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中日・大野雄大「自分をほめてあげたい」史上2人目延長10回“完全逃し”の完封勝利
https://news.yahoo.co.jp/articles/6c65331b88114f26d4ce59c07b884b8d00e928de
<中日1X-0阪神>◇6日◇バンテリンドーム
中日大野雄大投手(33)が大記録達成を逃した。阪神戦(バンテリンドーム)の延長10回2死までひとりの走者も許さない完全投球を続けたが、この日115球目を佐藤輝に中越えへ運ばれ、二塁打を許した。ロッテ佐々木朗に続く今季2人目の完全試合は逃したが、チームはサヨナラ勝ち。大野雄は10回1安打完封で今季2勝目を手にした。
10回2死二塁。直前で佐藤輝にこの日初安打を浴び大記録を逃した大野雄は、渾身(こんしん)の直球で阪神大山を二飛に打ち取り、左腕でガッツポーズを繰り出した。ベンチへ戻る途中。一塁線を越えると、目尻にしわを寄せ、悔しげな表情も見せた。「ほんまに勝ちたかった」。その裏、石川昂のサヨナラ打が飛び出すと、アイシングをしたままヒーローを出迎えた。
ゲーム開始から無双だった。最速147キロのストレートに、ツーシーム、スライダー、フォークの変化球がさえ渡った。相手の先発青柳も2安打無失点と好投。援護がないまま、9回までひとりの走者も許さず27個のアウトを積み重ねた。
「行かせて下さい」。9回終了後に、立浪監督に直訴した。首脳陣は10回から守護神R・マルティネスをスタンバイ。指揮官からも直接、降板を伝えられた。1度は受け入れたが「柳の顔が浮かんで、アイツなら絶対いくっていうやろな」。完全試合のためではなく、チームの勝利のために、10回のマウンドに向かった。
「ずっと無安打には気づいていた。(意識したのは)上位3人を抑えた7回ですかね」。約1カ月前の4月10日にロッテ佐々木朗が28年ぶりの完全試合を達成したばかり。19年のノーヒットノーランに続く、自身2度目の快挙となる大記録を目前で逃しても、笑った。「(完全試合で)延長10回をいける投手もなかなかいない。自負して自分をほめてあげたい」。05年西武西口(現2軍監督)以来、史上2人目となる、延長10回“完全逃し”の完封勝利に胸を張った。
自宅の記念品を飾る棚には、短冊が1枚掲げられている。昨年11月に生まれた長男の誕生祝いを立浪監督から受け取った。そこにサプライズがあった。自宅に戻ると祝儀袋の短冊が2枚仕込まれていた。1枚には「誕生祝い」。その下のもう1枚には「開幕を任せた」。自身4度目の開幕投手を、粋な計らいで伝えてくれた立浪監督の直筆メッセージが「うれしかった」。それが、引き受けた投手キャプテンの背中を押し続ける。
「僕の記録なんてどうでもいい」。チームの連敗は止まり、貯金「1」に戻った。サヨナラ劇を引き寄せた「C」マークを胸につけるエースが、竜を上昇気流に乗せるのはこれからだ。【伊東大介】
大野雄は、19年オフに国内FA権を封印して3年契約9億円(金額は推定)で中日に残留した。左腕の恒例行事は高校時代から続ける正月に行う故郷、京都・大文字山での登山自主トレ。記者はここ3年立ち会うが、毎年のように驚かされる。頂上に上がるとカメラマンらの要望は、京都市街をバックにしたジャンプ。20年の正月は大文字山に引っかけ大の字でジャンプ。今年は、立浪監督から要請された投手キャプテン就任に合わせ、「C」の字を体で作って、飛び上がって見せた。
負けても試合後には必ずと言っていいほど取材対応に率先して応じる。19年のノーヒットノーラン以来となる大記録こそ逃したが、竜のエースは、チームだけでなく、ファン、マスコミ、球界をけん引する存在になっている。【中日担当=伊東大介】
中日大塚投手コーチ(大野雄について)「今日はボールに力があったしコントロールも良かった。今日の投球は先発陣だけでなく、若手選手にもとても刺激になり、投手陣みんなへ強く良い影響を与えてくれる投球になると思うし、チーム全体にも波及すると思う。本当にナイスピッチングだった」
中日木下(大野雄を好リード)「前回やられてしまったので、場面によっては時間をかけてでも大事にいこうと話し合っていた。ランナーが出なかったので、その場面はなかったですが…(笑い)。ずっと緊張して守りました。大野投手は今日、コントロールがとにかく良かった」