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「セイコーマート」はなぜ、レジ袋無料を続けるのか?
セコマはなぜ、レジ袋の無料配布を続けるワケ!
2020年7月、小売業におけるプラスチックごみの削減を目指し、コンビニのレジ袋が有料になった。現在、セブン、ローソン、ファミマの大手3社では、レジ袋を3円で提供している。
そんな中、レジ袋の無料配布を継続するコンビニがある。北海道No.1のコンビニチェーン、セイコーマートだ。セイコーマートは道内に1083店舗(2022年5月末現在)を構えている。日本生産性本部の調査では、顧客満足度が最も高いコンビニに6年連続で選ばれるなど、道民だけでなく、全国の消費者から興味関心を集めている。レジ袋の有料化が当たり前になった今、なぜ無料で配り続けるのだろう。セイコーマートの丸谷智保会長に話を聞いた。
経済産業省が定めるルールでは、「持ち手のついたプラスチック製買物袋」を有料化の対象にしている。その中でも、プラスチックフィルムの厚さが50マイクロメートル以上のもの、海洋生分解性プラスチックの配合率が100%のもの、バイオマス素材の配合率が25%以上のものは対象外だ。セイコーマートでは、30%バイオマス原料を使用したレジ袋を採用。ルールを守ったうえで無料配布を継続している。
●レジ袋の無料配布を続けるワケ
「常識的に考えて、コンビニでレジ袋を配布しないのはどうなんだろうかと考えた」――丸谷会長はそう話す。
「スーパーは、消費者がショッピングバックを持っていく姿をイメージできますが、コンビニは財布だけを持って気軽に来れる場所だからこそ、わざわざショッピングバックを持って来る姿は想像しづらいと思います。案の定、コンビニのレジ袋有料化にはたくさんの批判が集まりました。有料化にしてお客さまに不便な思いをさせるのは、本来のプラ削減の目的から逸脱してしまっていると思います。また、セイコーマートの場合、他社と比較して客単価が高く、購入品数も多かったため、基準をクリアしたうえで、無料配布を継続する判断をしました」(丸谷会長)
バイオマス原料の使用や、必要ではない場合にはレジ袋を配布しないようにしたことが功を奏し、レジ袋における石油由来のプラスチック総量を50%程度削減することに成功したという。
「レジ袋が必要なお客さまは、本当に必要としているのです。コンビニで配布したレジ袋は、家庭のごみ箱の中でまた活躍します。今までコンビニが提供していたものを、お客さまが別の場所で購入しなくてはいけない状態を考えると、無料配布を続けてよかったと考えています」(丸谷会長)
●顧客の利便性を第一に考える
セイコーマートは、コンビニ各社の有料化の波に乗らず、顧客満足度の向上を目指すという判断をした。丸谷会長に顧客満足度を高める秘訣を聞くと、「お客さまには顔があります。セイコーマートに来るお客さまは、近所に住んでいたり、近所の駅を利用していたり、職場が近かったり、何度も繰り返し利用してくださる方が多いことが特徴です。だからこそ、1人のお客さまに嫌われたら、365人に嫌われたと思って日々過ごしています。店舗を出している以上、お客さまに満足して帰ってもらうのは当たり前ですから、そういった考え方を従業員にしっかり伝えています」とコメントした。
このような考え方は、エコに関する取り組みにも生きている。セイコーマートでは、利便性を損なうことなく、プラスチックを削減する方針を掲げているという。新素材を採用したり、新たな製造方法を採用したりした場合、生産コストの増加が避けられないように感じるが、どのように対応しているのか。
「セイコーマートでは、自分たちで総菜のパッケージ、容器を作っています。容器を作る工場では、フィルムを薄くしたり、紙製の容器を導入したり、使い捨てプラ削減のためにさまざまな取り組みを実施しています。業者から買っている場合は何もコントロールできませんが、自分たちで工場を持っているからこそ、値段を変えることなく、いろいろな挑戦ができています」(丸谷会長)
他にも、自社で製造している「ゆでたまご」は、製造ラインで崩れてしまったものをタルタルソースや玉子サンドに転用している。年間5000万個製造しているうち、約5%は崩れてしまうが、転用することで100%利用することができているそうだ。自社で完結させようとしているからこそ、製造ラインを跨いで活用することが可能だという。
●環境への配慮は他にも
丸谷会長は「セイコーマートは長年環境に配慮した取り組みを強化してきたからこそ、レジ袋の配布をしていても後ろ指をさされることはない」と話す。セイコーマートは段ボールの無料回収や、自社製品の紙パックや玉子パックの回収、リサイクルに注力してきた。回収した牛乳パックや玉子パックは、紙パックをリサイクルして製造した箱ティッシュと交換。回収率は60%を超えているという。
他にも、道内の農家と協業し、規格外のメロンを、アイスやジュースなどに利用するようにしてきた。これは食品ロスを減らすのが目的で、同社が近年強化していることだ。規格外メロンを使用したアイスクリームは好評で、今ではナシ、ブルーベリー、トマトなどでも同様の取り組みをしている。
●今後の展望
今後は、食品ロス削減に向けた取り組みを強化するという。丸谷会長は「北海道大学と共同で、食品の鮮度をより長く保持するために、触媒を研究しています。北海道大学が開発した物質『プラチナ触媒』を用いて、野菜の鮮度保持の長期化を目指しています。実験により、『プラチナ触媒』を倉庫に設置し、一定の条件下で保管すると、野菜の腐敗速度を遅らせることができ、新鮮なまま長期間保存できることが分かりました。廃棄野菜を減らし、使える野菜を増やすことができるため、保管の状態で歩留まりが5%向上するというデータも明らかになりました。今後はこれらの活動を自社だけではなく、他社にも広げていきたいと考えています」と意気込んだ。