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フランスでアジア人差別横行 「犬を食べる黄色い奴らを縛りつけろ」「中国なんて嫌い。ウィルスは全部そのクソの国から来てんだよ」
フランスでは、新型コロナウイルスの流行が始まった時期から外国人に対する人種差別が増加している。感染拡大を受け、2020年10月28日、エマニュエル・マクロン大統領が2回目の外出制限を発表したが、その外出制限がさらに人種差別に拍車をかけた。
特に中国が感染の発生源としてとらえられていることから、中国人が実際に暴行される事件や、中国系レストランに「国から出て行け」と落書きされる事件が起きている。さらにSNS上ではなんの考慮もなく増悪の言葉が拡散されていたのだ。例えば、ツイッター上では下記のようなツイートが流されていた。
「ヒットラーはユダヤ人ではなく中国人を殺すべきだった」
「漫画をやめろ。アジア人狩りだ。犬を食べる黄色い奴らを縛りつけろ」
「どうでもいいんだよ。中国なんて嫌いなんだ。地図から消せ。このクソ野郎。ウィルスは全部そのクソの国から来てんだよ」
こういったツイートを見てもわかることは、書いた本人は中国人を対象にしているのだろうと考えられるが、ツイートの中には「漫画」という言葉がでてきたり、「アジア人狩り」などアジア全体を対象にする言葉に置き換わっているものもある。これは中国とアジアの区別がつかない人も多いためだ。見た目でもまったく見分けがつかない場合も多く、アジア人の一員でもある日本人も、注意した方が無難であることは間違いない。
しかしこれらのツイートは、ただ単にアジア人を不快にするだけで終わらなかった。これを見たアジア人の団体はこの流れをとめるべく警察に訴えたのだ。そして4カ月にわたる捜査の結果、ヘイトツイートと認定された5人が起訴されることとなった。3月25日、その裁判がパリ17区の刑事裁判所で始まったのである。
SNSで差別発言した若者たち
アカウントを特定されたのは全部で9人だ。そのうち、5人が成人であり、4人はまだ未成年である。未成年は別の場所で裁きを受けることになるが、今回裁判が始まるのは成人の5人、19歳から25歳の若者たちに対してだ。その中の一人は、フランスのトップクラスのエリート校とされるパリ政治学院2年生の20歳だった。フランスのエリートになるはずの若者は、「中国人が横を通りすぎる度に襲え」と書き込んでいた。
起訴されている中の他の一人にはエンジニア系のグランゼコールに通っていた21歳もいた。外出制限の発表にうんざりしていたため書いたという。しかし、「あなたは人種差別主義者ですか?」との問いには否定する。「書いたことを本気で考えていたわけではないし、ネットだから書いたけど日常で言うわけではない」と答えた。
「高校の生徒は、第2外国語と第3外国語で中国語を習っている奴らを殴ってやれ」と書いた25歳もいた。しかし、これは「ユーモアだった」と説明する。現在は、受け入れられない人種差別的発言だったと理解してはいるようだ。
アジア人団体の反応
訴えを起こした『全ての人に安全を』と呼びかけるグループの広報担当者サンレイ・タン氏は、今回、警察がちゃんと動いてくれたことに驚きと喜びを感じていると語る。以前なら、こういったアジア人の声は無視されてきた経験があるからだろう。
「6か月以内にツイートしたアカウントの身元が特定され、起訴されるのは驚きだ。これは、事の重要さが認識された証である」
フランスの若者による中国人協会(AJCF)の副代表は、「この裁判は、象徴的な側面もあります。もうSNSで(法に背くことを)何も書くことはできません。ネットという免責はもう終わりなのです」と語る。
アジア人に対する人種差別は、これまでも常に存在していた。しかし、移民第1世代の人たちは大きく反論してこなかったのだ。だが、第2世代、第3世代の若者はこの状況にうんざりしている。今回、このようにアジアの若者たちがSNSの差別に対して迅速に行動したのも、#MeToo運動や#BlackLivesMatter運動に触発されたことも大きい。今回の行動は、未来への一歩とも言えるのだ。
(略)
ヤフーニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/2257556a545c0d1e9dd757a8efb3f578ea949059