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「ドリフって仲いいんですか」と聞かれ…加藤茶、仲本工事、高木ブーが明かした“志村と長さんの本当の関係”
「志村は笑いの王様だった」。ザ・ドリフターズの加藤茶(79)、仲本工事(80)、高木ブー(89)による大座談会「志村けん三回忌だョ!全員集合」を全文転載します。(「文藝春秋」2022年6月号より、全2回の1回目/後編に続く)
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「永遠の笑いの王様」
加藤 志村が死んで、もう2年になるんだな。この前の3月29日が三回忌だった。
高木 俺はなんかまだ実感が湧かないんだよね。いまだにその辺りからスッと出てきそうでさ。あいつはバカだよ。死んじゃうなんて、イカンよ。
加藤 やっぱり惜しい奴を亡くしたよな。コロナって何なんだ、何でそんなに騒がれるんだって思ってたら、いきなり「志村が死んだ」って聞いて。あの瞬間は、驚いて何にも言えなかったよ。
仲本 世間にコロナの怖さを知らしめてくれたのは、志村だよね。
加藤 それは言えるな。
高木 2年前だから、まだワクチンもなくて、医者も治し方を知らないし、世の中がてんてこ舞いになってた時期だよ。よりによってそんな時に罹るなんて……。今なら助かって帰ってくる人も多いだろ。そう考えると、余計なこと言うようだけど、もし志村があと1週間でもコロナに罹るのが遅かったら、きっと助かってたよ。もっと病院の体制も整っていてさ、違った結果になったと思うんだよな。
加藤 まあな。でもあいつだって罹りたくて罹ったわけじゃないからさ。不可抗力だよ。
高木 不可抗力だなんて、一言じゃ言えないよ。あんな早い時期に罹って、やっぱバカだよ。
加藤 いや、言えるんだよ。罹ったのは仕方ない。あの頃は、無理だったんだよ。
高木 そうかな。
加藤 長さん(いかりや長介)が死んで18年だろ。あっという間だよな。こんなこと言うとなんだけどさ、志村がいないとコントはできないけど、長さんがいなくても、不思議と4人だけでもコントはできちゃうんだよな。逆に長さんがいた方が鬱陶しかったりしてさ(笑)。
仲本 ハハハ、それは言えるね。志村が立派だと思うのは、終生、お笑いにこだわってたことだよ。『バカ殿様』とか『だいじょうぶだぁ』とか、自分の笑いを最後までやった。その辺がすごいよ。いかりやさんは、途中から役者の道に入ったから、志村のように「永遠の笑いの王様」という感じにはならなかったね。
付き人時代の志村
高木 でも、俺は俳優の長さんに結構、感心してたんだよ。「踊る大捜査線」なんかで、うまくいってたじゃない。いかりや長介、なんて俳優にしては変わった名前で目を引くしさ、ドリフのリーダーだった人が、俳優になるっていう、その生き方がすごくいいと思ったんだよね。まだやれたのに残念だったよ。
加藤 志村だって、もとは長さんに憧れてドリフに入ったんだからな。最初は付き人だったけど、そのときからあいつ、平気で俺の頭を叩いてたよ(笑)。
仲本 遠慮なかったね。
加藤 あいつのそういうところが逆によかったんだよな。1969年にTBSで「8時だョ!全員集合」が始まって、最初は長さんにブーさん、仲本さん、俺、それに荒井(注)さんのメンバーだった。5年くらいして荒井さんが抜けて、後任に誰を入れるかって話になったんだよな。
高木 4人でやろうか、なんて話もあったよ。元々ドリフには、小野ヤスシとか、綱木文夫とか、いろんな人が入ったり抜けたりしてた。そういう人たちを呼び戻す考えもあったんじゃないかな。まあ、俺には発言権がないから、何も言わなかったけどさ(笑)。
加藤 実は長さんは、荒井さんと同じくらいの年の人を入れたかったんだよ。あの、豊岡豊っていただろ。「スイング・フェイス」ってバンドのリーダーやってた。
高木 いたいた。すごく面白い人で長さんと仲が良かった。
加藤 そう、あの人を入れる予定だったんだよ。でも俺がさ、「長さん、待ってくれよ。荒井さん抜けたんだから、もう全然新しい人を入れましょうよ」って止めたんだよ。やっぱり志村はボーヤのときから、ドリフのネタの作り方とか雰囲気を間近で見て全部知ってたし、その方が俺たちもやりやすいからな。それであいつを推薦したんだよ。
仲本 俺も大歓迎だったな。何てったって、ドリフが若返るんだからさ。志村の方がいいに決まってるよ。笑いの内容も新しくなるし。
加藤 でもあいつは、メンバーになってから2年くらい、ずーっとウケてなかった。
仲本 そりゃウケないよ。荒井さんのあとに何やったって。客もよく見てるから、いきなり志村が「来週から新メンバーです」なんて紹介されても「なんだ、この小僧は」ってな感じでね。荒井さんと志村では性格も全然違ったしね。
伝説のネタ会議
加藤 それにもとは付き人なわけだから、やっぱり遠慮してたんだよな。たまに志村と2人で飲み行くと、さすがにあいつも悩んでいて、相談された。「どうすればウケるか」って。俺もいろんなアドバイスしたけど、「ネタ会議で、自分のやりたいことを正直に『やりたいんだ!』って主張しなきゃダメだ」って言ってやったんだよ。遠慮を取っ払えって。
