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2019年9月17日、定年を1年残した筆者は延世大学の講義室で受講生たちと熱い討論を行っていた。この講義は「韓国が発展した」と認めるのなら、その理由が何なのかを突き止めようとする「発展社会学」の授業だ。この10年間、筆者は同じやり方で講義を行ってきた。
この日もいつものように、講義の始まりには「韓国の発展における日本の植民地時期の役割をどう評価すべきか」というテーマを取り上げた。植民地時代に「収奪」の面だけから接近すれば、建国後にたどった韓国の飛躍的な発展過程を完全には理解しがたい、という筆者の見解を先に伝えた。
「1961年の5・16(軍事クーデター)以降の高度経済成長は、ひとえに朴正煕政権だったからこそ可能なことだったのか」
この質問に対して、学生の大半は「いいえ」と反応する。続いて、学生たちはただ「国民が一緒に熱心に努力したためだ」と原則論的な回答をする。
筆者の質問は続く。
「国民が一生懸命働かなかった時期がありましたか?」
「北朝鮮が貧しいのは、北朝鮮住民が一生懸命働かないからですか?」
「後進国の国民は懸命に努力しないから、後進国になったのですか?」
といった質問にくると、学生たちの抵抗がかなり和らぐ。質問を続ける。
「それなら、朴正煕政権の前段階である李承晩政権が韓国の発展に寄与した側面はないでしょうか?」
すると、再び学生たちは躍起になって反発する。「親日派が建てた国だ」、「韓国戦争がすべてを破壊した」、「戦後は援助経済がすべてだった」、「不正腐敗がまん延した」などの理由を挙げて「絶対違う」と言う。
(略)
デイリー新潮 2022年05月30日
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/05300557/?all=1