する」「自業自得」「ホームプラスを応援する」という安売りチキン擁護派が多数のようだ。
「NO CHICKEN」運動の攻防は収まる気配を見せていない。
ノ・ミンハ(現地・ジャーナリスト)
9/4(日) 11:30配信
AERA dot.
https://news.yahoo.co.jp/articles/6d1b5a8fe4e2645d1cc95a706242b821e401e865