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日本サッカー協会が電通と8年総額350億円の大型パートナーシップ契約を結べた理由
日本サッカー協会(JFA)が電通と8年のパートナーシップを結んだ。契約期間は23年4月1日~30年3月31日で、8年総額350億円の大型契約。先日結んだアディダスとの8年契約と合わせると、8年間のスポンサー料は総額510億円。コロナ禍で長期間の経済沈滞の状況で、なぜ大型契約が実現したのか。その裏側に迫った。(金額は推定)
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日本協会は、現在と同額のスポンサー料を勝ち取った。電通とは8年総額350億円。長く続く新型コロナウイルスによる不況にも、減額なし、契約期間の短縮なし。コロナ禍にロシアのウクライナ侵攻などの影響で物価が上昇し、世界的に不況が続く中でも、日本のサッカー界は不況知らずの結果となった。
日本協会幹部は「W杯26年大会から出場枠が32から48に増えて、アジアに割り当てられる出場権が4・5から8に増えた。これで日本がアジア予選で消える確率は極めて低くなり、電通さんとしてもスポンサーを募りやすくなったことが大きい。今回、電通さんとの交渉でもこの部分が大きなアピール材料になったと聞いている」と説明する。
実際に日本は2大会連続でアジア最終予選の初戦を落としている。ハリルホジッチ監督が指揮を執った16年9月にはUAEに1-2で負けた。森保ジャパンでも初戦のオマーン戦に0-1で敗れ、3戦目のサウジアラビアにも0-1で屈した。1歩間違えれば、B組3位に転落する可能性もあり、いまだW杯出場が不透明なままの可能性もあった。しかし8枠に増えれば、つまずく期間があっても持ち直しは十分できるほどの地力はある。
日本協会と電通は07年4月1日から8年間の契約を結んできた。来年4月から3期目の契約に入る。その契約書には「W杯出場を逃した場合」の付帯条件が付いており、1~2割の減額が書かれているとも言われている。スポンサーを募る電通としても、日本代表からW杯というコンテンツが消えれば、各企業への説得力が大きく低下してしまうからだ。
新たな契約の特徴は、キリン・ホールディングスの比率が下がったことだ。従来年間20億円から16億円強と、約4億円の減少。8年で30億円の減額となった。電通は、その減った分を他の業種から引っ張れると判断している。今までは主に日本代表の親善試合などではキリン杯やキリンチャレンジ杯などキリンの冠大会が主だったが、今後2割程度は他の会社へ冠が移行することも考えられる。
電通との契約内容をさらに細かく掘り下げると、スポンサー料が年間33億円の8年分+テレビの放送権料が1試合2億円強、さらにインターネット配信権などが含まれる。さらに今後、W杯や五輪出場ボーナス、積算方式の本大会成績ボーナス、女子チームなど、各カテゴリーのボーナス契約が追加される。8年間で350億円だが、報奨金、ボーナスなどが加わると、最大で400億円に上ることも考えられる。
いずれにしても国内スポーツ界で、これだけの大型契約は他に類を見ないし、ケタが違いすぎる。注目度が高い分、日本全体を元気にすることも悩ませることもできる。日本協会は、スポンサー料としてもらえる何百億円以上の責任を背負うことになるが、今後はW杯出場だけでなく、本大会でいかに成績を上げるかがポイントとなる。【盧載鎭】