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韓国・文大統領、9日退任 対日、北朝鮮など評価厳しく
韓国の文在寅大統領=3月1日、ソウル(EPA時事)
【ソウル時事】韓国の文在寅大統領が9日、5年の任期を終え退任する。朴槿恵前大統領の弾劾・罷免という異例の事態により政権に就いた革新系の文氏は任期中の統一地方選と総選挙で圧勝。支持率は今も高いままだ。しかし、一時は雪解けムードに沸いた南北関係は結局停滞。対日関係は極度に悪化し、厳しい評価がつきまとう。
朝鮮戦争中、北朝鮮からの避難民の子として生まれた文氏は、南北融和に強いこだわりを見せた。朝鮮半島情勢は極めて緊張した2017年から一転、18年の平昌冬季五輪を契機に南北首脳会談を実現させ、初の米朝首脳会談につながった。しかし、19年2月の米朝首脳会談が決裂すると、南北関係も冷却。今年に入り北朝鮮は凍結していた大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を再開し、17年に逆戻りしたような状況になった。
対日関係では、市民団体の要求に応えた形で「被害者中心主義」を掲げ、朴政権が15年に結んだ日韓慰安婦合意に基づいて設置された「和解・癒やし財団」を解散した。元徴用工訴訟をめぐり、18年に韓国最高裁で日本企業の賠償判決が確定すると関係悪化はさらにエスカレート。打開に向けた文氏の指導力は見えず、保守陣営からは「『反日』を国内政治に利用し、無責任」と批判された。
文氏は「国民全員の大統領になる」と述べた就任演説とは裏腹に、「積弊清算」を掲げて過去の保守政権の不正を追及し、社会の分裂を一層深めた。新型コロナウイルス感染拡大による経済的打撃からは比較的早く回復したとされるが、不動産価格の高騰や、急激な最低賃金の引き上げは、大統領選で保守の尹錫悦氏の当選を許す一因となった。それでも、韓国ギャラップが6日発表した支持率は45%。退任直前に念願だった検察の権限縮小を実現させるなど、最後まで主張を押し通した。
文氏は10日の大統領就任式に出席した後、南東部・慶尚南道梁山で暮らす予定。「現実政治に関わりを持たず、平凡な市民として生きる」と語る。
しかし、国会で多数を占める「共に民主党」には、文政権を支えた勢力が多く残る。文氏は4日に「次期政権は、われわれの成果、実績と比較されるだろう」と語るなど、尹新政権への対抗意識を隠さない。「静かに暮らしたくても、周りがほっておかない。今後も政治的影響力はあるだろう」(党関係者)という声もある。