『凸む』なんて読むの?

『凸む』なんて読むの?

『凸む』なんて読むの?

「凸む」の「凸」の字は、「凸凹」と表記するときの読みである「でこぼこ」の「でこ」や、「凹凸」と表記するときの読みである「おうとつ」の「とつ」くらいしか読み方が分からないという人も多いですよね。

      【凸む】
      ↓
      ↓
      ↓
      ↓
         <正解は>
      【つばくむ】
「凸」「凹」というのは不思議な漢字で、形だけ取り上げてもなんともおもしろいのですが、読み方もまた変わっています。
現代日本で漢字を使用する際の基準とされている『常用漢字表』を調べると、「凸」にはトツ、「凹」にはオウという音読みだけが記載されていて、訓読みはありません。
ただ、末尾にある「付表」というものには「凸凹」が載っていて、そこでは「でこぼこ」と読むことになっていますから、『常用漢字表』としては、「凸凹」と2文字が連なった場合のみ、「でこぼこ」と読むという立場を取っているものと思われます。
「凸凹=でこぼこ」なら、「凸=でこ」「凹=ぼこ」と分解できそうなものですが、話はそう簡単でもないのです。
なぜなら、「ぼこ」ということばそのものの存在が、ちょっとアヤシイからです。
よく考えてみると、「突き出ている」という意味の「でこ」には「おでこ」などの用例がありますが、「へっこんでいる」という意味の「ぼこ」は、単独で使われることはまずありません。
つまり、「でこぼこ」は「でこぼこ」で1つのことばであって、それ以上に分解できるものでないとすれば、「凸=でこ」「凹=ぼこ」もあり得ない、ということになるわけです。
では「凸」「凹」ともに訓読みがないのかというと、そうでもなく、「凹」には「へこむ」「くぼむ」などの訓読みがあるのは、ご存じの通りです。
ただ、「凸」に同じような訓読みが見当たらないのは、「突き出る」という意味を表す単独のことばが、日本語にはないからではないでしょうか。
訓読みとは本来、ある漢字の表す意味を日本語1語に置き換えたものです。その日本語の方にふさわしいものがないのでは、訓読みのしようもありません。
では、なぜ「突き出る」という意味を表す単独の日本語がないのか?そんな具合に考えていくと、なぜなぜ合戦は永久に続きそうですね。だから、最初に申し上げた通り、「凸」「凹」というのは不思議な漢字なのです。
【補足】岩波書店の『広辞苑』には「凸む」と書いて「つばくむ」と読むことばがありました。
「凸」にも訓読みがあるのですね。『広辞苑』には、意味として「突出する。凹凸がある。食い違う」と書いてありました。

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