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『82対0』の野球に感動している場合ではない… 高野連が見て見ぬふりする甲子園予選の「残酷ゲーム」を許すな
夏の甲子園の千葉県予選2回戦で、82対0という大差のつく試合があった。
ライターの広尾晃さんは「最後まで試合を続けたわせがくは素晴らしい。しかし、こうした試合が続けば、いつか事故が起きる。高野連は、強豪校とそれ以外の格差拡大について、対策を講じるべきではないか」という――。
■82対0の試合に見る高校野球の荒廃
7月11日、夏の甲子園の千葉県予選(第104回全国高等学校野球選手権千葉大会)で、82―0という大差がついた試合があった。
長生の森公園野球場で行われた2回戦、そのスコア。
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千葉学芸 32 33 9 1 7:82
わせがく 0 0 0 0 0:0
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5回コールドだが、試合は3時間13分に及んだ。
こういう試合では、一般メディアは、大差がついてもギブアップせずに野球を続けたわせがくナインをたたえるような記事を書いて、一丁上がりにするのが常になっている。
しかしこんな試合があるたびに、心ある野球指導者や関係者は「この試合をどう考えるべきか」「どんな手を打つことができたのか」をSNSなどで話し合っている。
例えばスポーツマンシップの観点から、勝ったチームの選手のふるまいは正しかったのか。コールドの規定を変えるべきではないか。
また、そもそもこんなカードをなぜ組んでしまったのか、大会の仕組みを変えるべきではないのか?そんな議論が起こっている。
筆者はこうした議論にも加わっているが、もう一つの視点として、この試合を「高校野球の荒廃の縮図」だとみている。
■2校の間にある圧倒的な差
千葉学芸高校は千葉県東金市にある私学。元は女子高で2000年に共学になり、この年から甲子園の予選に参加している。
歴史は浅く甲子園に出たことはないが、2017年には甲子園出場経験のある監督が就任し、昨年の千葉県大会では4回戦まで進出している。部員数は100人前後。
わせがく高校は香取郡多古町にある全日制と単位制、通信制を併設する私学。
2003年創設で2005年から予選に参加しているが、2006年に1回戦で勝っただけであとは初戦敗退している。部員数は十数人だ。
その部員数からしても千葉学芸が高校野球に力を入れていることは明らかだ。
これに対し、多様な生徒を受け入れているわせがくは、野球経験者も少なく、練習機会、環境に恵まれない中で予選に参加したと想像される。
恐らくは試合前のシートノックを見るだけで、実力差は歴然としていたはずだ。
■形だけの文武両道をうたう学校
この2校は、今の高校野球の「2つの典型」だ。
一つは一部私学の「甲子園出場」を前提としたビジネスモデルだ。
中学野球の有名選手を「特待生」にして学費免除など好待遇で入学させ、他校で実績があった有名指導者を採用して選手を徹底的に鍛え上げる。
グラウンドやジムなど練習施設も整備する。
さらに多くは「全寮制」で「24時間野球漬け」を可能にする。投資を回収するために、有望選手だけでなく、一般の野球部員も大量に入学させる。
彼らの多くは3年間控え選手で、結果的に一般部員が有望選手の学費や寮費など諸経費を負担することになっている。
中には学園経営者に「何年で甲子園出場」など約束させられる指導者もいる。
指導者も選手も「何が何でも甲子園」というプレッシャーの中で部活を行うのだ。
私学の中には「東大など有名大学進学」と「甲子園出場」という2つの看板を掲げて、別個に全国から生徒を募集するところもある。
一つの学校に全く資質の違う2種類の高校生がいるのだ。最近はこういうスタイルを「文武別道」と呼んでいる。
■ギリギリ部活をやっている学校
もう一つは「辛うじて野球にアクセスしている学校」。
わせがく高校は教育改革によって「多様な学びの形」が可能になったことで生まれた新しい高校だ。
コースによって生徒の1日のスケジュールはまちまちだ。通信制、単位制、全日制とさまざまな就学環境にある生徒が、練習時間を確保するのは容易ではない。それをやりくりして予選に出てきているのだ。
以下、ソース
https://news.yahoo.co.jp/articles/15a89169df785136ad0ec083ad66517fd6851531?page=1