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“現金受領”疑惑続出なら「札幌は終わる」東京五輪組織委元理事の捜査、関係者に衝撃
https://news.yahoo.co.jp/articles/075e7b5266e9d85754509985f5f11333ab03fd76
東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の高橋治之元理事(78)の現金受領疑惑を巡る東京地検特捜部の強制捜査は、札幌市による2030年冬季五輪・パラリンピック招致活動への影響が避けられそうにない。関係者は「疑惑が芋づる式に出たら、札幌は終わる」と危機感をあらわにした。
特捜部の係官が家宅捜索に入った26日、時をほぼ同じくして札幌市では、機運醸成のために政財界やスポーツ関係者らで構成された「プロモーション委員会」が開かれていた。ある委員は「これから騒ぎになる。表向きには、だからこそクリーンに招致をやるということになると思うが……」と深刻そうに話した。27日は、札幌商工会議所が旗振り役を務める招致期成会が総決起集会を開く。別の関係者は「最悪のタイミング。ダメージが大きい」と頭を抱えた。
近年の五輪招致では、買収疑惑が頻発した。02年ソルトレークシティー冬季五輪では、親族への奨学金供与疑惑を皮切りに金銭や便宜供与、高額な贈り物などが次々と発覚し、国際オリンピック委員会(IOC)委員6人が除名された。これを機に、IOCは五輪開催に関わるあらゆる報酬や利益などを要求や受領することを禁じ、委員による立候補都市訪問も禁止した。それでも不正は収まらず、16年リオデジャネイロ五輪では、組織委会長を務めたカルロス・ヌズマン元ブラジル・オリンピック委員会会長や州知事らが買収に関わった罪で有罪判決を受けた。
日本も例外ではない。1998年長野冬季五輪で買収疑惑が持ち上がったが、招致委が当時の会計帳簿を焼却処分したため、真相は闇の中へ葬られた。そして昨夏の東京五輪でも招致を巡る贈収賄疑惑が持ち上がり、民間人同士の贈収賄が罪に問われるフランスの検察当局が捜査している。竹田恒和・前日本オリンピック委員会会長も捜査対象になっている。
IOCは19年、IOC総会で委員による多数決で開催都市を選んでいた従来方式をやめた。常設の「将来開催地委員会」が開催都市を事実上決め、IOC総会で信任を得る方式に変えた。ブリスベン(オーストラリア)はこの方式で32年夏季五輪の開催都市に選ばれた。
札幌市はトーマス・バッハIOC会長から「札幌には事実上、すべてがそろっている」と評価されるなど、招致レースでは優位に立つとされている。一方、IOCは五輪のイメージ悪化を嫌うことで有名だ。招致や開催の是非については、住民、国民の世論を重視する。今回の汚職事件を巡る世論の受け止めも焦点で、別の招致関係者は「影響が出ないと願いたい」と祈るように語った。【倉沢仁志、田原和宏、村上正】