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「慶應は…本当に嫌いですね」東大野球部のスカウトが語るスポーツ推薦も内部進学もない東大の努力「夏休みは高校球児に勉強合宿で口説く
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■「東大合格当日に、湘南高校の宮台くんに会いに行った」
東大野球部は弱い弱いとよく言われるが、いったいどのくらい弱いのか。2013年から2019年まで、監督として東大野球部の指揮を執っていた浜田一志は、こう言う。
「東大と他5大学の戦力差は、おそらく20倍あるでしょう。東大を除く5大学からプロ野球のドラフトで指名されるのは、毎年10人ほど(社会人経由も含む)ですから、各大学が2人としましょう。それに対して、東大からプロ入りするのは、10年に1人、つまり1年に0.1人にすぎません。この人数の差が大学の戦力の差を表していると考えると、基準としてわかりやすい」
東京ヤクルトスワローズの宮台康平(2018年卒部・湘南)は、今年7月に一軍のマウンドに上がって話題を呼んだが、それも東大出身のプロ野球選手が超希少だからこそ。宮台の前の該当者となると、横浜ベイスターズにドラフト9位で入団した、松家卓弘(2005年卒部・高松)までさかのぼらねばならない。
だが、松家から13年ぶりとなるプロ級の選手を、じつは東大はただ待っていたわけではなかった。
「宮台くんは、中学生の頃から話題になっていた左腕の好投手。文武両道で知られる湘南高校に進学したと聞いて、同校野球部の川村靖監督に電話で問い合わせたところ、学業成績も優秀とのこと。将来は東大野球部に来てくれると期待していました。2014年の東大の合格発表日には、湘南高校に宮台くんを訪ね、東大野球部の入部届にサインをしてもらいましたよ」
■灘や開成などの超進学校は“スカウト対象外”
有望な選手に早くから目をつけ、在籍する高校の指導者を通じて東大野球部への入部をプッシュするのは、まさにスカウトである。浜田は2006年からこの活動に関わり始め、監督在任中も含め、現在に至るまでも精力的に取り組んでいるという。
「東大野球部のOB会の中で、野球部員をもっと補強しようという声が出たのが、2006年のことでした。当時、部員数が1学年10人前後だったこともあり、部員数を増やし、同時に野球が上手い子をもっと入学させようということで、スカウト事務局が作られました。といっても、大学公式のものではなくOB会のボランティア活動です。東大のスカウト=入試対策でもあるので、学習塾の経営をしている私が適任だろうと、OB会長のご指名を受けたわけです」
浜田は1983年に土佐高校から東大に進み、4年時には野球部主将を務めた。大学院卒業後は、新日鉄に入社。1994年に独立し、文武両道を目指す「部活をやっている子専門の学習塾」Ai西武学院を創業。2013~2019年の東大野球部監督時代は、通算9勝をあげている。
「2007年から、スカウトのために各地の高校野球部を回るようになりました。訪問先は、基本的には、本気で甲子園を目指している地方の進学校ですね。1~2カ月に1校のペースで回り、およそ10年程度で47都道府県をコンプリートしました。最初はツテなんてありませんから、飛び込みの電話から始まります。『東京大学野球部のスカウトの浜田と申しますが、文武両道の高校とお聞きしているので、一度練習を見学させてもらえませんか』と直接学校の事務室に連絡するんです。スカウト活動の予算はほぼないので、『訪問した際、文武両道について講演する。その代わりに、旅費を出してほしい』という交渉もしましたよ」
高校訪問で細やかな東大受験対策を指導しているわけではない。浜田にとってのスカウト活動を端的に言うと、「東大受験のモチベーションを高める全国規模の活動」なのだとか。
「東大受験なんて考えてもいない子に、東大に行きたいと思ってもらうことが主眼ですので、黙っていても東大に多数入学してくる灘や開成などの超進学校は対象外です。秋田、静岡、東筑、彦根東、米子東など甲子園出場経験のある地方の進学校を訪問して、選手と話すケースが多いです。そのような学校の野球部員はみな文武両道を目指していますから、『東大野球部で文武両道のテッペンを目指しませんか』と声をかける。やはり、テッペンという言葉は男の子の心理をくすぐりますからね。さらには、『慶應などで控えになるより東大でレギュラーになって、初優勝の立役者にならないか』などと口説きます」
■「現役東大生が家庭教師に」夏休み2週間の合宿勉強会
こうした地道な訪問活動は、高校野球界で話題を呼んだ。やがて2013年に監督に就任する頃には、高校野球関係者の人脈もすっかり広がり、各地の高校から有望選手の情報が集まるようになっていた。
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