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【パヨク】安倍元首相は暴力で命失ったのに、軍備拡張の道を進もうとする日本(成川彩/元朝日新聞記者)
◇1930年代に日本で首相襲撃相次ぐ
襲撃事件の翌朝、カフェに行って新聞を見ても依然として実感が出なかった。夢の中にいるようなおかしな気分がして高知市内にある五台山に散歩に行き、そこにある浜口雄幸の銅像と向き合った。高知出身の浜口は1930年に首相だった当時、東京駅で銃撃され翌年死亡した。浜口は軍備拡大から軍備縮小に転換しようとした首相だ。1930年に軍部の反対を押し切ってロンドン海軍軍縮条約を締結した。浜口が右翼青年の銃に撃たれたのは軍縮に対する反発のためだった。簡単に言えば平和指向的な首相が右翼青年に銃撃されたのだ。1930年代の日本ではこうした事件が相次いだ。
安倍元首相襲撃の速報を見て私の口から飛び出した言葉は「いや、戦前でもないのに…」だった。6月にtvNの歴史番組『裸の世界史』に出演したが、その日のテーマが太平洋戦争だった。1932年に犬養毅首相が暗殺された5・15事件を扱ったりもしたが、この事件もやはりロンドン海軍軍縮条約締結に対し不満を持つ軍人が起こしたものだ。日本では教科書にも出ているだれでも知っている事件で、当時の世論は犬養に対する哀悼の雰囲気よりむしろ軍人の減刑を要求する声が高かった。結局軍部が力を持つことになり太平洋戦争を始めたのだ。
浜口・犬養元首相と安倍元首相には違う点がある。2人は軍備縮小を推進した首相だったが、安倍氏は軍備拡張を推進した首相だった。特に憲法改正は安倍氏の悲壮な願いだった。安倍元首相が死去して2日後行われた参議院選挙の結果、憲法改正に賛成する勢力の総議席数が衆議院・参議院で改憲発議要件である「総議員の3分の2以上」を確保した。岸田文雄首相は「安倍元首相の思いを受け継ぎ、特に情熱を傾けてきた拉致問題と憲法改正など自身の手で果たすことができなかった難題に取り組んでいく」との意向を明らかにした。
安倍元首相は暴力で命を失ったが、参議院選挙を経て憲法改正の可能性が高くなり、日本はより一層軍備拡張の道に進むようにみられる。暴力は暴力を生む。これは戦前もいまも同じだ。ロシアのウクライナ侵攻など暴力的な世界情勢も日本の軍備拡張をあおっている。
(略)
『人間失格』は夏目漱石の小説『こころ』とともに日本で最も多く売れた小説だ。日本でも韓国でも比較的若い人が多く読むようだ。『人間失格』を読んだという30代の韓国の友達は「慰労された」とした。「退廃美」という表現を使った友達も数人いた。「世界文学全集」のひとつとして『人間失格』を出版する民音社は「特にマーケティングに力を入れたわけではないが昨年から多く売れている。理由はミステリー」と話す。私が考えるに競争社会に疲れた若者たちがコロナ禍まで重なり『人間失格』に共感して慰労されているのではないかと思う。
私もやはり10代で読んだ時は弱気で受動的な葉蔵に別に魅力を感じられなかったが、今回読み直して太宰が生きた時代を考えると、太宰の弱さは戦争のために国民に犠牲を強要した国に対する消極的な「抵抗」だったのではという気がした。
東京・三鷹にある「太宰治文学サロン」にも行ってみた。太宰は三鷹に住んでいた。そこに行けば太宰が書いた本よりも太宰について書いた本がはるかに多いということがわかる。太宰は一般読者にも人気があるが作家の間でも人気がある。例えば著名な中国文学者竹内好は「太宰治の何にひかれたかというと、一口にいって、一種の芸術的抵抗の姿勢であった」とした。太宰は戦争に便乗する多くの作家らと違ったということだ。
戦争時期にも自分が好きなことに没頭した牧野も、退廃的な文を書いて実際にそのように生きた太宰も私の目には平和主義者に見える。日本が戦前に似ていくようで心配にもなるが、牧野や太宰が照明を受けるのは「戦いたくない」という人もとても多いという意味ではないのか、希望を感じたりもする。
中央日報
https://japanese.joins.com/JArticle/293506?servcode=100§code=140