仲本 ああ、ネタ会議、懐かしいね。毎週木曜日にTBSに集まって、「あんなのどう、こんなのどう」ってアイデア出し合ったよね。あれは大変だった。午後3時から始まって、長いときは翌日の朝まで会議してたこともあったな。
加藤 台本が決まらなきゃ、土曜日の生放送に間に合わないからな。
高木 俺はよく寝てたけどね(笑)。
加藤 そうそう、長さんは寝っ転がりながらネタを考えていることもあったけど、ブーさんの場合は、本気で寝てるからな(笑)。
仲本 放送作家がいくつもネタ出しをするんだけど、長さんがボツにすることが多かったね。
加藤 そりゃそうだよ。やっぱり放送作家がドリフを超える発想をするのは無理なんだ。だいたい、あいつらは舞台にあがってないからさ、舞台の使い方や感触を知らない。だから長さんが中心になって、考えるしかなかったんだな。
仲本 会議はみんな緊張してピリピリした雰囲気だったし、あの長さんが相手だから、志村だって遠慮して意見なんか言えやしないよ。だいたい年齢も20歳くらい離れてたわけだしね。
高木 僕と長さんが同年代で、カトちゃんは10歳下で、志村はそのさらに10歳下なんだよ。あいつだってバカじゃない。一番若手の自分が、20も30も年上の長さんに抵抗できるなんて思ってなかっただろ。芸能界ってのは、やっぱり先輩後輩の関係がかっちり決まってるから。よく番組とかで「ドリフって仲いいんですか」って聞かれたけどさ、考えてみてほしいんだよね。これだけ年齢の差があれば喧嘩なんてやりようがなかったよ。
「あれが最高傑作だよ」
加藤 でもうちの場合は、コントになれば、長さんも年齢差は取っ払っちゃおうって考えだったよな。だから、志村もだんだん遠慮なく自分を出せるようになったんじゃねえか。「少年少女合唱隊」のコーナーで「東村山音頭」の替え歌をやってから、ウケるようになった。あの「いっちょめ、いっちょめ、ワーオ!」ってやつ(笑)。股間に白鳥の頭つけたバレリーナの格好なんかしてさ。
仲本 ネタ会議の合間とかに、メンバーで将棋指してると、よく志村が東村山音頭を口ずさんでた。たしか、それを聴いた長さんがネタに使おうと思ったって話だよ。
加藤 「もしもシリーズ」で、「威勢のいい風呂屋」ってあっただろ。あれなんかも志村と俺がアイデア出したんだよ。
仲本 そうだった。
加藤 俺たち4人が風呂屋の店員で、客の長さんの頭にシャンプーぶちまけて、4人がかりでゴシゴシこすったり、文句言おうとする長さんを風呂の中に放り投げたり。普段は威張り散らしてる長さんも怒るに怒れなくてさ(笑)。しまいにゃ、クタクタになって、「ダメだこりゃ」って観念するんだよな。あれはウケたよ。もろに当たったコントだった。
仲本 あれが最高傑作だよ。
加藤 長さんも大人だから何やられても許してくれたんだけど、あのコントはやっぱり客からすれば、絶対的な権力者を、俺たちヒラがやり返すってのが面白かったんだよ。志村だってノリノリでやってたよ(笑)。
高木 ヒゲダンスも志村が考えたんだろ。
加藤 あれは志村が「加藤さん、こんなのやってみてえんだけど」って言うんで、「なんだよ」って聞いたら、「髭つけて、無機質な感じで、できればタキシードみたいなのを着て。そんなのできないかな」って。俺も「いいね、やろう」ってふたつ返事で受けたんだよ。♪ドゥルルルル~ルルル~ル~ルって有名なBGM、あれだって、たしかアメリカのR&Bのベースの部分を志村がつなぎ合わせて作ったんじゃなかったかな。
仲本 志村はいつも新しいことを考えてたね。
加藤 俺は、あいつが化けてくれたから、ドリフは大成功したと思うんだよ。俺と志村はよくマスコミから、ライバル関係だって言われたけどさ。「志村がウケると、加藤はウケない」なんてね。でも2人の間では全然そんなことなかったな。
高木 そりゃそうだよね。だいたい志村を引き上げたのがカトちゃんだったわけだから。
子どもは二の次だった
加藤 ブーさんの一番の思い出は、やっぱりあれだろ、「ドリフ大爆笑」の雷様のコント。長さんと仲本さんとやってた。
仲本 虎柄パンツを腰の上まであげてね。みんな雲の上に座って。とにかく、あれは絵面が面白いコントだったと思うよ。
加藤 あの格好、ブーさんが妙に可愛く見えてさ(笑)。楽屋の内輪ネタを話したり、アドリブトークしたり、ドリフの中でも異色だって思う人も多かったみたいだな。
高木 僕にとっちゃ、あれは一番楽なんだよ(笑)。飛んだり跳ねたりしないし、もう素のままでやれるからね。台本も関係ない、思ったことをそのまま喋って、長さんだって本当にあったことを話してる感じだったもんな。
加藤 あのコントは動きがないから、子どもさんが楽しめないって声もあったらしいけど、そんなことないと思うけどな。「ドリフは子どもにウケるようにネタ作ってるんですか」ってよく聞かれたよ。でもそうじゃなくて、あくまで大人にウケようと思ってたんだよな。
仲本 そう、子どもは二の次だったね。
加藤 子どもっていうのは感受性が強いから、大人が笑うものを見て自分も笑うんだよ。で、子ども向けにネタ作ると、今度は逆に馬鹿にする。自分より低く見ちゃうから。これはもう、はっきりしてた。
「ドリフも3人になっちゃったけど…」加藤茶(79)、仲本工事(80)、高木ブー(89)が考える“死ぬまでやりたいこと” へ続く