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「未経験からWebで稼げる」を鵜呑みに。貯金はたいて待っていた厳しい現実
コロナ禍による不景気から給料やボーナスはカット。会社では賃金上昇が見込めないなか、副業ブームが到来している。まったくの未経験から始められるものも少なくない。
「未経験からWebで稼げる!」というキャッチコピーに惹かれ、Webデザイナーを目指すことになった女性の実体験Web漫画「未経験から100話でキラキラWEBデザイナーを諦めるかけだしちゃん」が先日、Twitterでバズった。
作者のかけだしちゃん(Twitter:@kakedashi_chan)は、なけなしの貯金をはたいてWebデザイナースクールに入会! しかしそこに待っていた現実とは……。
◆コロナ禍で給料ダウン「副業で月5万円稼ぎたい!」フリーWebデザイナーに憧れて
そもそも数ある副業のなかでWebデザインを選んだきっかけはなんだったのだろうか。
「元々イベント会社の派遣社員をしていたのですが、当時コロナの影響を受けて給料が下がってしまったんです。バイト時代に比べると時給はまだ良かったので、初めはそこまで深刻には考えていなくて。ですが、父親が過去に大きな病気をして金銭面で大変だったことがあり、私も大きな病気をすれば1回で貯金が吹っ飛ぶなと思いました。そこから不安一直線で副業を考え始め、Webデザインを学んでみようと思いました」
SNSの広告でWebデザインが副業としてやっていける可能性を知ったかけだしちゃん。過去にWeb制作の職業訓練を受けていたこともあり、自分にもできるのではないかと思い始めたそうだ。
「まず副業で5万稼げたらいいなって。いつか本業と同じくらい稼ぐことができれば、片道90分かけて通勤しなくても済む……!と夢見るようになりました。そこでSNSで見つけたオンラインスクールに入会を決めたんです」
◆入会を決意!スクール代金は分割で支払いながら…
オンラインスクールへ入会するのにはお金がかかった。そしてそれは決して安いものではなかった。
「スクールには毎月数万円ずつ分割で払っていました。具体的な金額は言えないんですけど全額合わせると数十万。とにかくスキルを身につけたかったので頑張って奮発しましたね」
自己投資のために払うお金は惜しまなかった。スクールに入った当初は日常生活も充実していたそうだ。
「イベント会社の仕事も減っていたので、持て余した時間でたくさん勉強しました。スクールから与えられた課題をクリアしていくたび、大きな達成感が得られて気持ちがよかったです。“やった感”というんでしょうか。今思えば自分に酔っていたのかもしれません(笑)。講師の方も親身になってくれていて、わからないことがあればなんでも答えてくれました」
スクールによっては質問の回数制限があるところもあるようだが、そこは特に制限がなかったそうだ。
このまま順調にいけばWebデザイナーも夢じゃない!と胸を躍らせていた。ところが、とある出来事をきっかけに、講師への不信感が募るようになる。
◆「他人の作ったもので営業していいの?」スクールに対する不信感
「スクールではサンプルのLP(※)を模写するという課題がほとんどでした。講師へ複雑な感情を抱き始めたきっかけは、模写したLPをそのまま営業に使うという話になった時です」
(※)LPとは、ランディングページ(Landing Page)の略。検索結果やHPなどで訪問者が最初に着地するページのこと。
他人の作ったものを自分の実績にして営業に使うなんて、“本当に大丈夫なのだろうか?”と不安になったそうだ。
「講師からは、『製作者からきちんと許可を取っている』のような期待していた回答は得られませんでした。他の生徒は今までやってきたから大丈夫と言っていたんですけど、なんだかモヤモヤして……」
許可を取っていないのに模写営業を容認する講師やスクールの雰囲気に対して、だんだんと不信感を抱き始めた。この後、さらなる事実が。
