記事によると、米国内で生産された電気自動車(EV)にのみ補助金を支給するとの内容が盛り込まれたIRAが成立したことを受け、韓国では政府や自動車業界が対応に追われている。
産業通商資源部長官は大韓商工会議所で行われた半導体・自動車・バッテリー業界懇談会で「9月に通商交渉本部長と訪米する計画があり、本格的な交渉が始まる」と述べ、積極的な対応を示唆した。外交部も「法執行で柔軟性を発揮してほしい」とのメッセージを複数のルートを通じて米国側に伝えるとしている。現代自動車グループ会長は米国の状況を確認するため23日に渡米したという。
記事は「IRAに強く反発し対応策を練っているのは欧州の自動車メーカーや欧州連合(EU)も同じだが、昨年に米国で自動車販売1位を記録したトヨタには焦る様子が見られない」と指摘し、「トヨタは米政界への積極的なロビー活動により被害を最小化したと言われている」と伝えた。
IRAの前身ともいえるビルド・バック・ベター(BBB)法案には、「Union Made Car(労働組合のある企業がつくった車)」に約4500ドル(約61万円)の補助金を支給するという、トヨタにとっては「致命的」な内容が含まれていた。米国工場に労働組合のあるGMやフォードは歓迎したが、米国にすでに約10の工場を持ち電気自動車施設を増やしていたトヨタは、投資をしても不利になる状況になりかねなかった。
日本をはじめドイツ、フランス、韓国など各国の政府が米国に書簡を送り抗議する中、トヨタは政界を直接説得する素早い「ロビー」攻勢を繰り広げ、その結果IRAではこの内容が除外されたという。
産業界では「米国内で個別企業だけでなく協会や政府までもが同時に動く日本のロビー力が、自国企業に有利な環境をつくる際に大きな影響力を発揮している」との評価が出ているという。自動車産業協会のチョン・マンギ会長は、「日本は企業だけでなく自動車協会なども米国や欧州に事務所を構えてロビー活動をするほど体系的に動いている」とし、「韓国の国会や政府も対米アウトリーチ活動(対外接触支援活動)を強化しなければならない」と話したという。
米政府はまた、製造メーカーがエコカーの累積販売台数20万台を達成するまで補助金を支給していたものを60万台に拡大しようとしていたが、販売台数がすでに20万台を超えていたトヨタ、GM、テスラはこの規制自体をなくすよう求めた。結局IRAでは、この20万台の数量制限も取り払われたという。
業界では「IRAが韓国と欧州企業の足を引っ張ったことで、電気自動車への転換が遅れているトヨタに挽回のチャンスがめぐってきた」と分析されている。トヨタにはまだ米国内生産の電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)がないが、トヨタはPHV市場では米国内にライバルがいないと言われている上、現代自動車のように生産工場移転・新設の際に労働組合に反対されることがほとんどない。
一方、現代自動車は最近、副社長の率いる対応チームをつくったが、米国内での電気自動車生産時期を早めること以外には特別な対策を打ち出せていない。韓国政府は米政府と協議を行い、世界貿易機関(WTO)への提訴も検討しているが、「対応が遅すぎる」との指摘が出ているという。
この記事を見た韓国のネットユーザーからは「文在寅(ムン・ジェイン)政権の時に外交部が仕事しなかった結果。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が慌てて対応したけど手遅れだった」「韓国が抱える最大の問題は怠けた公務員」「5年にわたって反米親中を続けた前政権がこうして現政権を苦しめている」「日本は自国の利益になることなら何でもする。日本の外交官は何度も米政府関係者と会い、米国の心を日本に向けるため必死に努力したのだろう」「日本のこういうところは学び、まねするべきだ」「『二度と日本には負けない』と言っていた文大統領。惨敗だよ」など、前政権への批判の声が多数寄せられている。(翻訳・編集/堂本)