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日本でいちばん生産されている切り花は?
日本では、キクの切り花が生産1位
※この記事は農研機構(NARO)の提供でお送りします。
日本で、いちばん生産量の多い切り花は何だかご存知ですか?
バラでも、ユリでも、カーネーションでもなく、キクなんです。キクは、日本の切り花生産量の4割を占めています。
キクといえば、白や黄色のイメージが強いと思いますが、緑、オレンジ、ピンク、赤など、さまざまな色が存在します。
でも実は、青色のキクは自然界には存在しません。
もし、日本で広く親しまれているキクに青色が誕生したら。
冠婚葬祭でよく使われるイメージの強いキクですが、色のバリエーションが増えることで、フラワーアレンジメントなどの用途が広がって、もっと切り花産業が盛り上がるはずです。
そんなことを考えた研究者が「農研機構(NARO)」という国立の研究機関に所属している野田尚信さん達です。
2001年から研究をスタートし、2017年に青いキクを開発することに成功しました。そして、青いキクをお花屋さんで販売するための研究開発が進んでいます。
この記事では、長年の研究の末に青いキクを開発した、農研機構の野田さん達の取り組みをご紹介します。
そもそも花の色はどうやって決まるの?
花の色は、色素によって決まります。
中でも赤や紫、青といった色は「アントシアニン」と言われる色素によって発色しています。このアントシアニンにはいくつか種類があるのですが、「デルフィニジン」というタイプのものを含む花は、青くなることが多いことがわかっています。
つまり、キクもデルフィニジンが作れれば、青くなるかもしれないと野田さん達は考えました。
花を青くさせる色素、デルフィニジンをキクで作らせてみる
いろいろな青い花から、デルフィニジンを作るための遺伝子を取り出して、キクに導入することで青いキクを作ろうと考えました。
野田さん達は、植物に遺伝子を入れ込む能力を持っているアグロバクテリウムという細菌を使って、この「青」の遺伝子をキクに導入しました。
しかし、この実験で生まれたのは、完全な青とはいえない、紫のキクだったのです。
野田さん達は、鮮やかな青色を目指して、さらに研究を続けることになりました。
紫のキクから4年後、ついに「青いキク」を発表
では、どうすれば、キクを鮮やかな青にすることが出来るのでしょうか。
野田さん達は、紫のキクと、自然の青い花が持っているアントシアニンの構造を比べてみました。
すると、紫のキクと、藤色のチョウマメという花のアントシアニンが同じだと分かりました。しかもチョウマメには青い花もあります。この青色発色のメカニズムを、キクに応用すると良いかもしれないことが分かりました。
チョウマメの青色の遺伝子を調べてキクに導入し、どうすれば青色を出せるのかを研究しました。
その結果、カンパニュラからとりだした「デルフィニジン」タイプのアントシアニンにする遺伝子と一緒に、「デルフィニジン」に糖を2つ付けるチョウマメの遺伝子をキクに導入すると、鮮やかな青いキクになることが分かりました。
また、この青色の発色には、自然のキクがもつ物質が大きく関与していました。その物質とは?
知りたい方は、是非番組をチェックしてみてください。
ついにキクの青色化に成功しました。
2001年の研究開始から16年、ついに努力が実を結んだのです。
青いキクがお花屋さんに並ぶには?
遺伝子組換え技術を使って開発した青いキクを商品化するためには、法律に基づく審査を受けて承認される必要があります。
遺伝子組換えの青いキクと野生のキクが交雑する可能性があると、生物多様性に影響を及ぼす恐れがあるため、承認されません。そこで、現在、農研機構では花粉や種子ができないようにする技術開発を行っています。
花粉や種子のできない青いキクが完成し、審査の結果、生物多様性に影響を及ぼす恐れがないと評価されることで生産や販売が可能になります。
商品化されて、お花屋さんに鮮やかな青いキクが並ぶ日が、いまから待ち遠しいですね!
お知らせ
農研機構は、本記事でご紹介した他にも、ドローンを使ったスマー
ニコニコ生放送では、農研機構がお届けする特別番組「農研機構 秋のオンライン一般公開「農業と暮らしを結ぶサイエンス2022」が9月3日(土)に放送されます。
農研機構が開発したナシの品種紹介、研究者の特別講座、農業王国オランダからの駐在員レポートなど、楽しく農業と食品への理解を深めていただけるプログラムとなっています。ぜひご視聴ください。