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パチンコをヤメた人の主張。萌え系無理、複雑すぎる、出玉が少ない
娯楽の王様と呼ばれたパチンコ業界が斜陽化して久しい。余暇動向をまとめた『レジャー白書2021』によれば、2020年のパチンコ・パチスロの参加人口は710万人。パチンコのファン人口は1995年の3000万人をピークに下降線を辿り、2015年には1000万人となった。2019年には過去最低となる890万人を記録してニュースとなったが、2年連続で過去最低を更新したばかりか、1年間で180万人ものファン離れが起きたことは業界に更なる衝撃を与えた。
筆者がパチンコを覚えたのは、ファン人口がピークと言われた1995年頃。パチンコは連チャン機、スロットは裏モノが幅をきかせてホール内はまさに鉄火場。平日でも開店前には老若男女が砂糖に群がるアリのように、入り口に殺到していた。
当時の客のイメージは30〜40代のおっさんが多く、イイ歳こいたオッサンが一球ごとに一喜一憂して熱くなる姿はホールの風物詩。まさにパチンコが娯楽の王様たる所以かと思ったものである。
だが、時は過ぎて2022年の今、オッサンだらけだったホールの客層はどちらかと言えば若者が多く、筆者のようなオッサンパチンコ打ちは少数派の存在に。目をギラギラ輝かせながらくわえタバコで文句を言いながら台をバンバン叩くオッサンやオバチャンなど皆無である。そもそもホールは禁煙だし……。筆者の友人達も、大学時代は一緒に朝から並んだパチンコバカばかりだったのに、聞けば誰もパチンコ、パチスロを打たなくなってしまった。
パチンコ依存という言葉があるが、実は依存してしまう人よりもヤメる人の方が多いのでは……とすら思ってしまった。
そこで今回はオーバー40を中心にパチンコをヤメてしまった人たちに、そのワケを聞いてみた。するとそこには、オッサンならではの言い分があったのである。
◆萌え系の台が恥ずかしくて打てない
都内在住の松本智之さん(仮名・46歳)は、パチンコをヤメたのは今から3年ほど前だという。松本さんのパチンコ歴は浪人時代にさかのぼり、大学時代は「クランキーコンドルのリプレイハズシがバイトだった」と語るほどのめり込んでいた過去がある。何がきっかけでパチンコをヤメたのだろうか。
「連チャン規制されたり、出玉が〜ってのもあるけど、一番の理由は萌え系の台ばっかで恥ずかしくて打てなくなった。萌え系が好きな人にはたまんないのかもしんないけど、私はちょっと敬遠してしまう。『おしおきピラミッ伝』とか、ゲーム性で好きで打ち込んだ台もあったんだけど、どうしても抵抗感が拭えなくて、萌え系の台を避けるようになっちゃった」
とは言え、いくら萌え系の台が苦手だからといえ、萌え系以外の台も多数あるワケだが……。
「確かに萌え系じゃない台も多いけど、それ以上に抵抗があったのは萌え系キャラを前面に推し出したポップが店内だけじゃなくて、店の外にもデカデカとね……。やっぱ我々の世代は、どちらかというとギラギラのネオンの方が馴染みがある。20代とかならいいけど、40オーバーのオッサンにとってはなかなかにツラい(苦笑)」
「昔、美麗っていうスロットがあって、AV女優とコラボっていうとんでもない台があったの。BIG中はストップボタンを押すタイミングでパネルを壊すミニゲームがあって、パネル壊すとセクシーショットが見られるワケ。で、そのタイミングに合わせてバシバシ押してたんだけど、たまに猛烈な勢いでさ、本気でミニゲームやってるオッサンとかいて、ちょっとなぁ〜って思ってた。でも、あれから10年以上たってシンデレラブレイドでおしりペンペンタイムで気合入れて叩いてるオレって、美麗のオッサンだったんだよなぁって」
では、萌え系の台が今よりも減って、ポップも大人しくなったら松本さんはパチンコ復活するのかと問うと……。
「打つかもしれないなぁ。結局、パチンコ屋って居心地がよかったから行ってたと思うんだよね。結局、萌え系が多い場所っていうのは、オレにとっては居心地がよくないわけ。とは言え、今のパチンコの姿って客から求められているからこのスタイルになったわけじゃない。ってことは、オレみたいなのは少数派なわけで、少数派に合わせなくてもいいとも思う」
オッサンにとって、確かに萌え系はツラいのかもしれない。
◆難解なスペックについていけない
「初めて打つ台はスマホ片手にスペックや演出の解説を読みながらじゃないと打てないなんておかしい。そんな面倒だったり難解なスペックやゲーム性に追いつけないよ……」
呆れ気味な口調で話をしてくれたのは、会社員の寺田一樹さん(仮名・50歳)だ。