「エンジニアの友人(通称:エンジニアちゃん)にそのサンプルを見せた時、ぎょっとした表情を見せたんです。そして『そのサンプルは今後絶対に使わないで』と注意されました。サンプルはどこかの企業のWebサイトのコード(※)をコピーしていたらしく、著作権の関係でトラブルに巻き込まれる可能性があると……」
(※)コードとは、Webサイトなどを作る際に使う言語のこと。
かけだしちゃんは、知らなかったでは済まされない、大きなリスクを冒していたのだ。
「注意を受けて完全にフリーズしました。思考停止です。プロがくれたサンプルは実務でも使えて当然だと思っていたので……全く疑ったことがありませんでした。ただ、コードについては講師よりもエンジニアちゃんの方が詳しいと確信していたため、フリーズした後はすんなりと受け入れられました」
これが決定打となり、スクールを退会した。辞めた後も、エンジニアちゃんに助けてもらいながらWebデザイナーとして仕事を受けられるようになったのだとか。
しかし、付け焼刃のスキルや生半可な知識が通用する世界ではなく、文字通り「諦める」ことになる。
◆人生に焦りは禁物
ネット上では、Webデザイナーに限らず、Webライターや動画クリエイターなど、数多くのスクールの生徒募集を目にする。筆者も過去にライタースクールで安くない入会金を払ったが、学びたいことが違ったという苦い経験がある。真剣な気持ちで学ぼうとする人や、自立するためのスキルを身につけたい人にとっては、ワラにもすがる思いなのだ。
だが、「手段は問わず」「とにかく稼げればなんでもいい」というスタンスのスクールも存在する。見極めるコツはあるのだろうか。
「初心者の状態でスクールの中にいると、良いも悪いもわからないものなんです。講師や広報の人の発言をうのみにしないで、彼らの実績や制作物を見てください。可能であれば、あらかじめ、その制作物がどれくらいのレベルの物なのか、スクールとは無関係のプロの人にも見てもらってください」
かけだしちゃんは自身の手痛い経験を振り返りながらこう話すが、「自業自得だった」と思う部分もあるという。
「とにかくなにかスキルを身につけたいと思っていましたが、“もしかしたら稼げるかも?”という安易な気持ちで、よくわからないまま入会してしまったのが良くなかったなと思います」
「あれから時間も経ってますし、色々忘れてしまっているので再開はどうですかね……ただTwitterでWebデザインの活動をしてる人たちを見てるとやっぱり楽しそうです。いつか、試しにLPをオリジナルで作ってみたいと考えています!しっかりとデザインを見てくれそうな方たちに、今は恵まれていると思いますので」
結局、Webデザインのスクールに通ったことでどのぐらい稼げたのか。
「スクールに払ったお金の元は取れたかと思いますが、2年かかっているのでアルバイトをした方がよほど稼げていますね……また、ソフトにかかったお金や、自分で対応できなかった仕事の外注費用は回収できておりません」
失ったお金と時間を取り戻すことはできないが、前に進むことはできる。現在、彼女は“社会復帰”と称してアルバイトに励んでいるのだとか。
「結局、なにも変えることができず職歴を増やしてしまったなと思っています。とはいえ、人生に焦りは禁物です。余裕がなくなると正しい判断が難しくなるので。今後は慎重にいきたいですね」
今はゆっくりと休んで、またいつか夢に向かって走り出すかけだしちゃんを見てみたいと思うのであった。
<取材・文/桃沢もちこ>
【桃沢もちこ】
神奈川県在住、’93年生まれのフリーライター。社会問題からトレンド、体験取材まで幅広く書きます。アイドルオタクに詳しい。Twitter:@mochico1407
ウェブデザイナー (web designer) とは、ウェブ(World Wide Web)に関係するデザイナーである。 ウェブデザイン技能士という技能検定がある。 今日のウェブデザイナーには、次の知識が必須だと考えられる。 HTML XHTML CSS 配色、色彩心理学 レイアウト、人間工学
4キロバイト (407 語) – 2022年4月14日 (木) 10:17
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