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【北朝鮮】 日本政府が動くべき衝撃的な報道「日本人拉致被害者は生きている」…日本は情報の真偽を確かめるべき
(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)
「北朝鮮に拉致された日本人被害者は生存しているという有力な情報が報道されたのに、日本の主要メディアはなぜ無視するのでしょうか」
切迫した口調で語ったのは拉致問題の「家族会」代表の横田拓也氏だった。7月1日夕、「救う会:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」主催の「東京連続集会119」と題された集いである。
目的はもちろん、壇上に掲げられたスローガンが「これ以上は待てない! 全拉致被害者の即時一括帰国を実現せよ!」と記されたように、北朝鮮に拉致されたままの横田めぐみさんら同胞を一日も早く帰国させることである。
■ 驚くべきキム・グクソン氏の証言
猛暑のなかでも50人ほどが集まったこの集会では「韓国新政権と拉致被害者救出」という題で、韓国政情に詳しい國學院大學客員教授・元産経新聞ソウル特派員の久保田るり子氏が講演した。その講演が始まる前の挨拶で、横田拓也代表が驚くべき情報を明らかにしたのだ。
その情報は新聞記事のコピーという形で会場の参加者に配られていた。「世界日報」(6月27日付)に掲載された最新の記事だった。記事の見出しは「『全員が平壌市内に居住』日本人拉致被害者とその子供」、副見出しは「元北朝鮮工作機関幹部が証言 めぐみさん巡り『驚く話ある』」と付けられていた。
この記事は世界日報の上田勇実記者がソウルで北朝鮮の工作機関の元幹部にインタビューして聞き出したという情報を報じていた。記事全体の要点をまとめた前文は次のようだった。
「北朝鮮により拉致された日本人被害者とその子供ら家族全員が、朝鮮労働党統一戦線部の“管理”の下で少なくとも2013年まで平壌市内に居住し続けてきたことが明らかになった。北工作機関『偵察総局』の元幹部で2014年に韓国に亡命したキム・グクソン氏が22日、日本メディアの取材では本紙に初めて応じ、明らかにした。被害者らは北朝鮮の海外工作に協力させられる目的で拉致され、極秘に付す必要性から現在も同じ場所にとどまっている可能性が高い」
この亡命者のキム氏の経歴について、同記事は以下の骨子を記していた。
「1959年に平壌で生まれ、朝鮮労働党の対外連絡部、作戦部。35号室、偵察総局などで工作を企画立案、金正恩総書記の叔父、張成沢氏の処刑を契機に2014年に韓国に亡命。同年から19年まで国家情報院傘下の国家安全戦略研究院で研究委員。昨年10月、英BBCのインタビューで初めてメディアに登場し、話題となった」
キム氏が世界日報記者に明らかにした日本人拉致に関する情報の要点は次の通りである。
・北朝鮮当局は対韓国工作で工作員を日本人として潜入させるために、かなりの人数の日本国民を拉致した。その後、日本人の拉致が必要ではないと判断されるようになっても対日工作は続いた。
・日本人拉致被害者とその子供たちはみな平壌市内におり、党が生活の面倒をみて、北朝鮮の平均市民よりずっとよい生活をしている。外部の人たちとは接触できず、外出も車で移動する。
・日朝首脳会談で北朝鮮側が発表した「8人死亡」はみな嘘だった。海水浴や交通事故で死亡というのも事実ではない。日本に帰した5人は北朝鮮に戻るはずだったが、戻らず、金総書記の面子がつぶれた形となった。
以上のような情報がもし事実だとすれば、日本にとっての大ニュースである。歴代政権にとって最も優先度が高い外交課題とされる国民的な悲願が、この日本人拉致事件の解決であった。北朝鮮当局側は、拉致した日本人はすでにみな死亡したと説明してきたわけだが、その説明は嘘だというのである。
■ 日本は情報の真偽を確かめるべき
ただここで日本側にとって注意を要するのは、この「大ニュース」を報じたのが韓国との独特の結びつきがある「世界日報」という新聞だった点である。
日本での発刊は1975年と古いが、母体は韓国の宗教・政治団体の世界基督教統一神霊協会だった。現在の名称は世界平和統一家庭連合、いわゆる統一教会である。
統一教会は日本や米国など各国でメディアを運営する過程で論議を呼ぶ言動もあった。だから、世界日報に掲載された記事を100%事実として受け入れるわけにはいかないという反応があっても不思議ではない。
ヤフーニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/9d204bd3c28cb63e3c97e6b3f405db1d2bb95e0a