「パチスロを覚えたのは大学生の頃。友達に誘われてパチ屋に連れていかれたんだけど、何にもわかんないままパチスロの島を歩いてたら、友達が『コレ、入ってるわ』って打たされたのがニューパルサー。そしたら1G目に7が揃ってね。結局、ビギナーズラックで3万円くらい勝って、それがハマッたきっかけ」
大量リーチ目で一世を風靡したニューパルサーは、200以上とも言われるリーチ目を搭載していた。中にはコレでボーナス?というようなマニアックな出目もあったため、知らずに放置される台も珍しくはなく、「リーチ目拾い」をする者がホールをウロつくこともめずらしくなかった。寺田さんの友人はそうした放置されていた台を見つけてパチスロデビューした寺田さんに譲ったというわけである。
凝り性の寺田さんはその後、雑誌や攻略系の本を買い漁って勉強し、せっせとリーチ目を覚えてパチンコ屋へ通い、雑誌を読んで覚えたリプレイハズシなどを試すなどしてパチスロと戯れる青春を送ったのだとか。
◆攻略誌を読んだら頭が痛くなった
そんな寺田さんがパチスロと決別したのは爆裂5号機がホールを席巻した2014年頃だった。
「4号機から5号機に移行した2007年くらいから仕事が忙しくてほとんどパチスロを打ってなかったし、5号機は出ないっていうイメージが強かったからほぼ“引退状態”だった。そしたら同僚が『今の5号機は4号機に引けを取らないくらい出る!』って飲みながら話してきたんだよ。ちょうど仕事も落ち着いて余裕も出てきたし、そんなに出るなら久しぶりにパチスロを……って。で、久しぶりに攻略誌買ったんだけど、もう、内容が理解できなかった(笑)」
完全に“浦島太郎状態”の寺田さんは「解析ページ見てたら頭が痛くなってきた」という。だが、なんとか予習して打ちに行ったのだが……。
「チェリー引いたから高確状態? モード移行率? ボーナス後はどれだけ回さなきゃダメ? 天井は?って、わかんねぇことばっかだから、スマホ片手にずっと打ってさ、もう疲れちゃった。たぶんこういう考えになるのって、継続的に打ってなかったからだと思うんだ。ずっと継続して打ってたら新しいゲーム性にも慣れて楽しめたのかも。
でも、それをさっ引いても正直、パチスロの内部仕様は複雑になりすぎたと思う。攻略誌やネットに出回ってる解析を読んでると頭が痛くなるレベル。強チェリー時の20%でチャンスゾーン、30%で高確率ゾーン、10%で超高確率準備ゾーンで……とか。昔は『知っていたら得をする』でだったけど、今は『知ってることが前提』になってると思う。前兆の演出や熱いゾーンとか知らずに打つと大やけどする仕様って明らかに初心者とか、ライトユーザーにとっては参入障壁でしかないよ」
では、昔のようなボーナスを主体にした仕様に戻ったらまた打つのかという質問に、寺田さんは「もちろん」と即答した。
「フラッと入って、気軽に打てるからパチンコ、パチスロはファンを獲得できたと思う。複雑じゃないからオッサンもおぱちゃんも対応できたしハマれたと思う。オレが今、20代だったら今のゲーム性や内部仕様ってハマれたかもしんないけど、やっぱ年取ってくるとさ、シンプルがいいんだよ、シンプルが」
シンプル・イズ・ビューティフルということか。
◆「まったり」がないパチンコ
大森さんは画一化するゲーム性もファン離れを引き起こした原因だともいう。
「投資を少なくまったり楽しみたい人は羽根モノ、一発逆転を狙いたいなら連チャン機やCR機、変わったゲーム性を楽しみたいなら一般電役……みたいに、ゲーム性も豊富だったから短時間勝負したい人、一日掛けて遊びたい人、波が荒い台を打ちたい人とかファンのニーズをしっかり埋められていたと思う。今って、基本的に使われてるキャラクターが違うくらいで、中身はほぼ一緒だもん。あと、まったり感がないよね。日がな一日まったり打てる台って今、ある?」
◆打ちたい気持ちはあるが……
溢れ出るパチンコ愛を語ってくれた大森さんにも、他の方と同様にもしも昔と同じようなパチンコに戻ったら打つのか?と聞いてみた。
「打ちたいと思うし、打つと思う。確変ダメでも普通に1800発くらい出てくれれば、打つよ」
規制緩和やスマートパチンコもいいが、パチンコ業界はヤメたオッサンやオバチャンたちの声に耳を傾けてみてはどうだろうか。意外と復活のヒントがあるかもしれない。
取材・文/谷本ススム
【谷本ススム】
グルメ、カルチャー、ギャンブルまで、面白いと思ったらとことん突っ走って取材するフットワークの軽さが売り。業界紙、週刊誌を経て、気がつけば今に至る40代酔っ払いライター
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