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ややわだかまりを見せる韓国メディア――王毅・中国外相の恒例記者会見で質問をパスされて
◇約1時間40分、27つの質問
記者会見は北京・人民大会堂でビデオ形式によって開かれ、国内外の報道機関計27社からの質問に答えた。英語の逐次通訳を含め、所要時間は約1時間40分に上った。
27社の内訳は、国営中国中央テレビ(CCTV)や国営新華社通信、共産党機関紙・人民日報、人民日報系国際情報紙・環球時報など、中国を代表するメディア14社と、ロシアやエジプト、米国、フランス、日本、インド、イタリアなど各国代表のメディア13社。
質問内容は国内メディアが「今年の中国外交の重点」(CCTV)、「共産党創立100周年における党主導外交の意味」(人民日報)、「ワクチン外交について」(中央ラジオテレビ)など。王毅氏が主張したい事柄を、官製メディアの質問を受ける形で発信する形式とみられる。
一方、外国メディアは主に、当該国と中国の課題についての問いを投げかけていた。「新型コロナウイルス感染が中露関係に及ぼす影響」(露タス通信)、「南シナ海、台湾、新疆ウイグル自治区、香港、チベットなどの問題で中国は譲歩できるか」(米NBCテレビ)、「海警法への懸念、五輪における日本との協力について」(日本・共同通信)、「中印国境における和平の見通しについて」(インドPTI通信)など。ここに韓国メディアの名前がなかったのだ。
一般に、中国指導部メンバーの記者会見では、混乱を避けるため▽指名するメディア▽質問内容▽それに対する回答――は事前に調整されているようだ。したがって記者会見場で、質問者リストに入っていない記者が挙手しても、指名されることはまずない。これは中国に限らず、多くの国の要人記者会見で取られている手法だ。
昨年の王毅氏の全人代記者会見は5月に開かれ、今年と同様、約1時間40分を費やした。この時の質問は23あり、その18番目に韓国・聯合ニュースがエントリーしていた。聯合は朝鮮半島情勢に関して質問し、王毅氏は中国側の原則的立場を表明していた。
◇北朝鮮核問題で立場表明
中国は6カ国協議(北朝鮮と日米中韓露)の議長国を務め、北朝鮮の核問題解決に向けて主導的役割を果たしてきたとの自負がある。このため、全人代記者会見などを通じて、北朝鮮問題についての情報を積極的に発信してきた。
もっとも、北朝鮮の国営朝鮮中央通信や朝鮮労働党機関紙・労働新聞の中国駐在記者が記者会見の場で北朝鮮に関する質問をするという場面は想定しにくく、朝鮮半島情勢に関する問いかけは、もっぱら韓国メディアが担ってきたようだ。
したがって、今回の記者会見で韓国メディアによる質疑応答がなかったのは、中国側が半島情勢についての言及を控えたためだと考えられる。
北朝鮮をめぐっては、バイデン米政権が対応策を検討中であり、記者会見の時点では米韓合同軍事演習(8~18日)も始まっておらず、中国側も北朝鮮の反応を見極めているという状況だった。
ただ、韓国側は微妙な反応を見せている。
韓国紙のソウル経済は「王毅外相の記者会見では、中国と直接的・間接的に密接な利害関係を結んでいる日本、インド、韓国などへの対応に大きな隔たりがあった」と指摘したうえで「日本とインドには融和的なジェスチャーなのに、韓国や北朝鮮核問題には言及もせず、パスした」と批判的に伝えた。同紙は、香港有力英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの「王毅氏は日印両国に肯定的なシグナルを送るよう努めていた」という記述まで転電し、日印両国と韓国に対する扱いの差を強調していた。
ヤフーニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/nishiokashoji/20210309-00226410/